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「景品表示法検討会報告書 骨子(案)」への意見提出

 消費者庁では、景品表示法の前回改正から一定の期間が経過したことや、デジタル化の進展など、社会環境の変化等を踏まえ、消費者利益の確保を図る観点から必要な措置について検討するため、2022年3月より、「景品表示法検討会」が開催され、社会環境の変化への対応や、厳正・円滑な法執行の確保や不当表示の早期是正のための方策などが検討されています。

 検討会では、9〜10月に関係団体からのヒアリング(全国消団連は、9月1日第5回ヒアリングに対応)が行われた後、11月30日の検討会にて、報告書の骨子案が示されました。

 検討会にて示された報告書骨子(案)に概ね賛成しつつ、以下の意見を「消費者担当大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、独立行政法人国民生活センター理事長、消費者庁表示対策課、景品表示法検討会座長」に、12月15日に提出いたしました。

2022年12月15日
一般社団法人 全国消費者団体連絡会

景品表示法検討会報告書 骨子(案)への意見

 全国消団連は、2022年9月1日に開催された景品表示法検討会第5回ヒアリングの場にて意見を述べさせていただきました。消費者が商品や役務の取引を行うにあたっては、適切に情報が提供され、合理的に選択できる環境が確保されることが重要です。この際、消費者が得るべき情報の多くは表示によるため、景品表示法検討会の報告書がより消費者利益の保護に資するとりまとめとなることを求めます。
 そのため、第9回検討会にて示された報告書骨子(案)に概ね賛成しつつ、以下の点について改めて意見を述べさせていただきます。

早期に検討すべき課題
p3【事業者の自主的な取組の促進(確約手続の導入)】について

【意見】
 確約手続の導入にあたっては、確約手続となる基準を示すとともに、消費者の被害回復に資するよう返金措置を盛り込んだうえで、広く消費者保護に資する実効性のある制度とすることを求めます。また、確約手続が行われた事案については、透明性の確保や被害予防の観点から公表することを求めます。こうした確約手続における制度の方向性について、報告書にしっかりと記載してください。あわせて確約手続の導入に伴い、執行力が弱まることのないよう消費者庁の体制強化を求めます。

【理由】
 確約手続が導入されることで、迅速により多くの事案が是正され消費者の被害回復に繋がることを期待しますが、一方で確約手続が濫用され執行力が弱まることを懸念します。また、参考とされる独占禁止法の確約手続は事業者間における取引が対象であり、継続的な関係性を確保する観点から実効性の確保が期待できますが、景品表示法においては対象が一般消費者であり、必ずしも継続的な関係がないため、悪質な事業者は事業者名を変えるなどをし、不当な表示を繰り返す可能性があります。
 以上より、景品表示法における確約手続の導入にあたっては、確約手続となる基準を示すとともに、消費者の被害回復がより一層促進されるよう返金措置を盛り込み、広く消費者保護に資する実効性のある制度とすることが必要です。また、確約手続を行った事案について公表することにより、適切に確約手続の運用が行われているか確認できるよう透明性を確保するとともに、他の事業者が自ら是正する機会を与え、消費者にも啓発の機会として被害の予防に繋げていく必要があります。こうした確約手続における制度の方向性については、現状不透明であり、報告書にしっかりと記載していく必要があります。
 あわせて消費者庁の限りある体制の中で確約手続への対応が増えてしまうと、その分、執行力が弱ってしまう懸念があるため、消費者庁の体制強化が必要です。

早期に検討すべき課題
p6【適格消費者団体との連携】について

【意見】
 景品表示法における措置命令事案について特定適格消費者団体が共通義務確認訴訟の提起を検討するため、特定適格消費者団体に対して情報提供できる制度とすることを、本検討会において盛り込むことを求めます。

【理由】
 不当表示による消費者の被害回復を実現するために、消費者裁判手続特例法が積極的に活用される必要があります。しかし、現在の景品表示法の措置命令に関する公表情報だけでは、特定適格消費者団体が共通義務確認訴訟を提起し維持するのに十分ではなく、また、共通義務の存在を立証するための情報を自ら収集するには限界があります。既に特定商取引法及び預託法の行政処分事案については、特定適格消費者団体からの申請により行政処分に係る情報を提供できる旨の規定が定められており、消費者法の均衡の観点からも景品表示法の措置命令事案についても同様の情報提供が可能となる制度が必要です。
 第9回検討会において、事業者団体から改正消費者裁判手続特例法が施行されて間もないことを理由に先延ばしを求める意見も出されましたが、特定商取引法においては規定を活用した実績もあり、運用状況についても憂慮すべき事態は発生していません。また、今回の検討会において先延ばしにされてしまうと来年の通常国会における景品表示法の改正審議には間に合わず、次の検討の機会がいつ設けられるかも決まっていません。以上より、本検討会において特定適格消費者団体に対し情報提供できる制度とすることが必要です。

中長期的に検討すべき課題
p8【課徴金の対象の拡大】について

【意見】
 「おとり広告」などの指定告示に係る表示(第 5 条第 3 号)について、措置命令が行われても違反行為を繰り返すような場合には、課徴金制度を含めた更なる厳しい措置について、中長期ではなく早期に検討することを求めます。

【理由】
 現在の課徴金納付命令の制度は、景表法5条1項「優良誤認表示」や、同条2項「有利誤認表示」の場合に適用されていますが、3項「その他、誤認されるおそれがある表示」は対象となっていません。しかし、その他に該当する「おとり広告」により措置命令を受けた事業者が是正をするや否や、新たに消費者を誤認させるおそれのあるキャンペーンを再び行い、SNSなどを通じて多くの消費者から指摘がなされました。このように改善が見られず違反行為を繰り返す事業者に対しては、課徴金納付命令を含めた更なる厳しい措置を早急に行えるようにすることが必要であると考えます。
 今回の検討会では、5条3号においては著しい誤認表示がない場合でも規制が可能なことや、課徴金制度の根幹に係るため慎重な検討が必要であるなどの理由から、中長期的課題となりました。ただし、表示のデジタル化が進む中、今後も「おとり広告」や「原産地表示」などに関する不当表示が行われる懸念があるため、消費者の影響や適正な商慣行の観点からも重要な課題として、中長期ではなく早期に検討することが必要です。

中長期的に検討すべき課題
p9【デジタルの表示の保存義務】について

【意見】
 消費者が商品や役務の取引を行うにあたり判断の情報源となる広告表示については、取引の信義則の観点から、一定期間の保存及び改ざん防止の規定を努力義務として設けることを求めます。

【理由】
 社会のデジタル化が進む中、インターネットでの取引が増加するとともにデジタル広告も増えています。デジタル広告は、紙媒体のように実体として残らず変更や削除も容易なため、悪質な事業者は故意に表示した広告を即時に削除してしまう可能性もあります。また、近年はターゲティングやパーソナライズドなどの広告も多様化しており、消費者が不当表示であることを立証することはより困難になってきています。
 消費者が商品や役務の取引を行うにあたり判断の情報源となる広告表示については、取引の信義則の観点から、取引後の問い合わせやトラブル等に対応するためも、デジタル広告を一定期間保存し、広告内容を改ざんしないよう、対応が必要ではないかと考えます。
 第9回検討会では、大手事業者において広告の保存がなされているとの報告もあり、また本来は、悪質な事業者の行為を防止することが重要であるため、全ての広告に対して保存義務を課すのは過大な負担であることは理解できます。そのため、少なくとも消費者に向けて表示したデジタル広告については、努力義務規定として一定期間の保存及び内容の改ざん防止の措置を行うことが望ましいことを示し、悪質な事業者が行い得る広告の隠蔽などの行為を牽制していくための規範が必要です。

以上