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消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に対する意見を提出しました 内閣府消費者委員会事務局 中間整理等受付担当 御中 2015年9月30日 消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に対する意見 氏名 (一社)全国消費者団体連絡会 住所 東京都千代田区六番町15 電話番号 03-5216-6024 電子メールアドレス michiko.koura@shodanren.gr.jp ●第3の1. 「勧誘」要件の在り方について(中間取りまとめP.9以下) (意見)不特定多数の者に向けた勧誘(広告・表示)であっても、不実告知等があった場合には誤認取消ができるようにして下さい。 (理由)不特定多数の者を対象とした広告・チラシ(パンフレット)やインターネットの画面上で不実告知に相当する内容が掲載され、それを信じた消費者がトラブルに巻き込まれる例が多くあります。全国消団連の調査(第6回専門調査会資料4)では、インターネット通販利用者の約1割が契約(購入)内容を「理解していた通りでなかった」と感じ、そのうち約8割が「そのサイト上の情報のみで内容を確認した」と答えており、消費者契約を取り巻く環境変化が誤認しがちな状況を生じさせている状況です。これを是正するため、不特定の者に向けた広告・チラシであったとしても、消費者の意思形成に直接的に影響を与えた場合には誤認取消ができるように法整備を行う必要があります。 ●第3の3. 不利益事実の不告知について(中間取りまとめP.12以下) (意見)不利益事実の不告知のうち、「不実告知型」については「故意」がなくても取消ができるようにして下さい。(故意要件の削除) (理由)第4条2項に定める不利益事実の不告知の中でも、告げられた利益と告げられなかった不利益の関連が強い「不実告知型」については、第4条1項の不実告知と実質同等と考えられます。不実告知の場合と同様に「故意」要件を外すべきです。例えばマンションの購入契約をする際、眺望が良いことを売り文句にする一方で、目の前の敷地にマンション建設の予定があるとの説明がなされなかった場合、事業者から「故意ではない」と主張されても納得できるものではありません。消費者と事業者の間の情報・交渉力の格差を是正して消費者の利益の擁護を図るという消費者契約法の立法目的から考えても、利益を告げるのであれば、それと関連する不利益についても正しく情報提供がなされるべきです。 ●第3の3. 不利益事実の不告知について(中間取りまとめP.12以下) (意見)不利益事実の不告知のうち、先行行為が具体性を欠き不利益事実との関連性が弱い「不告知型」についても、故意または重過失がある場合には取消できるようにして下さい。 (理由)例えばマンションの購入契約をする際、眺望の良さを売り文句にしていなかったとしても、顧客が眺望の良さに魅力を感じて契約しようとしていることを知りながら、目の前にマンション建設の予定があること告げられなかった場合、事業者から「眺望が良いとは言っていない」と主張されても納得できるものではありません。消費者が契約するかどうかに影響を及ぼす重要な事項に関して、事業者が故意または重過失によって告知しなかった場合には取消ができるようにすべきです。 ●第3の4. 「重要事項」について(中間取りまとめP.15以下) (意見)契約の「動機」にかかわる不実告知等に対応できるよう、「重要事項」を拡張して下さい。 (理由)第4条4項で「重要事項」が契約の対象物、契約条件、対価に狭く限定されているために救済されない消費者被害が数多くあります。実際にはシロアリなどいないのに「シロアリがいる」と告げられて駆除契約を行う例などのように、消費者が契約するかどうか判断する際には、契約しなければならない、契約する必要があるなどの「動機」が大きな割合を占めます。こうした被害から消費者を救済するため、重要事項に「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」を追加する、また、「例示列挙」であることを明示するなどの対応が必要です。 ●第3の5. 不当勧誘行為に関するその他の類型(1)困惑類型の追加について(中間取りまとめP.17以下) (意見)「執拗な勧誘」「威迫による勧誘」「迷惑を覚えさせる勧誘」も困惑取消の対象にして下さい。 (理由)執拗な電話・訪問勧誘や威迫的な言動、迷惑を覚えさせる勧誘も不退去・退去妨害と質的に大差のない困惑を引き起こす行為です。困惑類型を追加して下さい。 ●第3の5. 不当勧誘行為に関するその他の類型(3)合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型(中間取りまとめP.20以下) (意見)消費者契約法に、いわゆる「つけ込み型不当勧誘」に関する規律を設けてください。 (理由)「高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化への対応等の観点から」消費者契約に関する規律の在り方が諮問されていることからすると、高齢者や障がい者など十分な判断ができない状況にある消費者を狙って、判断力の衰え、知識・経験の不足、心理的な圧迫状態につけこんで不必要な契約を締結させる被害(つけ込み型不当勧誘)を放置する訳にはいきません。当該消費者の知識、経験、財産状況等に適合した形での勧誘を行うことが求められるという考え方(適合性原則)から、消費者契約法に規定を設ける必要があります。 ●第3の7. 取消権の行使期間について(中間取りまとめP.24以下) (意見)消費者取消権の行使期間を延長して下さい。 (理由)被害にあった消費者が、どうしたらよいか思い悩むうちに時間が経過することはよくあります。また、契約を取消すことができると知らない消費者も多く、社会問題になりマスコミ報道などで初めて取消すことができると知ることがあります。被害救済の観点からも取消権の行使期間が追認をすることができる時から6ヶ月、契約締結時から5年では短いと考えます。 ●第3の9. 不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果について(中間取りまとめP.27以下) (意見)契約が取消された場合、消費者が事業者に返さなくてはならない範囲は、そのとき手元に残っているものに限るべきです。(現状回復義務を免除または縮減する特別規定を設けるべきです) (理由)消費者が取消権を行使しても、消費した分の商品やサービスをお金に換算して返さなくてはならないとすると、結局、対価を支払ったことと同じになってしまい、消費者は全く救済されず、不当な勧誘行為を行った事業者の「やり得」を許してしまうことになり、取消権を行使した意味がなくなってしまいます。 ●第4の2.(2) 「平均的な損害の額」の立証責任(中間取りまとめP.33以下) (意見)「平均的な損害の額」の立証責任は事業者が負うべきです。 (理由)第9条1号「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」については、消費者が立証責任を負うものとされていますが、当該事業者に固有の事情であり消費者が立証することは困難です。そもそも事業者が一定のコスト計算の上に提示している筈の損害賠償予定額であり、その正当性を証明することは、事業者にとっては困難でない筈です。不当な条項を許さないために、立証責任を転換すべきです。 ●第4の4. 不当条項の類型の追加について(中間取りまとめP.36以下) (意見)消費者の解除権、解約権をあらかじめ放棄させる条項は、不当条項に加えて下さい。 (理由)消費者に認められた解除権は、消費者の重要な権利です。消費者の重要な権利である解除権・解約権を放棄させ、これを奪うような条項は、例外なく無効として下さい。 ●第5の1. 条項使用者不利の原則 (意見)事業者により一方的に準備された定型約款や、個別交渉を経ることなく作成された条項については、条項使用者不利の原則を明確にしてください。 (理由)全国消団連の調査(第6回専門調査会資料4)では、7割を超える消費者が契約内容を「理解できない場合が多い」と回答しています。消費者契約法第3条には「契約条項の平易明確化」の努力義務が定められ、また、同時に「消費者の努力義務」も定められていますが、なお通常の方法による解釈ではどうしても理解できないような条項も見られる現状もあります。条項自体が多義的であることによるリスクについては、自ら契約条項を準備し使用している事業者が負うことを明確にすべきです。 以上 |