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電力システム改革の制度設計に関する意見を提出しました。
(小売契約時の情報提供義務について)

2015年3月31日

(経済産業大臣、資源エネルギー庁長官、消費者庁長官、消費者委員会委員長へ提出)

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
代表理事(共同代表)河野 康子
代表理事(共同代表)丸山 善弘
代表理事(共同代表)山根 香織

電力システム改革の制度設計に関する要望
(小売契約時の情報提供義務について)

 2013年に電力システム改革の方針が決定されて以降、段階的に改革が進められています。昨年の通常国会では第二段階となる法改正が行われ、2016年春からの小売り全面自由化を目指して、政府の審議会において様々な論点について具体的な制度設計が検討されています。

 その論点の一つとして、小売契約時に消費者に説明する必要がある事項についても案が示されていますが、消費者の視点から見たとき不十分であると考えています。以下の意見を申し述べますので、今後の検討に反映していただけるようお願い致します。

【意 見】

 消費者にとって、購入する電気の電源構成や費用内訳は「知りたい」「選びたい」重要な情報です。電力システム改革の具体化にあたっては、電源構成や費用内訳に関する情報提供を全ての電力供給事業者に義務付け、消費者が容易に比較検討できるような仕組みを整備してください。

【理 由】

 電力システム改革は市場メカニズムの活用を基本として進められていますが、市場メカニズムを機能させ、公正性と透明性が確保された市場を形成するためには、市場において消費者が主体的に行動し、選択し、事業者間で活発な競争が行われなければなりません。そのために、消費者と事業者の間にある情報を中心とした格差を埋めていくことが重要です。選択のために必要な情報の多くは事業者側にあり、それがオープンにされる必要があります。(資料1)

 消費者の選択は現在と未来の社会経済に大きな影響を及ぼします。そのことを自覚し、自らの消費生活について考え、主体的に選択する社会を「消費者市民社会」と呼び、消費者教育推進の目標となっています。消費者市民社会の形成は「再生可能エネルギー導入の最大限加速」といった他の政策目標にとっても基盤となるものであり、その環境整備は政策や制度の設計にあたって重要視される必要があります。電力システム改革における消費者対応も、こうした消費者政策の流れの中に位置付けられるべきです。(資料2〜資料5)

 消費者の主体的で合理的な選択のためには、購入する電気の電源構成(再生可能エネルギーや化石燃料、原子力といった発電源に関する情報)や費用内訳(再エネ発電賦課金や燃料調整費だけでなく、託送費用や原子力関連費用などの情報)に関する情報提供を義務付ける必要があります。情報が開示されなければ選択の材料にすることもできず、全ての電力供給事業者に義務付けられなければ比較することができず、適切にルール化されず不確かな広告・宣伝が行われれば消費者の誤認を招きかねません。

 正しい情報がグラフなどを使った理解し易い形で提供されなければなりません。消費者の選択を助ける基盤整備を進める必要があります。欧米で行われているように、消費者の選択に必要な情報が、一定のルールに従って比較可能な形で提供されることが必要です。(資料6)

以上

(資料1) 消費者基本法より (平成16年)

(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差にかんがみ、消費者の利益の擁護及び増進に関し、消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務等を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策の推進を図り、もつて国民の消費生活の安定及び向上を確保することを目的とする。

(基本理念)
第二条 消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進は、国民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で、消費者の安全が確保され、商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映され、並びに消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。

(資料2) 平成20年版国民生活白書 「はじめに」 より

「相互依存の中で成り立つ社会において、人々が受け身で生活するか、主体で生活するかによって今後の我が国の社会、そして世界の将来像は大きく変わりうる。欧米において「消費者市民社会(Consumer Citizenship)」という考えが生まれている。これは、個人が、消費者・生活者としての役割において、社会問題、多様性、世界情勢、将来世代の状況などを考慮することによって、社会の発展と改善に積極的に参加する社会を意味している。つまり、そこで期待される消費者・生活者像は、自分自身の個人的ニーズと幸福を求めるとしても、消費や社会生活、政策形成過程などを通じて地球、世界、国、地域、そして家族の幸せを実現すべく、社会の主役として活躍する人々である。そこには豊かな消費生活を送る「消費者」だけでなく、ゆとりのある生活を送る市民としての「生活者」の立場も重要になっている。そうした人たちのことは「消費者市民」と呼べよう。一人一人がそれぞれの幸せを追求し、その生活を充実したゆとりのあるものにできる社会、そうした社会を目指すためには残念ながら受け身の生活では実現しない。」

(資料3) 消費者教育推進法 第2条より (平成24年)

「この法律において「消費者市民社会」とは、消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会をいう。」

(資料4) 消費者教育の推進に関する基本的な方針 「はじめに」 より (平成25年)

「特に、持続可能な社会を形成する上では、環境、資源エネルギー等に与える消費行動の影響を自覚する消費者が大きな役割を果たす。多くの消費者問題、社会問題への対応やその問題解決において、行政や事業者のみならず、消費者自身もその担い手として関わることが望まれる領域や過程もある。
 こうした社会的役割を認識し、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会、すなわち消費者市民社会を目指して、行動する消費者が求められている。このため、消費者市民社会の形成に参画することの重要性について、理解及び関心を深めるための教育を推進しなければならない。

(資料5) 電力システム改革専門委員会報告より (平成25年)

I なぜ今、電力システム改革が求められるのか
3.電力システム改革を貫く考え方
・・・これまで料金規制と地域独占によって実現しようとしてきた「安定的な電力供給」を、国民に開かれた電力システムの下で、事業者や需要家の「選択」や「競争」を通じた創意工夫によって実現する方策が電力システム改革である。・・・・

II 小売全面自由化とそのために必要な制度改革
3.自由化に対応した需要家保護策等の整備
・・・真に「電力選択の自由」を実現するためには、消費者が自らの意思で、適切な情報に基づいて選択できる環境が必要である。・・・・

(資料6) ドイツの例