総務省「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」では、携帯電話やネット回線などの契約・サービスにおいて、2015年及び2019年の電気通信事業法改正により充実・強化された現行の消費者保護ルールについての検証・見直しが行われています。
2020年6月からは、昨年来の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響や、IoTの進展・深化といった社会全体の環境変化を踏まえ、新たな検討課題などについても議論され、報告書案としてとりまとめが行われ、報告書(案)についてパブリックコメントが募集されています。(締め切り8月18日)
2021年8月17日
(一般社団法人)全国消費者団体連絡会
「消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書2021(案)」
に対する意見
①該当箇所
第1章 2.広告表示の適正化(p7)
意見内容
電気通信サービスの広告表示における「頭金」などの表示は、消費者の誤認を招くおそれが大きいにも関わらず、いまだに表示が行われている現状を踏まえ、注意喚起や事業者の自主規制だけでなく、制度的な規制措置を講じてください。
理由
通信事業の慣習の中において広告表示されている「頭金」は、あらかじめ決められた本体価格の上乗せの意味で使われている場合があり、本体価格の一部を支払う一般的な「頭金」とは異なっています。2020年11月に総務省と消費者庁の連名で、携帯電話業界における表示に関する一般消費者向けの注意喚起「携帯電話業界における「頭金」の表示や端末販売価格に関する注意喚起〜携帯電話端末の購入を検討している方へ」が行われ、事業者による自主的な改善は進んだとされていますが、一部MNOの販売代理店ではいまだに不適切な「頭金」の表示が行われていることが報告されています。
報告書(案)の中でも消費者の誤認を招くおそれが大きいと認識されているこうした広告表示については、注意喚起や事業者の自主規制だけでなく、より規制を強めた措置を講じる必要があります。
②該当箇所
第1章 3.IoTサービスの進展と消費者保護(p11)
第2章 3−2.期間拘束契約の在り方(p27)
意見内容
今後SIM搭載型などのIoT製品が増加していくことも踏まえ、実際に消費者がしばらく利用してみなければわからないことの多い電気通信サービスにおいて、消費者の利便性や選択の権利が阻害されないよう、数年単位で期間拘束される、または拘束期間中の解約において高額な解約金を請求されるような商慣習をなくしていくよう規制措置を行ってください。
理由
今後、5Gの普及などとあわせ、セキュリティやヘルスケアなど様々な分野で、SIM搭載型などの電気通信事業法の消費者保護ルールの適用を受け得るIoT製品が増加していくことが見込まれています。報告書(案)の海外調査(米国、仏国、韓国)では、本体代金を一括で支払うとともに、通信込みのサービス利用料金については、初期に一括で数年分、もしくはサブスクリプションで支払うという事例があり、いずれの国も期間拘束はないものが主流となっています。
我が国においては、この間の政府の取り組みにより、携帯市場におけるいわゆる「2年縛り」などは解消されつつありますが、FTTHなどでは期間拘束での商習慣が続いており、拘束期間中の解約では高額な解約料が発生するなど消費者トラブルの原因になっています。契約した電気通信サービスの品質などについては実際に消費者がしばらく利用してみなければわからないことが多く、また今後電気通信事業法の消費者保護ルールの適用を受け得るIoT製品が増加していくことも踏まえると、期間拘束や高額な解約金などの商習慣はなくしていくべきです。
③該当箇所
第2章 1.電話勧誘における課題(p15)
意見内容
目にみえず専門的・技術的な用語が多く、具体的なサービスや契約の内容を把握しづらい電気通信サービスにおいて、消費者が求めてもいない中で不意打ち的に行われる電話勧誘などの不招請勧誘は禁止するべきです。現在も苦情相談は高止まりしており、事業者の自主的改善の枠組みに入らないアウトサイダーが中心となっている以上、より踏み込んだ対応を早急に行う必要があります。
また、電気通信事業法においては消費者が望めば電磁的な交付を認めることとしていますが、不招請勧誘では(エ)の対応の際、書面による交付について明示的に示す必要があります。
理由
FTTHなどのインターネット接続サービスを中心に、電話勧誘の苦情相談は高止まりしています。電気通信サービスは、目に見えないサービスであるうえに、専門的・技術的な用語が使用されることが多く、具体的なサービスや契約の内容を電話のみで把握しづらい特徴があります。そうしたサービスを消費者が求めていない中で、視認性がなく不意打ち性の強い電話勧誘で行われる必要がありません。さらに報告書(案)によると、電話勧誘を通じてトラブルを生じさせている事業者は、事業者団体に加盟せず遵法意識も必ずしも高くない、いわゆるアウトサイダーが少なくないとされています。
これらの状況を踏まえると、現在の事業者の自主的取り組みによる改善だけに期待することは難しく、さらなる規制措置を行う必要があります。報告書(案)では対策として、「(エ)説明書面を交付の上で契約前の提供条件の説明を行うことの義務化」を行うこととしていますが、これだけでは消費者被害の防止として十分ではありません。特定商取引法では既に電話勧誘における契約書面等の交付義務がありますが、被害が継続して出ているため、近年はさらなる対応が求められています。
また、特定商取引法における書面交付義務については、電磁的交付を行う場合に被害の拡大が懸念されることが、国会においても共通認識となっています。そのため、現在消費者庁において電磁的交付についての検討会が開催されています。電気通信事業法においては消費者が望めば電磁的な交付を認めることとしていますが、不招請勧誘では(エ)の対応の際、書面による交付を明示的に示す必要があります。
以上を踏まえると、(エ)とあわせて「(ウ)諾成契約から要式契約(書面等で利用者からの明示的な同意が確認できた時点で契約を成立とすること)」にすることで、消費者の誤認も減少し、さらに無用なトラブルを防止することできると考えます。また、社会のIT化が進み、個人情報の取り扱いについてセンシティブになる中においては、消費者が自ら求めてもいないサービスを、電話にて不意打ち的に行うという商法自体が時代に遅れており、「(イ)電話勧誘拒否登録簿制度の導入」や、「(ア)不招請勧誘の禁止」まで含めた検討を行うべきです。
④該当箇所
第2章 2.ウィズコロナの時代における利用者対応の在り方(p16)
意見内容
2021年10月以降SIMロックは原則禁止となりますが、既存のSIMロックも事業者により全て解除を行うように措置してください。また現在においても解除を容易にできるようにしてください。
理由
SIMロックについて、2021年10月以降に原則禁止となることは評価いたしますが、それまでに既にSIMロックが施されているものについては、一定期間後には、事業者により全て解除を行うように措置してください。また、現在でもWeb上で自ら解除を行うことは可能ですが、その手続きを進めるページまで容易に進めない作りにしている事業者もおり、改善を進めてください。
⑤該当箇所
第2章 2.ウィズコロナの時代における利用者対応の在り方(p18)
3.消費者トラブルの解決に関する更なる手法(p22)
3−1.初期契約解除制度の改善(p22)
意見内容
契約解除を行うための起算点は、固定通信等についても移動通信と同様に「書面受領日又は役務提供開始日のいずれか遅い日」としてください。また、契約の解約について、契約締結時とは異なる方法に限定するなど、解約に伴う手続に必要な範囲を超えて消費者に労力や費用をかけさせることのないよう規制措置を講じてください。
理由
実際に使ってみないとわからない通信品質に不確実性がある中では、契約解除を行うための起算点は、固定通信等についても移動通信と同様に「書面受領日又は役務提供開始日のいずれか遅い日」とするべきです。とくに集合住宅においては、通信品質の不確実性はより高まり、移動通信以上に不満を抱く消費者が多いのではないかと考えられます。
また、電気通信事業の契約においては、契約の解約方法を電話や店舗での手続などに限定する契約条項が見られます。契約締結時とは異なる解約方法に限定するなど、解約に伴う手続に必要な範囲を超えて消費者に労力や費用をかけさせることのないよう、規制措置を講じてください。
⑥該当箇所
第2章 5−1.販売代理店の業務の適正性の確保に関する観点(p34)
5−2.今後新たに期待される販売代理店の役割の観点(p48)
意見内容
販売代理店に「地域のICT拠点」としての役割を期待するのであれば、販売代理店の適正性を高めるとともに、過剰な営業目標や営業範囲の縛りなどによる拘束性をなくし、消費者の困りごとの解決にあたり、一定の報酬やインセンティブを付与するなど、その役割を担っていくための措置を検討してください。
理由
報告書(案)では、政府方針である「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」を実現する観点から、販売代理店には、「地域のICT拠点」としての役割が期待されています。確かに消費者にとって複雑で専門性の高い電気通信サービスが生活に必須な状況となる中、サービスを選択や機器の使い方などを対面で相談できる販売代理店の果たす役割は更に大きくなっていくと考えられます。
しかし、報告書(案)のキャリアショップへの調査によると、厳しい営業目標の達成のために苦慮している様子が伺え、その中から強引な勧誘に繋がる旨も記載されています。8月10日に、携帯電話大手3社が販売代理店に支払う手数料体系を見直し、高額プランの契約を多く獲得すると手数料を多く払う仕組みを撤廃したとの報道がありましたが、この報告書(案)の調査が実態であると裏付けており、現状では地域の拠点としての機能を果たすだけの体制にないことが伺えます。
本来地域の拠点として期待されている姿は、消費者の困りごとに真摯に向き合うことで、地域から支持され、継続的な顧客の確保にもつながる状況だと思いますが、1つの相談には相当な時間もかかることから、さらに何らかの報酬やインセンティブを検討することが望ましいと考えます。
報告書(案)に記載されている、販売代理店に「地域のICT拠点」としての役割を期待するのであれば、販売代理店の適正性を高めるとともに、過剰な営業目標や営業範囲の縛りなどによる拘束性をなくし、消費者の困りごとの解決にあたり、一定の報酬やインセンティブを付与するなど、その役割を担っていくための措置を検討してください。
以上