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意見「株式会社JERAの電力スポット市場における相場操縦に対し、
厳正なる対応と電気料金への影響についての調査を求めます」を提出しました

 国のガイドラインでは、大手電力会社に対し、需要を超えて発電した「余剰電力」が出た場合に、そのすべてを市場に流通させることが定められています。
 しかし、日本最大の発電事業者である株式会社JERAは、設立当初の2019年4月から2023年10月までの4年半の間、余剰電力全量の市場供出を実施していませんでした。
 そこで、電力・ガス取引監視等委員会(以下、電取委)は、JERAの行為を電力市場における相場操縦と判断し、電気事業法上で最も重い「業務改善勧告」を発しました。

 電取委による事案の概要によれば、JERAは市場供出しなかったことの原因について「システムの設定不備」によるものとしましたが、市場供出に対応可能なシステムを準備していたにもかかわらず、市場供出を行わなかったことが明らかにされています。

 JERAの行為について、自由化された電力市場の中で、生活に欠かせないエネルギーについての消費者の選択を阻害し、経済的な負担を大きくする重大な問題と捉え、全国消団連は12月20日に、市場監視機能を持つ電取委に対し、再発防止の観点から違反事業者に対する罰則の強化などを求めて以下の意見を提出しました。

2024年12月20日

電力・ガス取引監視等委員会
委員長 横山 明彦様

(一社)全国消費者団体連絡会
事務局長 郷野 智砂子

株式会社JERAの電力スポット市場における相場操縦に対し、
厳正なる対応と電気料金への影響についての調査を求めます

 2024年11月12日、貴委員会は、卸電力取引所が開設する翌日市場(スポット市場)において、市場相場を変動させる認識を有しながらも、停止する発電ユニットの余剰電力の一部を供出していなかったことが、相場操縦に該当するとして、株式会社JERAに対して、業務改善を勧告しました。

 今回の原因についてJERAは「システムの設定不備」だとしていますが、「システムの不備」に対して、対応できるシステムを準備していたにもかかわらず、4年間に亘ってシステム変更などの措置を講じなかったことは、JERAの有する市場優位性に鑑みて、電力自由化を妨げかねない行為であると考えます。

 加えて、この間続発している新電力の撤退により、消費者が事業者の切り替えを余儀なくされている中で、規制料金値上げを含めた電気料金など、消費者のくらしに大きく影響を及ぼしたと受け止めています。このことにより新電力に対する信用低下が起き、消費者の選択の余地がなくなることで、電力自由化が後退しかねません。

 また、今回の相場操縦の問題だけでなく、旧一般電気事業者によるカルテル問題からインターネット広告に関する景品表示法違反など、電力事業者をめぐっては相次いで問題が発覚しています。カルテル問題に対しては公正取引委員会が独占禁止法違反として当該の電力会社に課徴金納付を命令しました。しかし、今回のJERAに対しては、電気事業法による業務改善勧告に留まっていますが、自由化の根幹を揺るがす問題への対処としては、バランスにかけていると考えます。

 生活に欠かせないエネルギーに関わる重大な問題として、電力自由化における市場監視機能を持つ貴委員会に対し、以下を要望します。

一.現行法では業務改善勧告に留まり、不正に対する抑止力としては不足だと考えます。そこで、独占禁止法と同様に、課徴金制度の導入など、電力事業者に対して、不正の抑止や再発防止を促進する、電気事業法の改正を求めます。

一.12月12日に出されたJERAの再発防止計画の精査と、再発防止策の確実な実施を促し、確認するための監視体制が確立することを求めます。

一.JERA以外の大手電力会社への同様の調査の実施を求めます。

一.JERAの未供出状態による影響の試算のさらなる精査と詳細の公表を求めます。

一.JERAの不作為がこの間値上げされた規制料金を含めた電気料金に与えた影響について、速やかな調査と結果の公表を求めます。

以上