[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


3月12日
「独占禁止法改正を求める意見」を提出しました

 課徴金制度の強化を柱とする独占禁止法改正については、独占禁止法研究会の提言(2017年4月)などを踏まえ、公正取引委員会で改正案の検討が進められてきました。自民党「競争政策調査会」や公明党「独占禁止法調査検討委員会」にて団体ヒアリングが実施され(経団連・日弁連とともに全国消団連も対応)、課徴金の論点については異論が出なかったものの、経団連・日弁連が手続保障の強化を求め、特に日弁連は「弁護士・依頼者間秘匿特権の法定化」が認められない限り法案提出を認めない主張をしたことから、公正取引委員会は2018年中の法案提出を断念しました。

 今般、公正取引委員会が弁護士・依頼者間秘匿特権について、不当な取引制限の行政調査手続を対象に規則に明記する方針としたことで、独占禁止法の一部改正法案が3月12日閣議決定されました。

 全国消団連は、消費者利益の保護を図るためにも独占禁止法改正を求めていますが、実態解明が遅れ消費者の利益が侵害される事態になりかねないこと、秘匿特権については特定商取引法をはじめ他消費者関連法への拡大が懸念されることなどから、秘匿特権を含む「防御権の法定化」に反対しています。

 今回、閣議決定を受けて、消費者の利益の確保を求める立場から、あらためて3月12日に以下の意見を提出しました。

2019年3月12日

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
代表理事 (共同代表) 岩岡 宏保
代表理事 (共同代表) 長田 三紀
代表理事 (共同代表) 浦郷 由季

独占禁止法改正を求める意見

 3月12日、独占禁止法の一部改正法案が閣議決定されました。全国消団連では2017年6月に「独占禁止法の強化を求める意見」を提出しておりますが、消費者の利益の確保を求める立場から、あらためて以下の意見を申し述べます。

1.本通常国会での独占禁止法改正の実現を求めます

 独占禁止法は、市場における公正で自由な競争を促進することにより、一般消費者の利益の確保と経済の健全な発達を促進する重要な法律です。他方、独占禁止法違反行為によって生じる価格の引上げやサービスの低下等によって被害を受けるのは消費者・国民です。独占禁止法は消費者の利益を守る重要な法律です。

 平成29年の独占禁止法研究会の提言をふまえ、違反行為を行った企業が必ず相応の課徴金を支払うこととする制度への見直し等を内容とする法改正が検討されてきましたが、昨年通常国会への法案提出が見送りとされたことは遺憾です。この間も大きなカルテル・談合事件などが続いており、消費者利益の保護を図るためにも、本通常国会での独占禁止法改正の実現を求めます。

 なお、ややもすると改正議論の中心が「弁護士・依頼者間秘匿特権」の論点となりがちですが、消費者団体としては今回の独占禁止法改正の眼目は「課徴金制度の見直し」であると認識しています。

2.秘匿特権の対象を不当な取引制限(カルテル・談合)以外に拡大することに反対します

 今回、弁護士・依頼者間秘匿特権への対応として、不当な取引制限の行政調査手続を対象に、事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容を記載した文書に審査官がアクセスしないものとする制度が導入される見込みです。

 そもそも当会は独占禁止法改正における秘匿特権的な制度の導入は慎重であるべきとの立場ですが、仮に導入されるとしても、その範囲がカルテル・談合以外に拡大することについて懸念があります。例えば、カルテル・談合以外の独占禁止法の違反類型の一つに、自社の商品が実際の商品よりも良い物であると相手に誤解させて契約を結ばせようとする行為がありますが、独占禁止法以外にも、様々な消費者関連法(景品表示法、特定商取引法など)において似た規制があります。そのような消費者関連法に基づく調査を行政が行う際、独占禁止法に秘匿特権的な制度があることを理由として事業者が調査に協力しないといったことがあれば、消費者庁や都道府県知事などによる調査実務に弊害が生じ、消費者利益が損なわれてしまうことが懸念されます。こうした消費者関連法の執行は現状でも不十分であり、秘匿特権的な制度が拡大することで、消費者利益が損なわれることにつながる恐れも充分想定されることから、秘匿特権的な制度が拡大することには反対です。

以上