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「独占禁止法の強化を求める意見」を提出しました この間、事業者の経済活動や企業形態のグローバル化・多様化・複雑化が進展したことなどを受け、公正取引委員会では、昨年2月より「独占禁止法研究会」を開催し、従来の硬直的な課徴金制度の在り方について検討を重ね、本年4月に研究会報告書がとりまとめられました。 公正取引委員会では今後、報告書を踏まえて具体的な制度改正作業に入っていくことになりますが、その参考とするため、現在制度設計の具体案などについての意見募集が実施されています(6月30日締切)。 独占禁止法が強化され、公正取引委員会の執行機能が強化されれば、消費者が高品質・高機能の良い商品を、より安い価格で、より多くの選択肢の中から買うことができる市場環境が拡大するというメリットがあります。こうした観点から、全国消団連では6月22日に、以下の意見を提出しました。 2017年6月23日 独占禁止法の強化を求める意見 一般社団法人 全国消費者団体連絡会 独占禁止法は、市場における公正で自由な競争を促進することにより、一般消費者の利益の確保と経済の健全な発達を促進する重要な法律です。 独占禁止法違反行為によって生じる価格の引上げやサービスの低下等によって被害を受けるのは消費者・国民です。独占禁止法違反行為は、消費者・国民の利益を侵害するものであり、消費者に知られないまま、消費者の財産や税金が不当に支出させられることになります。 他方、独占禁止法が強化され、公正取引委員会の執行機能が強化されれば、消費者が高品質・高機能の良い商品を、より安い価格で、より多くの選択肢の中から買うことができる市場環境が拡大します。独占禁止法改正を進めるに当たり、消費者の利益の確保と経済の健全な発達を求める立場から、以下の意見を申し述べます。 1.違反行為を行った企業が、必ず相応の課徴金を支払う制度とすべきです 独占禁止法違反行為を防ぐためには、違反行為を行った企業が、必ず相応の課徴金を支払う制度とすべきです。違反行為を行ったにもかかわらず、その違反行為で得た利得をしっかりとはく奪できなければ、違反行為の抑止にはつながりません。そのために、以下のような点について制度見直しを求めます。 (1)対象とする企業の範囲の拡大 現行制度では、日本に売上額のない海外企業に課徴金を課すことができない等、本来課徴金を課すべきものに課徴金を課すことができない場合があるなど、理不尽な結果が生じており、これを改善する必要があると考えます。 (2)課徴金の算定期間の延長 現行制度では、課徴金の算定期間に3年という上限が設けられているので、長期間違反行為を続けた企業ほど不当利得を得られるしくみになっています。長く違反行為を行った企業にとってやり得の制度になっており、これを改善する必要があると考えます。 (3)課徴金額の引き上げ 過去の事件データによれば、現行制度の課徴金額は、違反行為者が違反行為によって得た利益の平均額すら課すことができていません。これでは違反行為の抑止効果を発揮することはできません。課徴金の水準を引き上げることによって、改善する必要があると考えます。 (4)企業グループ内での違反行為の摘発と対策 現行の制度では、「巨大な企業グループにおいて一部の販売子会社のみを違反行為に関与させて、中小企業又は業種に応じて軽減された算定率の適用を受ける」ということが防げないため、これを改善する必要があると考えます。 2.違反行為を行った企業が、独占禁止法違反行為の調査に協力する制度にすべきです 企業は、独占禁止法違反行為という日本の経済・市場に悪影響を与え、消費者の利益を損なう行為をしたのであれば、実態解明につながる公正取引委員会の調査に協力することこそが企業の社会的責任と考えられます。したがって、企業に公正取引委員会の調査への協力を促進させる仕組みを構築すべきです。 (1)調査妨害行為に対する有効なペナルティーの導入 独占禁止法違反認定を受けている企業に対して、証拠隠し等の真相解明を妨害する行為を行わせないようにするためには、効果的なペナルティーが必要です。現行制度を改善し、妨害行為が発生しないようなペナルティー規定が必要であると考えます。 (2)調査協力インセンティブを高める制度の導入 しっかりと調査に協力した企業ほど課徴金が減額されるような仕組みを作ることで、事業者に一層調査に協力させることが可能となります。現在は調査協力の度合いが全く課徴金の額に反映されないため、調査協力インセンティブが不十分です。調査協力度合いに応じて課徴金を計算する仕組みを設ける必要があると考えます。 3.「独占禁止法」の厳正な執行を妨げないことが重要であり、「防御権」の法定化に反対します 事業者団体等から「企業の防御権を強化すべき」との主張がありますが、これによって実態解明が遅れる、またはできなくなる恐れが大きく、市場の回復が遅れることで消費者の利益が侵害されることになります。そもそも企業は違反行為をしなければよいのであり、調査権限の強さとのバランスを考慮せずに、違反をした企業に対して過度な防御権の保障を与えることには反対です。 例えば、同じように消費者の利益を守る法律には、景品表示法、特定商取引法、消費者安全法などがありますが、調査権限の強さとのバランスを考慮せずに、違反企業の手続保障を強化すれば、重要な証拠が隠されることで、行政機関はしっかりと調査を行えなくなる可能性があります。このような制度の導入には慎重であるべきであり、法定化することに反対します。 事業者団体等が主張する「防御権」には、以下のような弊害があると考えます。 (1)秘匿特権の導入 秘匿特権の導入は、独占禁止法研究会においても、その必要性が認められませんでした。企業が秘匿特権により弁護士・依頼者間の通信内容を示した証拠の提出を忌避できることとなれば、公正取引委員会は調査対象企業から、証拠が得られる可能性が減少し、十分な調査が行えなくなるおそれあります。 (2)供述聴取時の弁護士立会い、供述聴取時の録音 供述聴取時の弁護士立会い、供述聴取時の録音は、供述聴取時において、供述人が経験したありのままの事実を供述すればよく、弁護士による法的助言は必要ないこと等を踏まえると、弁護士の立会いを認める必要がないこと、また、弁護士の立会い・録音等を認めた場合、供述内容が企業に伝わることなどにより、従業員たる供述人が萎縮するおそれがあることなどの弊害が考えられます。 (3)供述聴取時のメモの録取 供述聴取時のメモの録取は、供述人が経験した事実を記憶通りに供述する上でメモを取る必要はないと考えられますし、また、供述聴取時に聞かれたことを会社へ報告するということは、供述内容を相談し、違反行為を認定されないように口裏合わせするために行っているものと考えられることから、認める必要はないと考えられます。 以上 |