[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


「地方消費者行政の充実・強化のための意見」提出しました

 全国消費者団体連絡会 地方消費者行政プロジェクトは、2022年度の都道府県行政調査では、消費者被害の未然防止が重要な取り組みであるとし、主に消費者安全確保地域協議会・見守りネットワークをテーマにしました。また、消費者庁・国民生活センターで検討されている消費生活相談のDX化の期待や懸念について、消費者団体への支援状況、消費者教育の実施状況や交付金の活用状況なども調査を行いました。

 これらの結果を踏まえ、「地方消費者行政の充実・強化のために意見」を作成し、2月13日に以下の意見を提出しました。

<宛先>内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、財務大臣、消費者庁長官、
内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長

2023年2月13日

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
地方消費者行政プロジェクト

地方消費者行政の充実・強化のための意見

 社会の変化の中で日々生じる新たな問題にも即応し、くらしの安全・安心を確保するためには、消費者にとって最も身近な地方消費者行政の充実と強化が重要な役割を担っています。新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、デジタル化が急速に進展しています。社会環境の変化の中で、新たな悪質商法による消費者被害も増加し、消費者行政の重要性はより増していると考えられます。

 今年度、全国消費者団体連絡会 地方消費者行政プロジェクトで行った都道府県調査では、消費者被害の未然防止が消費者行政における重要な取り組みのひとつであると考え、主に消費者安全確保地域協議会と見守りネットワークをテーマにいたしました。また、消費者庁、国民生活センターで検討されている消費生活相談のDX化についての期待や懸念についても調査を行いました。

 私たちは、全国の消費者・消費者団体と連携して地方消費者行政のさらなる拡充を求め、国及び自治体に対し、働きかけを継続・強化していきます。

 以下は、今回の調査を踏まえた、当プロジェクトの提言です。

1.「消費者安全確保地域協議会(以下、協議会)」の設置の促進と共に、協議会や見守りネットワークが、本来の目的である消費者被害の防止のための実効性ある取り組みになるよう、国は各地域の実態を把握し、具体的な運用を示したうえで、取り組みを推進してください

 「地方消費者行政強化作戦2020」において、協議会の設置は都道府県内人口カバー率50%以上を目標に掲げており、2022年12月末現在で16府県が達成しています。設置自治体数は2023年1月末日現在で421自治体(/総自治体1,788)となっています。

 今後も各地において協議会の設置が促進されることを期待する一方、設置数にばかり着目し、見守りの実態を伴わない協議会となってしまっては意味がないため、本来の目的である高齢者等の見守りに実効性ある取り組みとして機能し、消費者被害の未然防止を進めていく必要があります。

 調査によると、協議会の設置には、個人情報の取り扱いを行う場合や、他部門との連携・調整などが職員の負担感に繋がっており、特に福祉部門においては協議会になることで業務負担が増えるのではないかと懸念を示すことが多いとの回答もありました。

 自治体全体での協議会のメリットや必要性の理解が大事であると考えます。調査で設置状況とその効果についての設問では、都道府県で設置しているところは、区市町村の設置に対する働きかけに効果があるとの結果も出ており、都道府県の設置が協議会の推進のためにも望ましいと考えます。また、協議会の設置をした後も地域内のネットワークの活用や構成員の協力を得て、地域の消費者被害の未然防止や早期発見につなげ、協議会設置の効果を「見える化」していくことが必要であると考えます。

 また、協議会の設置が困難である場合にも、見守りネットワークとして実態が機能するならば、その形式に捉われない在り方も併せて示していく必要があります。加えて、厚労省の重層的支援体制整備事業との連携について、調査で状況を聞きましたが、自治体における認識は薄く、周知が不十分ではないかと考えます。重層的支援体制整備事業の取り組みの共有や協議会・見守りネットワークとの連携などの好事例の情報を提供し、幅広く在り方を示す必要があります。

2.消費生活協力員や消費生活協力団体の位置づけの周知、地域内の見守り活動の担い手確保と活用を強化してください

 消費生活協力員・消費生活協力団体は「消費者安全法第11条の7に基づき、地方公共団体の長からの委嘱により、消費者の安全を確保するための見守り活動を行います」(消費者庁新未来創造戦略本部出前講座資料「協力員・協力団体向け見守りスキルアップ講座」より)とされています。「地方消費者行政強化作戦2020」では、「地域の見守り活動に消費生活協力員・協力団体を活用する市区町村の都道府県内人口カバー率50%以上」が目標とされていますが、2022年4月1日時点で達成しているのは3県で、0%が9県あります。

 調査でも、県で委嘱しているのは協力員で3県、協力団体では1県にとどまり、委嘱している県内区市町村数がわからない県が30県以上となっています。国では、消費生活協力員・消費生活協力団体養成講座などが実施されていますが、その役割や効果は十分に周知されていないと思われます。また、自治体においても消費生活サポーター養成講座などを実施しているケースもあり、その受講者を地元の消費生活センターと連携し、日々の見守り活動の担い手としてつなげていくことが大切です。これらの担い手の姿をより鮮明にしつつ、具体的な活用事例を示していく必要があります。

 また、担い手と自治体とが定期的な情報交流を行い、地域の状況が把握できるようにしておくことも重要であると考えます。こうした取り組みを強化することで協議会の実効性を確保し、見守り活動を推進することができるようにしてください。

3.地域の消費者団体に対しての把握のための実態調査と支援を講じてください
そして、消費者団体支援策の紹介と財政支援措置を講じてください

 調査では、自治体の消費者団体の育成・支援の意義や位置付けの認識が希薄になっているのではないかと考えられる状況がうかがえました。地域の消費者団体の衰退は地方消費者行政の推進にも大きな影響が生じると考えます。消費者市民社会の形成のため、地域の消費者が自ら学び、啓発などを発信する活動を持続的に行うには、消費者がグループ・団体として共に学び共に行動することが不可欠です。行政は、地域の消費者団体を育成し活動を支援することを通じて、地域連携による消費者被害の防止やSDGS推進の取り組みなどを持続可能な活動にしていく必要があります。

 このように、地域の消費者団体の活動が活発化することで消費者行政を推進する基盤となると考えられるため、消費者庁にて消費者団体の役割を再認識し、自治体に対し消費者団体支援策の具体例の紹介と財政支援措置を講ずることを求めます。

 しかし、地域の消費者団体については、消費者庁が消費者団体基礎調査を数年ごとに実施していましたが、2014年(平成26年)を最後に全く実施していないため、現在の消費者団体の実態が把握できていない状況にあります。昨今のコロナの状況を踏まえると、各地の消費者団体の活動の衰退に拍車がかかっているとも懸念されます。

 まずは消費者庁において、各自治体における消費者団体の実態把握と育成・支援の実情について全体的な調査を行う必要があります。

4.消費生活相談員の人材確保と処遇改善に具体的な対策を講じてください

 地方消費者行政の要望では、消費者行政事務の負担軽減と支援などのほかに、消費生活相談員に関しては、人材確保や処遇改善が毎年の重要な課題になっています。

 今年度の強化交付金メニューから主任相談員が位置付けられ、一定の処遇改善に期待するところですが、その項目である「指定消費生活相談員及び主任相談員による相談機能の強化」では活用が少ない状況にありました。指定消費生活相談員の位置づけは消費者安全法で明確に示されていますが、主任相談員には定義がないので各自治体の裁量によって位置づけがしやすくなっていると考えられるものの、多くの自治体ではまだそのポジションが設けられていません。より多くの自治体で活用され、処遇の改善に寄与されることを期待しますが、こうした措置は一部の相談員に限られるとともに、短期的な交付金での措置だけでは、新たな担い手の確保などの展望が見えません。より消費生活相談員の人材確保と処遇改善に資する施策を措置していく必要があります。

5.消費生活相談のDX化については、消費生活相談現場の状況を把握し、自治体との丁寧な情報共有と意見交換を行いながら方針策定するよう進めてください

 消費生活相談のDX化については、消費生活相談員や相談者、相談処理等に関して多様な期待が寄せられました。これらの期待は、現在の消費生活相談現場の抱える解決すべき課題であるとも考えられます。とりわけ消費生活相談員に関する期待内容は幅広く、件数は突出しています。なかでも多くの県で消費生活相談員の業務負担の軽減や業務内容の煩雑さの解消等が期待として示されました。DX化を進めるにあたっては、それぞれの消費生活相談現場の期待を十分にくみ取り、その裏にある課題を解決できるシステムが構築されることが望まれます。

 期待の一方で、消費生活相談のDX化による情報弱者の取り残しや端緒情報発見の遅れに加え、相談内容の正確な把握や適切な助言等、消費生活相談の基本的な内容にさえ懸念が示されました。DX化についての情報の不足から、その内容や進め方のプロセスが把握できていないことが原因と考えられます。また、相談現場の現状と国が示す将来像とのギャップが大きいため、対応に困惑している状況も伺えます。

 消費者行政の推進は国、県、区市町村が共通の認識を持って取り組むことが重要です。DX化が消費者行政の後退につながらないよう、国には予算措置、自治体の実情把握、関係主体との丁寧な情報共有と意見交換に基づく方針策定が求められます。

6.若者への消費者教育の充実を図り、消費者被害の防止に向けた取り組みを積極的に進めてください

 2022年の成年年齢引き下げ施行後の消費者教育への取り組みの調査では、学校等の教育現場での消費者教育の充実が継続的に行われ、小・中学校での講師派遣や講師向けの研修も進められている様子がわかりました。今後は、家庭や地域における消費者教育も推進し、消費者被害の未然防止に向けた取り組みを積極的に進める必要があります。 また、要望の中には、消費者教育の強化として、成年年齢引下げに伴う若年者への消費者教育における教育部門などとの連携体制づくり、国の重点施策においての好事例の情報提供が望まれています。「消費者教育コーディネーター」の活用を促し、消費者教育の充実に取り組んでください。

7.地方消費者行政強化交付金(以下、強化交付金)について、十分な予算確保をするとともに、事業メニューは自治体のニーズを把握し、活用しやすいものにしてください

 地方消費者行政の交付金等財政に関する要望の多くは、継続的・安定的・長期的な財政支援を望む声で、自治体の財政状況が厳しく、自主財源の確保が不十分であり、まだ交付金に頼らざる得ない状況がわかります。また、消費生活相談体制の維持のためにも安定的な財政支援の必要性があります。交付金は自治体の自主財源確保に向けての支援措置として設けられました。特に強化交付金については、国として取り組むべき重要な事業メニューが提案されていますが、強化交付金メニューの活用状況を見ると、自治体の取り組み内容との齟齬が出ています。特に、「情報化対応の推進・自治体連携の促進による相談体制の維持・充実」として6つのメニューが設定されていますが、活用は低調で自治体が現時点で求めているデジタル化の費用とはミスマッチがあることが考えられます。

 また、要望の中には、消費生活相談員の人件費を対象経費とする声が出されています。しかし、今年度の強化交付金で「指定消費生活相談員及び主任相談員による相談機能の強化」として、「市町村訪問に係る旅費、指定消費生活相談員及び主任相談員の報酬の増額分」を対象とするメニューの活用は、県(4)、区市町村(2)でした。要望とメニューの内容に乖離があると考えます。

 国は、自治体の実態を把握し、交付金メニューが有効に活用できるようにしてください。

以上