電気通信事業法及びNTT法の一部を改正する法律(令和2(2020)年法律第30号)附則第5条では、施行後3年を経過した場合において、改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めた場合、その結果に基づいて所要の措置を講ずるとしています。
法律を所管する総務省は、2023年8月28日、上記附則に基づき、少子高齢化の進展、景気の長期低迷による経済的地位の低下、自然災害リスク、安全保障環境の厳格化等の様々な課題を抱える中で、NTTのあり方などを含めての「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」の検討を「情報通信審議会」に諮問し、同審議会は「通信政策特別委員会」を設け、諮問事項の調査と審議を行うこととしました。
「委員会」は、諮問に係る検討を行うに当たって意見募集を行っています。(締め切り9月19日)
2023年9月19日
一般社団法人 全国消費者団体連絡会
市場環境の変化に対応した通信政策の在り方に関する提案意見
(全体について)
【意見】
電電公社は、通信インフラの開発と整備を通して、国民生活に貢献してきました。そして技術と通信網は国民の財産であり、NTTはその後継組織として、通信網の維持管理と研究開発に取り組むことが大きな役割です。また研究開発の成果を市場に開放することは、ひいては国民生活の豊かさづくりを支えるものであると言えます。
NTT法では、政府が1/3以上の株式を保有することを定めています。このことはNTTがユニバーサルサービスなどの公共的な役割を果たす組織であることの証左です。
固定電話の契約者が減少し、スマートフォンや携帯電話などのモバイルが全国に広がって繋がる中で、ユニバーサルサービスの必要性が取りざたされています。NTTの果たしてきた公的な役割を終わらせることを目的に、政府がNTT株を売却できるよう、NTT法を改正することに反対します。
膨張する防衛費の不足分を充当するために政府保有のNTT株を売却するとの報道があります。そもそも国民的合意がないままでの防衛費増額は論外ですが、株式売却で防衛費に充当することを目的にNTT法を改正するということには改めて反対します。
(2.我が国の社会経済活動を支える「情報通信インフラの整備・維持」の在り方)
【意見】
私たち国民にとって、NTTは通信のユニバーサルサービスを維持し提供するという点で重要な組織です。固定電話の契約者が減少し、スマートフォンや携帯電話などのモバイルが全国に広がり繋がっている状況において、過疎地域でも平等に通信できるブロードバンドサービスの提供が必要です。
大規模災害などでモバイルの使用が集中して通信が途絶えた際など、一定規模で配置されている公衆電話や災害時用公衆電話はユニバーサルサービスとして位置づけられており、それにより助けられた国民も大勢存在します。そして100%の国民がモバイルを保有している訳でなく、毎年のように発生するシステムトラブルによる通信途絶など、固定電話回線と比較してモバイル自体は不安定と言わざるを得ません。従って国が株式を保有する会社として、このようなサービスを維持強化することは、今更ながらにNTTの重要な役割と言えます。
併せて、メタル回線は老朽化が進んでいると考えます。回線状況の点検を進め、メタル回線が中心の地域など、ユニバーサルサービス維持・管理の観点からブロードバンドへの切り替えに取り組むことが必要です。
(6.上記1〜5を踏まえた関係法制度の在り方)
【意見】
NTT法にある「電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供を確保する責務」は国民にとって重要であり、これからも維持していくべきです。
併せて、国民の利用する通信インフラは電話のみからインターネット通信などに拡大しています。NTTの責務の中に、電話以外の通信インフラも対象として位置付けることが望ましいです。
(1.2030年頃に目指すべき情報通信インフラの将来像及び政策の基本的方向性)
【意見】
誰一人取り残さない社会づくりに向けて、情報インフラの果たすべき役割は大きくなります。国民にとって、DXやICTが進展する中、分かりやすい仕組みであることや広く周知することは重要です。技術的な進歩だけが加速して情報通信インフラが複雑化するような事態を招来しないよう、2030年の目指すべき姿について、国民の理解が進まない状況を作らず、丁寧な論議をしてください。
以上