[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


「ゲノム編集技術応用食品等の食品衛生上の取扱要領(案)」
及び「届出に係る留意事項(案)」に対する意見を提出しました

 ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生上の取扱について、厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会において3月に報告書がまとめられています。

 調査部会では届出の実効性をいかに担保するかが課題とされていましたが、この度「ゲノム編集技術応用食品等の食品衛生上の取扱要領」と「届出に係る留意事項」の案がまとめられ、この案への意見募集が行われました。

<募集要領>
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190105&Mode=0
(7/26締切)

 全国消団連では以下の意見を提出しました。

2019年7月23日

厚生労働省医薬・生活衛生局
食品基準審査課 新開発食品保健対策室 御中

「ゲノム編集技術応用食品等の食品衛生上の取扱要領(案)」
及び「届出に係る留意事項(案)」に係る意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

 ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生上の取扱について、厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会において、報告書が取りまとめられました。調査部会では、届出の実効性をいかに担保するかが課題とされていました。

 この度、「ゲノム編集技術応用食品の食品衛生上の取扱要領」と「届出に係る留意事項」の案がまとめられました。ゲノム編集技術は、各方面での活用が期待される一方、新しい技術ゆえに安全性に関して大きな不安をもっている消費者も多いと考えられます。新たな育種技術が消費者に正しく理解され、届出制度が実効性のあるものとなるよう、以下の意見を申し述べます。

1.「ゲノム編集技術応用食品に該当する物」の定義について、具体例を示すなどして分かりやすく説明してください。

 取扱要領(案)「1.定義」では、「ゲノム編集技術応用食品」に該当する物は以下の3つとされています。

@ゲノム編集技術によって得られた生物の全部若しくは一部

A当該生物の全部若しくは一部を含む物

Bゲノム編集技術によって得られた微生物を利用して製造された物又は当該生物を含む物

 消費者にとって@とAの違いは分かりにくく、さらに製造加工された物や、Bのゲノム編集技術によって得られた微生物の利用については、具体的なイメージを持ちづらいものです。どのようなものが想定されているのか、具体例を示して説明してください。

2.後代交配種の取り扱いについては、届出の対象としてください。

 取扱要領(案)「6.後代交配種の取扱い」では、以下の2つが届出不要とされています。

@厚生労働省へ届出を行った旨の公表がなされた品種同士又は従来品種との後代交配種

A厚生労働省へ届出を行った旨の公表がなされた品種と安全性審査が終了した組換えDNA技術により利用して得られた生物との後代交配種

 後代交配種については、調査会でも検討されておらず、上記@Aについては届出の対象としてください。ゲノム編集技術は新しい技術であり、現時点では想定されなかった食品衛生法上の問題が今後生じる可能性がないとは言えないことから、これについても届出対象とし、情報の蓄積を行ってください。

3.届出の実効性担保のため、本通知に従わない場合は原則公表としてください。

 届出については、報告書で「実効性が十分に確保されるよう対応するべき」と整理されました。今回の取扱要領(案)「7.その他」では届出事業者に対し、「本通知に従わない事実が確認された場合にあっては、経緯等を確認の上、本通知に従っていない旨を当該開発者等の情報と共に公表する場合があるので留意すること」とされていますが、届出が漏れなく行われるよう、上記のような場合には「原則として公表」とすべきです。

4.ゲノム編集技術応用食品のみならず、育種技術全般について、消費者の理解促進につながるようなリスクコミュニケーションを行ってください。

 ゲノム編集技術は、各方面での活用が期待される一方、新しい技術ゆえに安全性に関して大きな不安をもっている消費者も多いと考えられます。しかし、ゲノム編集技術への正しい理解促進が進まず、「ゲノム編集は危険なもの」という一面的な認識が広がることとなれば、今後「ゲノム編集でない」という食品表示が消費者の誤認を利用した形で使われるという事態にもなりかねません。7月に全国5か所で意見交換会が開催されましたが、リスクコミュニケーションの場としては全く足りていません。まずは、育種技術全般について、わかりやすい広報ツールやQ&Aを作成・普及する、消費者の疑問に答える場を設けるなど、消費者の理解促進につながるようなリスクコミュニケーションを行ってください。

5.今後の科学的知見の充実等の動向をふまえ、届出義務化に向けた再検討を行ってください。

 今回の取扱要領(案)「7.その他」では、「本要領に定める事項は、ゲノム編集技術応用食品等に関する利用の実績又は今後の科学的知見の充実、国際的動向等を踏まえ必要に応じて見直しを行うこととする」とされています。当会では、ゲノム編集技術応用食品の中で、遺伝子組換え食品に該当しないとされるもの(導入遺伝子及びその一部が残存しないことに加えて切断箇所が修復する際の塩基の欠失、置換、結果として1〜数塩基の変異が挿入される結果となるもの)に対しては、届出の実効性を確保するため、届出義務化の措置を求めてきました。今後の科学的知見の充実等動向をふまえ、届出義務化に向けた再検討を行ってください。

以上