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「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」報告書についての意見を提出しました

 消費者裁判手続特例法「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」は、2016年10 月に施行されました。「特定適格消費者団体」としては、現在4つの団体が認定されており、今後、本制度をさらに活用していく必要があります。

 消費者庁の「消費者裁判手続特例法等に関する検討会 」では、消費者にとっての利用のしやすさや、特定適格消費者団体の社会的意義・果たすべき役割などの検討がされ、10月 8日に報告書が公表され、現在パブリックコメントの募集がされています。

■パブリックコメント募集は以下です。(締め切り11月7日)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235030043&Mode=0

 全国消団連では、10月29日に以下の意見を提出しました。

2021年10月29日
一般社団法人 全国消費者団体連絡会

「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」報告書についての意見

第2 被害回復裁判手続の制度的な対応
1. 対象となる事案の範囲

(1)請求・損害の範囲の見直し

(意見の内容)
 慰謝料について、本制度の対象とすることに賛成します。また、慰謝料以外に対象外とされている損害(いわゆる拡大損害、逸失利益及び人身損害)についても、本制度の対象とすることを検討してください。

(意見の理由)
 これまでの本制度の運用の現状踏まえると、事業者の懸念するような濫訴の事態は起きておらず、請求・損害の範囲を見直すことで、消費者の救済を広げていく必要があります。財産的損害だけでなく、慰謝料についても請求を求める要望は多くあります。慰謝料についても、被害者に共通する客観的な事情を考慮して一律的に算定することは可能です。画一的に算定できる慰謝料であれば、請求・損害の対象としても簡易確定手続において、対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断すること(支配性)が困難とは言えないと考えます。真の消費者被害救済につなげるには、慰謝料も対象とすべきです。
 また、引き続き検討すべき課題とされていますが、集団的な消費者被害救済という制度の趣旨を踏まえ、今慰謝料以外の損害(いわゆる拡大損害、逸失利益及び人身損害等)についても、本制度の対象とするよう早急に検討を開始する必要があります。

(2)被告の範囲の見直し

(意見の内容)
 悪質な事業者において、代表者及び実質的支配者の個人を被告に追加することに賛成します。

(意見の理由)
 悪質事業者の中には、法人の財産は代表者や実質的支配者個人に移転され、散逸・隠匿してしまう事例があります。財産が散逸・隠匿されてしまうと、被害回復の提訴をすること自体が難しくなったり、仮に事業者の資産を仮差押えして提訴し勝訴したとしても、回復すべき被害額を大幅に下回ってしまうなどの危惧があります。法人だけでなく代表者及び実質的支配者の個人を被告にすることができるよう、報告書の提案の趣旨に沿って法改正の検討を進めることが必要です。

2. 共通義務確認訴訟における和解

(意見の内容)
 共通義務確認訴訟において、和解を認める対象を共通義務の存否に限定する第10条の規律を削除するなど、和解内容に係る制限をなくし、様々な類型の和解が可能となるよう規定を整備することに賛成します。

(意見の理由)
 和解できる内容の範囲を拡大することで、解決の選択肢が広がり、紛争の長期化を避け、早期解決を図ることができるようになることは、消費者にとっても事業者にとっても有効であると考えます。
 また、適正な和解が促進されるよう、想定される和解の類型及び当該類型における留意事項などをわかりやすく、ガイドラインなどで示していく必要があります。

3. 対象消費者への情報提供の在り方

(2)役割分担と費用負担の見直し

(意見の内容)
 簡易確定手続の役割分担や費用を見直し、通知についての被告事業者の役割を定めることや、被告事業者に負担を求め得る額の算定基準を定めることに賛成します。

(意見の理由)
 通知・公告費用については、共通義務確認訴訟で法的責任が認められた後であり、被害回復のための手続きは、本来は被告事業者が負担すべきであると考えます。特定適格消費者団体の消費者への認知がまだ低いことから、授権の通知を受けたとしても、内容をよく確認しない、または信用できず対応しないという恐れもあります。事業者が対象消費者の情報を持っている場合は、事業者から個別に連絡をする方が効率的と考えます。
 また、対象消費者の個人情報が保管されていない場合など、被告事業者が通知の役割を果たせない際に、その事情に応じて通知・公告に要する費用として、被告事業者に負担を求め得る額の算定基準を定めることが必要だと考えます。この基準が定められることで、原告と被告が、通知・公告費用の負担について協議できる環境が整うことを期待します。
 なお、現状の制度では通知・公告等に費用がかかるため、とくに少額補償の場合には訴訟に至らない事案があり、この観点からも被告事業者が負担する仕組みを検討すべきです。

(3)情報提供の実効性を高めるための方策

(意見の内容)
 事業者が保有する対象消費者の情報を共通義務確認訴訟が終了する前の段階で確保するしくみを設けることに賛成します。

(意見の理由)
 東京医科大学の事案では、事業者から開示された対象消費者に関する情報が一部にとどまったことから、特定適格消費者団体による通知が実施できた範囲が限られる、ということがありました。こうしたことを防ぐため、裁判所の関与の下、事業者が保有する対象消費者の氏名及び住所又は連絡先の各情報を、共通義務確認訴訟が終了する前の段階で確保する仕組みを設ける必要があります。

4.実効性、効率性及び利便性を高める方策

(5)簡易確定手続における事件記録の閲覧等の在り方

(意見の内容)
 対象消費者が安心して手続に参加できるよう、簡易確定手続の記録の保護のための対策を求めます。

(意見の理由)
 対象消費者のプライバシーが保護され、安心して手続に参加できるよう、簡易確定手続の記録の閲覧・謄写を当事者及び利害関係人に限定すること等の対策が必要です。再び消費者被害にあわないよう記録の取り扱いを整備すべきです。

第3 特定適格消費者団体の活動を支える環境整備

(意見の内容)
 消費者団体訴訟制度の実効的な運用を支える者を指定法人と位置づけ、行政からの必要な支援を行うことに賛成します。また、(特定)適格消費者団体の事務負担の軽減や、特定認定を目指す適格消費者団体への補助金交付などの支援を求めます。

(意見の理由)
 報告書には、(特定)適格消費者団体が主体となり運営する消費者団体訴訟制度の意義を位置づけ社会的インフラであることが明示されています。本制度に期待される少額多数被害の回復という役割において、とりわけ個々の損害額が少額になる場合、団体側の事務コストの問題は環境整備だけでは解決困難であり、団体の負担を補填するような施策が必要です。
 消費者団体訴訟制度の実効的な運用を支える者を指定法人と位置づけ、行政からの必要な支援を行うことは、その施策の一つとして期待されるものです。ただし、指定法人をどのように規定し、その役割についてどこから実現していくのかについては、(特定)適格消費者団体との十分な意思疎通を行いながら進める必要があります。報告書の役割を実行できる法人としては、一定の規模が必要であり、設立や運営にあたり十分な支援が必要です。
 また、被害回復制度の実効性をより向上させるに当たっては、担い手となる特定適格消費者団体への支援や、さらに認定団体が増えていくことが必要です。消費者団体訴訟制度等への理解促進や、(特定)適格消費者団体の事務負担の軽減等の支援とともに、特定認定を目指す適格消費者団体への補助金交付などの支援を求めます。

以上