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「電力容量市場制度の見直しを求める要請書」を提出しました

 容量市場は、再生可能エネルギーの普及や電力自由化により、発電所への設備投資が抑制されるなどして将来の供給力が不足することの無いよう、将来(4年後)の供給力を取引するための市場です。その落札価格に応じて、小売事業者が発電事業者に容量拠出金を支払います。

 本年9月、2024年分の約定結果(14,137円/kW)が公表されました。これにより生じる容量拠出金の規模は事業者にもよりますが、小売電気事業の粗利を超える水準と言われ、特に新電力事業者にとっては、事業継続へも影響すると予測されています。

 消費者にとっても、主に新電力の電気料金の値上げ(最大1.6兆円国民負担、単純計算で1か月500円/平均家庭)、電力会社や電力メニューの選択肢が減るといった電力自由化の後退につながり、非効率の石炭火力発電や原子力発電の維持が、脱炭素社会や再生可能エネルギー主力電源化の実現へも悪影響が出かねません。

 全国消団連では、10月20日、以下の要請書を提出しました。

 (提出に先立ち、10月13日に、容量市場の概要問題点、事業者や電気料金を支払う消費者への影響についての学習会を開催しました)。

提出先:経済産業大臣、環境大臣

電力容量市場制度の見直しを求める要請書

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

 容量市場は、再生可能エネルギーの普及や電力自由化により、発電所への設備投資が抑制されるなどして将来の供給力が不足することの無いよう整備された制度とされています。将来(4年後)の供給力を取引するため、本年7月に2024年度の小売電気事業者に費用負担(容量拠出金)を求める初回オークションが実施されました。9月14日に公表された結果では、約定総容量は1億6,769万kW、約定価格は14,137 円/kWとなり、設定された上限価格とほぼ同額で約定価格となりました。この結果は消費者にとって電気料金の値上げや利用サービスの変更につながりかねず、競争環境を創出しようとする電力自由化に逆行するばかりか、ひいては脱炭素・再生可能エネルギーの普及にも悪影響を及ぼす事態になりかねないと考えます。

 当会としては早急に約定価格結果の撤回と容量市場制度の再検討を要請します。

(理由)

1.電気料金値上げにつながるおそれがあり、消費者にとっては負担増が懸念されます。

 容量市場に係る費用(容量拠出金)は、全ての小売電気事業者、送配電事業者が負担するものですが、今回のオークションでは、約定価格が制度趣旨である発電所を維持するために必要とされた想定金額を大幅に上回りました。この費用は、容量拠出金相当額として基本的に消費者が支払う電気料金に転嫁されると考えられます。ある試算では、約定総額から概算するkWh当り負担額は約1.9円、一般家庭の需要量で試算すると年間約1万円の負担増となるおそれもあり、消費者にとっては容認できるものではありません。

2.新電力事業者の事業継続が困難となり、消費者にとって電力会社及びサービス内容の変更を迫られるおそれがあります。

 中小規模の新規電力事業者が多い現状では、今回の約定価格に基づく容量拠出金により相当数の新電力事業者の事業継続が困難となることが予想されます。2016年の電力小売全面自由化は、消費者にとっては「電力会社や利用サービスが選べる」ものであったはずです。2020年5月時点で、日本の総需要に占める新電力シェアは17.8%、最大の新電力事業者でも1.4%にすぎません。今回の落札結果から多くの新電力事業者が事業を断念するような事態になれば、電力小売全面自由化自体が大きく後退してしまうことになります。結果、消費者にとっては、電力会社及びサービス内容の変更を迫られるおそれがあります。

3.電力自由化に逆行するとともに、脱炭素社会の実現・再生可能エネルギーの普及に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 前述の通り、現行の容量市場の導入により、電力料金の引上げや新電力事業者の市場淘汰が進むという懸念が払しょくできません。それは、電力自由化政策の導入根拠を揺るがすものとなりかねません。

 現行の容量市場制度については、非効率な石炭火力発電や原子力発電の維持につながる仕組みが取り入れられ、脱炭素社会の実現や再生可能エネルギーを主力電源化する方針にも逆行すると考えます。「再生可能エネルギー主力電源化」「非効率石炭火力のフェードアウト」等の第5次エネルギー基本計画に示された方針を推進するうえでも、制度設計の再検討が必要です。

以上