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消費者行政チェックポイント調査活動をまとめました。


T.調査の概要
1.調査の目的
 地方分権や行財政改革の名の下に、都道府県の消費生活センター統廃合や相談員削減の動きがいくつかの自治体から報告され、消費者行政全体の予算・人員削減の動きも各地に広がっている。
 消費者行政の後退を食い止め、消費者のための消費者行政が整備されることを目指して、各地の消費者行政の進展度と近年の後退度を各地の消費者自身が検証し、消費者行政のあり方を議論する出発点として、さらには消費者行政の充実を求める各地の要請行動の道具として、「消費者行政チェックポイント」の調査を実施した。
2.調査の実施要領
(1)調査対象: 47都道府県の消費者行政
(2)調査主体: 全国消費者団体連絡会消費者行政研究グループが呼びかけ、各都道府県で実施主体となる団体を決めて、その団体が中心になって実施。
(3)調査方法: ○6〜7月初めまでに、各地の消費者団体が、実際に都道府県の消費者行政担当部局(消費生活課や消費生活センター)を訪問して、行政担当者の協力を得ながら「チェックポイント」の各項目の調査を行った。

○ただし、過去の資料の調査などが必要な場合は、調査用紙を担当者に託して1〜2週間後に再訪問して調査用紙を回収。
(4)調査事項: @消費者行政担当職員数、A消費者行政予算、B消費生活相談員および相談件数、C消費生活センターの設置、D消費生活対策審議会などの5年間の推移

(注)「消費者行政予算」には、相談・啓発、消費者教育、調査・研究、商品テスト、消費者団体活動支援、消費生活センター運営等諸経費、審議会等諸経費、生協育成等融資・貸付金など諸種の経費があるが、今回の調査では、計上された消費者行政予算にどのような項目が含まれるかの詳細は聞いていない。あくまでも当該自治体が消費者行政予算として予算措置しているものを回答していただいている。
(5)調査実施期間:2001年7月〜8月
3.集計およびランキング
(1)集計: 消費者行政研究グループ事務局で実施
(2)ランキングの検討:
各地から寄せられたチェックポイントの集約結果を採点基準により点数化し、ランキングを作成。採点は、別記の「基本的な考え方」をもとに、採点表を作成して実施。
(3)ランキングの対象項目:
ランキングにあたり、採点の対象とした調査項目(97年度から2001年度の増減率)は以下の6点である。
@消費者行政の担当職員数(本課と消費生活センターの職員合計。なお、兼任者は0.5を乗じて算定)
A消費者行政予算(本課と消費生活センター予算の合計)
B一般会計予算に占める消費者行政予算の割合
C消費生活相談員の1週間の延べ配置人数
D消費生活センターの設置数
E消費生活審議会等の委員に占める消費者委員の割合
《チェックポイントの採点にあたっての基本的な考え方》
○都道府県の規模や組織構成に違いがあるので、回答された数値を単純には比較できない。そこで、各都道府県の過去5年間の増減を計数化して比較する。

   計数化の基本は、 2001年度
            ―――――  −1×100
            1997年度          とする。
  つまり、1997年度の数値を100として、2001年度の数値を算出することになる。
○なお、1997年度から2001年度の間で数値が大きく増減することもあるので、その際は、その増減の理由を勘案しながら、総合的な評価を行う。
《採点表》
5点 (97年対比の2001年度の増減率:+100%以上)
4点 (      同       :+60〜+100%未満)
3点 (      同       :+40〜+60%未満)
2点 (      同       :+20〜+40%未満)
1点 (      同       :+1〜+20%未満)
0点 (      同       :±0)
−1点 (      同       :−1〜−20%未満)
−2点 (      同       :−20〜−40%未満)
−3点 (      同       :−40〜−60%未満)
−4点 (      同       :−60〜−100%未満)
−5点 (      同       :−100%)
U.大幅に後退している大都市圏の消費者行政
〜47都道府県の消費者行政の総合ランキング〜
全国平均  −4点
上位5位
1.福井県 8点
2.新潟県 7点
3.山口県 5点
3.高知県 5点
5.福島県 3点
 
 
ワースト5位
1.神奈川県 −16点
2.広島県 −11点
3.東京都 −8点
3.大阪府 −8点
5.秋田県 −7点
5.愛知県 −7点
5.鹿児島県 −7点
 今回の調査項目のうち、@消費者行政の担当職員数、A消費者行政予算、B一般会計予算に占める消費者行政予算の割合、C消費生活相談員の1週間の延べ配置人数、D消費生活センターの設置数、E消費生活審議会等の委員に占める消費者委員の割合の6項目の採点を行い、それらを合計してランキングを行った。47都道府県全体では、−4点となり、1997年度から2001年度の5年間に消費者行政は全国的に大きく後退していることがあきらかとなった。
 そして、47都道府県別の採点結果をみると(別図、別表1・2参照)、この5年間で点数が増加した県は10県で、横ばいが4県、残り33県は点数を減少させている。
 消費者行政後退の傾向は消費者行政予算で顕著で、47都道府県全体では97年度から2001年度にかけて−25.6%と5年間で四分の一も減少しており、47都道府県の一般会計予算に占める割合も0.023%から0.017%へとその比重をさらに落としている。人口1人当たりの消費者行政予算額をみても、97年度の94円から2001年度にはわずか70円へと減少させている。(参考図、参考表1参照)

ランキングの上位5位とワースト5位とを示すと、上表の通りとなった。
97年度から2001年度にかけた5年間に消費者行政が前進している県をみると、地方の県が上位を占めている。従来、消費者行政が立ち遅れていたと思われる県が比較的健闘している。
 一方、この5年間に消費者行政が後退している県のワースト5位をみると、消費生活センターの統廃合問題をはじめ消費者行政の後退が懸念されていた神奈川県や広島県がワースト上位2位を占め、東京都や大阪府など巨大都市における消費者行政がこの5年間でかなり後退してきている現状を示している。これらの都府県は、従来は「消費者行政先進県」といわれていただけに深刻な問題だといえよう。
V.項目別にみた採点結果
採点対象とした6項目の47都道府県全体の結果と上位5位、ワースト5位について以下各項目ごとにみていく。
1.職員減員で消費者行政の充実が図れるか〜消費者行政の担当職員数(本課+消費生活センター)〜
 
全国合計  - 4.5%(1,340人→1,280人)
上位5位
1.埼玉県 65.0% (52人→ 85人)
2.新潟県 22.2% (14人→ 17人)
3.山形県 11.4% (18人→ 20人)
3.高知県 11.4% (18人→ 20人)
5.兵庫県 11.1% (90人→100人)
ワースト5位
1.広島県 -41.9% (31人→18人)
2.神奈川県 -34.6% (81人→53人)
3.鳥取県 -21.7% (12人→ 9人)
4.大阪府 -21.4% (21人→17人)
5.福岡県 -20.0% (20人→16人)
*数値は97年度対比の2001年度の増減率。( )内は97年度と2001年度の実人数の推移。

 消費者行政の本課と消費生活センターを合わせた職員数は、この5年間で47都道府県全体では−4.5%と減少幅は少ないが、この5年間で増員されたのは9県で、横ばいが9県、残る29県は減員している。
 増員している上位5位をみると、埼玉県が65.0%増とかなり高くなっているが、これは2001年度から消費生活相談員を非常勤職員の扱いに変更したことによるもので、この部分を除くと横ばいである。他の増員県にしても職員数そのものは大都市圏を除いて20人前後ともともと少ない。
 ワースト5位では、消費生活センターの統廃合を進めている広島県と神奈川県で大幅の減員である。なお、大阪府と福岡県は大都市圏に属しながら20人以下の職員配置しかなされていない。
2.少ない予算から、なおも減額される消費者行政予算〜消費者行政予算(本課+消費生活センター)〜
全国合計  -25.6%( 94円→ 70円)
上位5位
1.新潟県 32.7% ( 19円→ 25円)
2.高知県 32.6% ( 68円→ 90円)
3.山口県 26.6% (129円→165円)
4.福岡県 19.9% ( 22円→ 26円)
5.宮崎県 12.0% (129円→145円)
ワースト5位
1.島根県 -56.0% ( 83円→ 37円)
2.神奈川県 -49.0% ( 30円→ 15円)
3.長崎県 -45.7% (230円→127円)
4.東京都 -43.5% (298円→165円)
5.秋田県 -43.4% (127円→ 73円)
*数値は97年度対比の2001年度の消費者行政予算(本課+消費生活センター)額の増減率で、( )内は97年度と2001年度の人口1人当たりの消費者行政予算額である。
(注)「消費者行政予算」には、相談・啓発、消費者教育、調査・研究、商品テスト、消費者団体活動支援、消費生活センター運営等諸経費、審議会等諸経費、生協育成等融資・貸付金など諸種の経費があるが、今回の調査では、計上された消費者行政予算にどのような項目が含まれるかの詳細は聞いていない。あくまでも当該自治体が消費者行政予算として予算措置しているものを回答していただいている。

 47都道府県全体の消費者行政予算は、この5年間で−25.6%と四分の一も減額されている。これを人口1人当たりでみると、97年度の94円から70円と減少している。僅かでしかない消費者行政予算が更に減額されているということは、規制緩和・国際化・情報化のもとで「消費者の自己責任」が強調されながらも、それに対応した消費者施策が位置づけられていない現実を如実に示すものと言わざるをえない。
 5年間に増額した県の上位5位のうち、新潟県が32.7%、高知県が32.6%であるが、2001年度の消費者行政予算の人口1人当たりの予算額では新潟県では僅か25円にすぎない。
 ワースト5位では、島根県が−56.0%と下げ幅が最も大きく人口1人当たりでは83円から37円へと急減している。また、神奈川県も−49.0%と5割近く急減し2001年度には僅か15円と全国最低となってしまっている。
 なお、先にも触れたように、今回の調査では当該自治体で「消費者行政予算」としているものを回答していただいている。そのなかには生協に対する貸付・融資などを含んでいるケースもあり、これが消費者行政予算額を全体で引き上げている場合もあることに留意する必要がある。
3.わずか0.017%にすぎない消費者行政予算〜一般会計予算に占める消費者行政予算比率〜
全国合計  -27.5%( 0.023%→ 0.017%)
上位5位
1.高知県 39.7% (0.009→0.013)
2.新潟県 24.6% (0.004→0.005)
3.山口県 20.7% (0.025→0.030)
4.福岡県 12.7% (0.007→0.008)
5.奈良県 6.8% (0.012→0.013)
ワースト5位
1.島根県 -60.1% (0.011→0.004)
2.長崎県 -52.1% (0.042→0.020)
3.石川県 -48.1% (0.037→0.019)
4.神奈川県 -47.9% (0.014→0.008)
5.秋田県 -47.3% (0.023→0.012)
*数値は97年度対比の2001年度の増減率。( )内は97年度と2001年度の消費者行政予算比率(%)。
 少ない消費者行政予算であるが、それを一般会計予算に占める割合でみるとより一層鮮明となる。
 47都道府県全体では97年度の0.023%から2001年度には0.017%へと減少している。0.017%とは、自治体の予算1万円のうちわずか1.7円しか消費者行政に使われていないということである。一般会計予算は5年間で2.6%増となっているのに、消費者行政予算は前述のように−25.6%である。つまり、自治体の財政難のために消費者行政予算も一律に削減されているのではなく、消費者行政が軽視されていることがわかる。もともと小さな消費者行政がますます施策の隅に追いやられているのである。
 都道府県ごとの順位をみると、一番伸び率が高いのは高知県の39.7%であるが、それでも一般会計予算に占める割合は2001年度で0.013%と全国レベルより低い。上位2位の新潟県(伸び率24.6%)ではわずか0.005%と極めて低い水準である。
 ワースト5位をみると、島根県が−60.1%も減少し、神奈川県はワースト4位であるが、−47.9%と5割近い下げ幅で、一般会計予算に占める割合も0.008%にまで急減している。

4.相談件数の伸びに追いつかない相談員の配置〜相談員の1週間の延べ配置人数〜
全国合計  0.9%( 1,759人→ 1,775人)
上位5位
1.山口県 40.0% (20人→28人)
2.三重県 39.1% (23人→32人)
3.福島県 25.0% (16人→20人)
3.和歌山県 25.0% (24人→30人)
3.徳島県 25.0% (20人→25人)
3.長崎県 25.0% (16人→20人)
3.大分県 25.0% (20人→25人)
ワースト5位
1.神奈川県 -45.0% (100人→55人)
2.広島県 -20.0% ( 50人→40人)
3.兵庫県 -18.2% ( 33人→27人)
4.愛知県 - 1.3% ( 77人→76人)
5.東京都 - 1.1% ( 90人→89人)
 
 
*数値は97年度対比の2001年度の増減率。( )内は97年度と2001年度の実人数の推移。
  ランキングの採点対象とはしていないが、都道府県が受け付けた年間の相談件数は96年度から2000年度にかけて約30万件から約35万件へと15.8%増加している。
 この増大する相談に対応する消費生活相談員の1週間当たりの配置数を47都道府県全体でみると、97年度の1759人から2001年度の1775人へとわずか0.9%の伸びにすぎない。
 都道府県別にみると、この5年間で相談員が増えたのは13県にすぎず、逆に減少したのは5都県である。あとは横ばいである。
 減少したなかでも神奈川県は−45.0%と最も減少幅が大きく、5年前に比べてほぼ半減である。同じく消費生活センターの統廃合をした広島県の−20.0%を大きく上回っている。


5.気になる消費生活センター統廃合の動き〜消費生活センターの設置数〜
全国合計  - 5.1%( 118所→ 112所)
上位5位
1.福井県 100.0% (1所→2所)
 
ワースト5位
1.広島県 -66.7% (3所→1所)
2.神奈川県 -55.6% (9所→4所)
*数値は97年度対比の2001年度の増減率。( )内は97年度と2001年度の実箇所数の推移。
今回の調査で消費生活センターが増減した県は3県のみで、残る44都道府県では変化はない。
 増えたのは福井県で1カ所から2カ所になり、減ったのは広島県が3カ所から1カ所へ、神奈川県が9カ所から4カ所へと急減している。神奈川県はここ数年で1カ所にする計画がある。
 市町村におけるセンター業務の「充実」が口実にされているようであるが、現実には市町村でのセンター設置はいわれるほどすすんでいるとは思われない。国民生活審議会消費者政策部会の報告でも指摘されたように、市町村とは違った役割を持っている都道府県の消費生活センターの統廃合は、今後の消費者行政の重要性からみても大きな問題である。
 また、相談業務の民間委託の動きもあるようで、各地の動向に今後とも注視していく必要がある。



6.消費者参加の拡充と審議の充実が求められているのに…〜審議会等の消費者委員の比率〜
全国平均  1.9%( 32.5%→ 33.1%)
上位5位
1.群馬県 68.4% (25.0%→42.1%)
2.佐賀県 33.3% (30.0%→40.0%)
3.和歌山県 28.6% (25.9%→33.3%)
4.福島県 20.0% (31.3%→37.5%)
5.富山県 11.1% (30.0%→33.3%)
 
ワースト5位
1.神奈川県 -20.0% (25.0%→20.0%)
2.東京都 -12.4% (15.2%→13.3%)
3.愛知県 - 6.9% (33.3%→31.0%)
4.山梨県 - 6.6% (41.2%→38.5%)
5.香川県 - 5.5% (47.6%→45.0%)
5.埼玉県 - 5.5% (47.6%→45.0%)
*数値は97年度対比の2001年度の増減率。( )内は97年度と2001年度の消費者委員比率(%)。
 消費生活審議会などの委員総数に占める消費者委員の比率の拡充と審議会の審議内容の充実は、消費者の権利を基礎に消費者行政が推進される上で大事な点だが、この5年間の審議会等の委員のなかで消費者委員の占める割合をみると、47都道府県全体では1.9%の増で、97年度の32.5%から2001年度の33.1%へと僅かな伸びに止まっている。また、審議会の開催回数をみてもほとんどの県で年1回の開催で、極めて形式化していることがうかがわれる。
 最も伸び率の高かったのは群馬県で68.4%の増で、比率も25.0%から42.1%へと高めている。この5年間で消費者委員比率を伸ばしたのは10県とわずかである。
 一方、消費者委員比率をこの5年間で下げたのは11県で、下げ幅の最も大きいのは神奈川県の−20.0%(25.0%から20.0%に減少)で、ここでも神奈川県の消費者行政が質的にも後退している点が浮き彫りになっている。
なお、東京都は、委員に占める学識者の比率が高いのが特徴である。しかし、東京都は2001年度に審議会の定数を削減し、消費者参加を推進してきた東京都の姿勢が変化してきていることをうかがわせる点は気になるところである。