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「著作権法施行令の一部を改正する政令案」の意見提出

 「私的録音録画補償金制度(以下、補償金制度)」は著作権法に位置づけられている制度で、家庭内などで音楽などの著作物を私的に使用することを目的とした録音・録画に対し、権利者への補償金を支払うことを定めたものです。

 補償金制度は、順次対象となる機器が追加登録されてきましたが、2008年の登録を最後に、メーカーと権利者との間で折り合いが付かず、10年以上も登録がされてきませんでした。

 しかし今回、文化庁より突如、「過渡的な措置」としてブルーレイディスクレコーダーを登録するとの政令改正のパブリックコメントが出されました。

 全国消団連では、関係団体との意見交換会などを行ってきましたが、本来は既に機能していない補償金制度の廃止と、新たな手法の提案が、今回政令案の「過渡的措置」とあわせて示されるべきであることから、9月20日に以下の意見を提出しました。

2022年9月20日

著作権法施行令の一部を改正する政令案への意見について

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

【意見】

 私的録音録画補償金制度の新たな対象機器としてブルーレイディスクレコーダーを規定することに反対するとともに、制度を抜本的に見直し、今後の展望を示すことを求めます。

【理由】

・関係者間での合意形成が成されておらず、政令案の決定に至ったプロセスも不透明です。

 私的録音録画補償金(以下、補償金制度)を負担している消費者や、その補償金の受領を代行して指定管理者団体(権利者団体など)に渡している機器メーカーは、この制度に深く関係しており、特定機器の対象については関係者間の合意が必要不可欠です。しかし、補償金制度の追加指定は2008年が最後となっており、その後の追加指定に関する審議会等での検討においては、メーカーや権利者団体などの関係者間で合意形成が成されず、10年以上も経過しています。

 とくに、直近で行われていた文化庁文化審議会著作権分科会の「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」においては、関係者間で合意形成が成されず、2019年には解散に至っています。その後は府省庁間で検討が進められたようですが、今回、突如として追加指定を行う旨を規定した政令案に至ったプロセスが不透明であり、その正当性が見当たりません。

・既に措置されている著作権保護技術(DRM)への考慮がなされていません。

 そもそも著作権法上、私的複製は自由であることが前提であり、アナログ録画の時代にはこうした補償金制度はありませんでしたが、社会のデジタル化によって精度の高い録音・録画が可能になったことを理由に、録音については1993年6月から、録画については2000年7月から実施されています。しかし、2008年には著作権保護技術によってコピー制御(「ダビング10」)された地上波デジタル放送が開始されるなど、私的複製には既に制限がかけられています。

 こうした著作権保護技術のコストはテレビや録画機等の機器価格の一部として消費者が負担しており、更に補償金を導入することは、消費者への二重の負担となってしまうのではないかと考えます。既に措置されている著作権保護技術を考慮すべきであると考えます。

・ブルーレイディスクレコーダーを指定する合理的な理由が示されていません。

 補償金制度へ機器が追加指定された2008年以降、社会のデジタル化は急速に進み、ダウンロードによる購入や、録音・録画などを行わずストリーミング再生で視聴するサブスクリプションサービスの利用が増えており、録音・録画機器の利用も大きく減少してきています。

 今回のパブリックコメントで示された、参考調査「私的録音録画に関する実態調査報告書(令和2年度)」においても、ブルーレイディスクレコーダーの出荷台数は、2011年の640万台をピークに、2019年には200万台まで減少しています。その一方で、スマートフォンの出荷台数は2011年時においても2,420万台あり、2019年には2,800万台となっています。スマートフォンでは今日、私的複製を介さず、過去番組等も配信で観るという利用がなされています。このように時代が大きく変化してきた中において、利用が減少しているブルーレイディスクレコーダーを指定した合理的な理由が示されていません。

 また、ブルーレイディスクレコーダーを利用する消費者においても、私的に録音・録画する内容は千差万別であり、補償金が支払われるべき権利者に適切に措置されているのか疑問です。

・今後の補償金制度の廃止や新たな制度の展望が見えません。

 補償金制度が導入された2000年頃には、補償金収入の総額も40億円を超えていましたが、時代の変化により2018年には約2,000万円となっています。本来、そもそものコンテンツ利用時(パッケージ発売時、放送時、配信時など)に、権利者に対してその権利に見合うだけの対価が支払われることが重要です。コンテンツの楽しみ方が大きく変化し続けている今日、それこそがクリエイターへの対価の還元のために文化庁が取り組むべき施策だと考えます。今回ブルーレイディスクレコーダーを指定したとしても、権利者に十分な対価が支払われるとは考えられません。

 また、2021年10月20日付けで文化庁著作権課が示した、「私的録音録画保証金制度の今後の在り方について、
https://image.itmedia.co.jp/l/im/news/articles/2208/29/l_my_0829kodera04_w240.jpg)においては、補償金制度について、「適切な新たな対価還元策の実現と併せて廃止する方向で議論をとりまとめたい」とされており、令和4年度に必要な手続きを進めるとされていました。その中で「過渡的な措置」として、ブルーレイディスクレコーダーの指定が検討されているにも関わらず、今回パブリックコメントで示された政令案では、補償金制度の廃止や新たな制度の導入について一切の言及が無く、今後の制度の在り方が不透明になっています。このままでは、今後更なる過渡的な措置として、他の機器等に対象範囲が拡大されるおそれもあり、強く懸念します。

 今回の政令案を示す前に、制度の廃止とともに今後の展望を示すことが重要であると考えます。

以上