午後の部:分科会

消費者政策
“危険情報”収集と発信 〜届いていますか?「ヒヤリ、ハッ!と」〜

時間:13:15〜16:45  会場:センター棟 501号室

 

再び起きたこんにゃくゼリーによる窒息死、過去20 年間に21 名の犠牲者が出たパロマガス湯沸器、くり返し起こる痛ましい事故。ニュースを耳にするたびに「なぜ過去の事故情報は活かされなかったか?事故の芽をすくいとり、対策を講じていれば・・・」と、犠牲者の悔しさ・遺族の悲しみと共に思うことです。

新聞の切り抜き調査、国内外の事故情報の収集・発信の現状、行政・事業者・消費者団体の取り組み等の報告を通して、製品の危険情報の収集はどのように行われているのか浮き彫りにします。そして、集められた情報は広く発信されているのか、発信されていないとしたらその原因はどこにあるのか、など考えます。

参加者による意見交換「危険情報を活かすために私たちができること」に知恵を出し合いましょう。あなたの「ヒヤリ、ハッと」体験もどこかに届けていますか?

 
 

タイムスケジュール

13:15

開会、はじめのあいさつ

13:20

情報発信の現状は?(報告と意見交換)

  • マスコミは? 〜新聞報道の調査から(分科会運営委員)
  • 日本では? 〜各省庁のホームページから(分科会運営委員)
  • 海外では? 〜米国のホームページから(ACAP顧問 芝原 純さん)
14:45

休憩

15:00

地方自治体、事業者、市民団体の情報収集・発信の取り組みは?(報告)

  • 子ども用衣類の安全確保に向けて(東京都消費生活部部長 宮川 雄司さん)
  • メーカーにおける危険情報の収集と活かし方
     (日立アプライアンス(株)品質保証センタ センタ長 巻島 文夫さん)
  • NPOでの子どもの事故情報収集・分析
     (NPOキッズデザイン協議会 専務理事 小野 裕嗣さん)
  • 消費者団体としてウォッチングを続け、提言する(PLオンブズ会議)
16:00

私たち(消費者) にできることは? (会場全体ディスカッション)

16:45

終了

 
 

消費者政策 分科会報告

「分科会テーマ」 “危険情報”収集と発信 〜届いていますか?「ヒヤリ、ハッ!」と〜

参加団体:70団体 参加者:99名(実行委員含む)

◆“危険情報”の発信の現状について

新聞での発信状況調査の報告。高額な「社告」の費用対効果を考える企業に対し、自治体の広報誌活用の提言や、「社告掲載することが企業の質を高めることにつながる」という認識を企業・消費者ともに持つ社会を育てたい、との意見がありました。また、消費生活条例が制定される長野県の消費者団体からは、「国と提携して情報を提供する」条文を入れるよう働きかけているとの報告もありました。

web上の事故情報の収集・提供について日本と米国の状況比較。内閣府・厚労省・経産省の情報サイトは、概ね地味で使い勝手が悪い。米国は担当省庁別ではなく、一画面にテーマを網羅し情報検索がしやすく、当事者が「ヒヤリ、ハッ」とした情報を書き込め、他の人も入手できる、など、姿勢の違いが浮き彫りになりました。情報が検索しやすいシステムの構築、原因究明の前に「ヒヤリ、ハッとした情報」を公開し未然防止に活かす体制、などを求め消費者自身がもっと声を挙げていきたい、との意見に強い共感を覚えました。

◆行政、事業者、消費者・市民団体の情報収集・発信の取り組み報告と意見交換

子ども用衣類の安全確保を目的に、消費者、事業者、学識経験者等からなる協議会において調査・検討・提言を行った自治体。消費者からの問い合わせを社内公開し、製品の改善にいかす家電メーカー。子どもの安全なくらしに向け事故情報収集・分析などを行う、異業種の事業者で構成するNPO。PL法制定運動に関わり、その後もウォッチングと提言を続ける消費者団体。

行政パンフレットより大学生協誌のほうが学生に読まれる例を挙げ、官民の協力が必要。インターネットばかりでなく、消費生活センターで情報が得られる体制の充実が、全体会の講演で宇都宮弁護士が述べた「国民生活センター・消費生活センターの充実を」に繋がるのではないか。消費者団体がメンバー一人ひとりに情報を届けることが情報発信の第一歩。など貴重な意見が交わされました。

 

食
私たちの食料は大丈夫?

時間:13:30〜16:40  会場:センター棟 101号室

 

あいも変わらない偽装表示、食料品価格の高騰、政治的ごり押しで輸入された米国産牛肉、過疎化・高齢化がすすむ農村など、私たちの食卓は危機に見舞われています。食料の安定供給、食料自給率の向上、安全な食の生産・流通・消費のため、消費者はどんな食料の選び方をすればよいのでしょう。

食の分科会ではこうした問題について3 人の専門家からお話を聞き、私たちはどうしたらよいのかを考えます。

  • なぜ食品価格が高騰したのか。バイオ燃料とはどんなもの?遺伝子組み換え作物から燃料が!?燃料と食料の奪い合いで地球環境は大丈夫なの?
  • 農業経営の大規模化、特定の農家や法人を中心とした農業政策で日本の多くの小規模農家は生き残れるの?消費者と生産者が結びつくには?
  • FTA/EPA が農業に与える影響は?それで消費者は豊かになれるのか?日本の食料自給率は上がるの?
 
 

タイムスケジュール

13:30

開会挨拶、分科会趣旨説明

13:40

パネリストからの報告

  1. 「食のグローバル化によって私達の食料はどうなるのか」
      東京大学大学院農学生命科学研究科教授 鈴木宣弘さん
  2. 「日本の農業は生き残れるか」 元明治大学教授 北出俊昭さん
  3. 「バイオ燃料と食料問題」 市民バイオテクノロジー情報室代表 天笠啓祐さん
14:40

休憩、意見質問用紙回収

15:00

パネルディスカッション

16:30

閉会挨拶(東北.北海道生産者)

16:40

終了

 
 

食 分科会報告

「分科会テーマ」 私たちの食料は大丈夫?

参加団体:69団体 参加者:210名(実行委員含む)

食品偽装や食料価格の高騰、食の安全への不信などが続く中、日本の農業は、耕作放棄、担い手不足、高齢化が進み、さらに自由貿易交渉で危機に立たされています。これは、私たちの食卓の危機にもつながるものです。

分科会では、WTO農業交渉や日豪FTA交渉など「食のグローバル化」の中で私たちの食料はどうなるかについて、東京大学の鈴木宣弘教授が報告。食料自給率の急速な低下、国土環境や窒素過多による国民の健康への影響などを指摘し、「自由化で食品価格低下などの短期的な利益では計れないマイナス面も考慮すべき」としました。

次に、そうした中で「日本農業は生き残れるか」と題し、元明治大学教授の北出俊昭さんが、食料供給力の低下、農産物価格の下落、今年度から始まった新たな農業政策の問題点、農業への企業参入問題などを解説し、「消費者・生産者の提携強化のもとで農業再建の展望を持とう」と訴えました。

続いて、近年の穀物からバイオ燃料への転換が世界的な食料や飼料の不足・高騰を招いている問題について、ジャーナリストの天笠啓祐さんが報告。「バイオブームは米国のエネルギー戦略のもとで多国籍企業の利益をもたらしている。温暖化対策にもならないバイオ推進は止めるべき」と警告しました。

3人の提起後、参加者の質問・意見をもとに、討論が行われ、WTOの貿易ルールのあり方、米の生産調整問題、日本でのバイオ推進の動きなどが話されました。最後に、「もっと農業・農村の価値に対して消費者が対価を払ってもいいのではないか(鈴木)」、「国は農業・農村の将来にもっと責任ある対応が必要(北出)」、「食べ物は商品ではない。命の糧として、生産者とのつながりが大切(天笠)」などの意見が表明され、全体で確認されました。

 

税・社会保障
安心してくらせる税・社会保障を考える

時間:13:15〜16:40  会場:センター棟 402号室

 

当分科会は、格差社会の歪みを最も強烈に受けている方々の実態報告を受け、「税の再分配機能はどうなっているのか」「公平な負担とは何か」「社会保障費の財源確保のためには消費税の増税はやむを得ないのか」などをテーマに、参加者のみなさんと意見交換を行います。

税金は、私たちのくらしを支えるために使うものです。それは、「誰が、どの程度負担をするのか」「誰にどのように還元するのか」が常に問われます。また、社会保障・福祉に必要な財源は、税金とともに保険料等でまかなわれていますが、同じように「誰が、どの程度負担し、誰に還元するのか」が問題になります。税金や社会保障・福祉制度における負担と給付のあり方は、私たちの生活に直結しています。

くらしの問題は、今、ホットで重要な問題です。いっしょに考えてみませんか。

 
 

タイムスケジュール

13:15

開会、開会挨拶

13:25

現場からの報告

  • 低所得・非正規雇用と重い公的負担に苦しむ青年の実態
     (いわて青年ユニオン書記長 平井 正史さん)
  • 年金生活者の暮らし(医療生協さいたま元理事 倉橋 光男さん)
  • 『自立』を支給制限の口実にしないで(浦安市在住 鈴木芳美さん)
14:25

実行委員会からの資料説明

14:45

休憩

15:00

パネルディスカッション

  • パネリスト 平井 正史さん/倉橋 光男さん/鈴木 芳美さん
  • コメンテーター 富山 泰一(不公平な税制をただす会)
  • コーディネーター 飯田 秀男(全大阪消費者団体連絡会)
16:30

まとめ

16:40

終了

 
 

税・社会保障 分科会報告

「分科会テーマ」 安心してくらせる税・社会保障を考える

参加団体:48団体 参加者:73名(実行委員含む)

前半は、格差社会の歪みを強く受けている方々ということで、平井正史さん(いわて青年ユニオン書記長)から「低所得・非正規雇用と重い公的負担に苦しむ青年の実態」について、倉橋光男さん(医療生協さいたま元理事)から「年金生活者の暮らし」について、鈴木芳美さん(浦安市在住)から「『自立』を支給制限の口実にしないで」として、生活の実態報告をいただきました。3氏から、若年世代では非正規労働者が増えている中で、非正規雇用が続くと正社員になることが大変困難になっている実態や、高齢者の税・社会保険料の負担増が続いている実態、母子家庭の総収入が低い中で児童扶養手当が命綱になっている実態などについてコメントをいただきました。また、「図表の読み解き方を学ぶことが大切」として、分科会運営委員より資料集図表の説明を行いました。

後半は、飯田秀男さん(全大阪消団連)をコーディネーター、富山泰一さん(不公平な税制をただす会)をコメンテーターに、生活実態報告をいただいた3氏も交えて、「税の再分配機能は、今どうなっているのか」「公平な負担とはどういうしくみなのか」といった論点について、パネルディスカッションを行いました。所得格差の拡大が続く中で高所得者や大企業への減税が続いていること、後期高齢者医療制度について、社会保障財源をめぐる現状、応能負担と応益負担、行政と市民の役割、といった幅広いテーマについて取り上げ、望ましい給付と負担のあり方について考えあいました。会場からは、「事業者の中でも中小事業者については、低収入に苦しむ層が増えている」「今後とも消費者運動と労働運動がネットワークを組んで、地域での学習などの取り組みを行っていくことが大切」といった意見が出されました。

 

環境
ストップ!地球温暖化!! 〜決め手は何?〜

時間:13:15〜16:45  会場:センター棟 401号室

 

地球温暖化の影響が世界各地で現実の脅威となって現れはじめている中、京都議定書の目標達成すら危うい日本は、有効な対策・政策をすぐに確実に実現していく必要があります。基調講演として「最新の地球温暖化問題についての科学的知見」を、国立環境研究所より詳細に報告いただきます。パネルディスカッションでは環境省等関係省庁、環境対策に積極的な事業者、そして消費者団体、環境NGO・NPO から、温暖化ガス排出削減を着実に実現するための具体的な政策・取り組みが提起されます。それを受け、私たちはどのような社会をめざし、立場の違いも超えてどのような対策を実現していけるのか、会場の参加者を交えてディスカッションします。

長年の患者の訴えが認められた「東京大気汚染公害裁判」の経緯と成果、レジ袋削減活動など、くらしに密着したテーマについても報告します。

 
 

タイムスケジュール

13:15

開会・挨拶

13:20

分科会担当団体活動報告

大気汚染訴訟やレジ袋削減など、この間の取り組みを報告

13:25

基調報告

(独)国立環境研究所 地球環境研究センター 温暖化対策評価研究室 主任研究員 藤野 純一さん

14:25

休憩

14:35

パネルディスカッション

【パネル報告】

  • 環境省 地球環境局 国民生活対策室長 染野憲法さん
  • 経済産業省 産業技術環境局 環境経済室長 藤原豊さん
  • 日本電気(株)環境推進部 環境マネージャー 林 純さん

【市民団体からの報告】

  • 気候ネットワーク/公害・地球懇「京都議定書に関して」
  • 環境エネルギー政策研究所「自然エネルギーについて」
  • 「環境・持続社会」研究センター(JACSES)「環境税等」
  • 京都の約束プロジェクト「政策評価・参画について」

【会場全体ディスカッション】

16:45

終了

 
 

環境 分科会報告

「分科会テーマ」 ストップ!地球温暖化!! 〜決め手は何?〜

参加団体:58団体 参加者:90名(実行委員含む)

初めに担当団体活動報告として、東京大気汚染公害裁判原告団、大気汚染全国一斉測定運動実行委員会、東京都地域消費者団体連絡会から報告がありました。

基調講演として国立環境研究所 地球環境研究センター主任研究員の藤野氏から「日本低炭素社会構築に向けて」とのテーマで講演が行われ、低炭素社会の必要性、今後必要なCO2の削減量、2050年での日本のCO2量70%削減の可能性とそのための対策などについて、わかりやすく解説をいただき、市民・行政・企業の連関の中で消費者の役割(何を選択するか、市民からの要求発信)の重要性について指摘がありました。

休憩を挟んで、パネルディスカッションを開催しました。最初にパネル報告として、環境省、経産省、企業(NEC)からそれぞれ温暖化防止の政策や取り組みについて報告があり、環境省からは、家庭の省エネのポイントの解説と「他人事ではなく自分事に」とのアピールが、経産省から事業者のCO2削減の取り組みや政策内容、NECからは社員啓発を含めた報告がありました。続けて、市民団体からの報告として、気候ネットワーク、公害・地球環境問題懇談会、環境エネルギー政策研究所、「環境・持続社会」研究センター、京都の約束プロジェクト実行委員会から報告が行われ、それぞれの団体から、今まで以上に踏み込んだ政策の必要性、石炭火力発電所の問題、自然エネルギー利用事業、炭素税導入の必要性、温暖化対策制度導入の世論形成の取り組みについて報告されました。その後、会場全体でディスカッションを行いました。市民(家庭)からのCO2よりはむしろ企業(産業)から排出されるCO2の削減に主な議論が集まりましたが、講演者、報告者、会場参加者それぞれから行政や市民の取り組みに対する要望・期待について活発に意見交換がなされました。最後に、藤野氏から、(1)温暖化防止のためのルール作りへの市民参加、(2)必要なサービスと不必要なサービスの区別、(3)努力したところを誉める行動、の3つが提言され、終了しました。

 

公共交通の安全
公共交通の安全と規制緩和の影響

時間:13:15〜16:30  会場:センター棟 403号室

 

最近、バスや鉄道、飛行機などの事故が多くなったと思われませんか。乗客数の多い乗物の事故は、一度に大勢の被害者を出してしまうため、その家族や知人など数知れない人々を悲しみの底に陥れています。事故に遭うまでまさか自分が事故に巻き込まれるとは、誰も思っていないでしょう。しかし、最近の公共交通機関の安全状況は安心して利用できるようなものではなく、何時、我が身に危険が及ぶのか全く分かりません。

10 年ほど前から推進された運輸事業の規制緩和により、飛行機・鉄道・バス・タクシーなど次々に会社間の競争が激しくなり、コスト削減により安全性が脅かされているのも一つの要因です

この「公共交通の安全」分科会では、こうした問題に詳しい埼玉大学の安藤陽教授をお招きしてお話をお聞きします。そして、現場で働いている方々の報告を交えながら、消費者からの視点や問題提起を明らかにしていきます。

 
 

タイムスケジュール

13:15

開会、開会挨拶

13:20

基調講演「公共交通の安全性と規制緩和の影響」

埼玉大学経済学部教授 安藤 陽さん

14:40

パネルディスカッション

【パネリスト】

  • 安藤 陽さん
  • 奥田 明子さん(東京都地域消費者団体連絡会)
  • 小池 敏哉さん(JR東京総合車両センター)
  • 木挽 勝さん(日本航空羽田整備事業所)
  • 小林 隆さん(小田急タクシー)
15:00

報告

小池 敏哉さん/木喇 勝さん/小林 隆さん

15:30

意見交換

16:30

閉会・終了

 
 

公共交通の安全 分科会報告

「分科会テーマ」 公共交通の安全と規制緩和の影響

参加団体:19団体 参加者:34名(実行委員含む)

公共交通機関の事故が頻発する折、全国消費者大会では今回初めて「公共交通の安全」分科会として位置付け、「公共交通の安全と規制緩和の影響」というテーマで、34名の参加を得て開催しました。

冒頭、埼玉大学教授の安藤陽さんからは、(1)公共交通における最近の状況〜交通事業においてなぜ事故は多発するのか、(2)原因としての規制緩和政策、(3)企業の社会的責任(CSR)、(4)運輸安全法と政府の監督責任、(5)運賃・料金水準と利用者・消費者の意識、(6)安全・安心な公共交通を求めて、という6つの柱に沿って基調講演をいただきました。

基調講演を受けたパネル討論では、最初に規制緩和が安全輸送に与えている影響として、鉄道・航空・バスの現場から報告をいただきました。JR東京車両センターの小池敏哉さんからは、多発する首都圏における輸送障害の実態と安全運行のための適正要員配置について、日本航空羽田整備業部の木喇勝さんからは、航空事故は多数の犠牲者を伴うが、安全確保のために重要な航空機の整備を自由化の中で経費削減から海外に委託していることへの不安、小田急交通の小林隆さんからは、規制緩和による過当競争の激化と「ツアーバス」という新しい営業形態に伴う過酷な労働者の実態など、それぞれの現場からの報告がありました。

その後、安藤教授と消費者として東京都地域消費者団体連絡会の奥田明子さんが加わり、5名によるパネル討論を行いました。討論では、奥田さんが現場の実態を聞いた感想を述べた後、バスの長距離運行と運転手2名配置、航空の自由化と安全との関係、安全安心がキーワードになっている今日、現場から安全を確保する為に消費者との連携について意見交換が行われました。最後に安藤教授がまとめを行い終了しました。

 

くらしと憲法
格差社会を超えて未来へ、今こそくらしの中に憲法を

時間:18:00〜20:00  会場:センター棟 501号室

 

「国民投票法」の成立により、憲法改正の議論に弾みがついたと言われていますが、その前に現在の憲法の理念を理解して、くらしの中で息づかせる必要があるのではないでしょうか。

今、ワーキングプアと呼ばれる貧困層が拡大しており、その多くが労働基準法すら守られない職場で働いています。未来を担う若者が使い捨てにされ、過労死・過労自殺に追い込まれるのは、「自己責任」なのでしょうか。憲法25 条に規定されている健康で文化的な生活を営む権利は保障されていないのが実情です。しかし、こうした状況の中でも、既存の組織に頼らず自らの権利を獲得するために立ち上がる若者も出てきました。

この「くらしと憲法」分科会では、立正大学の金子勝教授をお招きして生きる権利に焦点を当てながら憲法についてお話をいただき、生活保護の実態と若者たちの報告を交えて、憲法を守る意味について考えていきます。

 
 

タイムスケジュール

18:00

開会、開会挨拶

18:05

講演「生きる権利と日本国憲法 ―“憲法の語り部”となるために―」

立正大学法学部教授 金子 勝さん

19:05

報告

  • 全国青年司法書士協議会 澤田 章仁さん「生きる権利と憲法」
  • 首都圏青年ユニオン書記長 河添 誠さん
     「貧困」と「労働基準法以下の労働条件の拡大」と対抗する運動を― 憲法25条と憲法28条とをくらしの中に!―」
19:45

まとめ

20:00

終了

 
 

くらしと憲法 分科会報告

「分科会テーマ」 格差社会を越えて未来へ、今こそくらしの中に憲法を

参加団体:42団体 参加者:70名(実行委員含む)

今年度の「くらしと憲法」分科会では、格差が拡大してワーキングプアと呼ばれる貧困層が増加している現状を捉えて、労働現場や日常の生活において、憲法に明記されている権利が保障されているのか、経済的な側面から憲法問題にアプローチすることを目的として、「格差社会を超えて未来へ、今こそ暮らしの中に憲法を」というテーマを設定して、70名の参加を得て開催しました。

首都圏青年ユニオン書記長の河添誠さんからは、「『貧困』と『労働基準法以下の労働条件の拡大』と対応する運動を〜憲法25条と28条をくらしの中に」として、憲法が全く無視されている若者の労働現場の実態について、最低限の労働条件の底が抜けた労働環境では、「残業代未払い」「有給休暇なし」「社会保険・雇用保険未加入」という違法の3点セットがまかり通っているが、こうした中でも誰もが加入できるユニオンとして、若者たち自身が団体交渉等により、権利を獲得するために立ち上がっている様子が報告されました。

全国青年司法書士協議会(憲法委員会委員長)の澤田章仁さんからは、「生きる権利と憲法」として、貧困のため生活に苦しむ人々に対して、行政側は充分な対応を行っていないこと、生活保護は申請が受理されないことが大半で、せっかく受けることができたとしても、辞退を強要されるなどの事例や、憲法第25条をプログラム規定とするのではなく、生活保護等の施策は生存権の具体化であり、生きるための人権の主張であるとの報告がありました。

最後に、立正大学法学部教授の金子勝さんからは、「生きる権利と日本国憲法〜憲法の語り部となるために」と題して講演をいただきました。憲法を無視する政治により国民の生活全般が脅かされているが、今こそ「平和的福祉国家」をめざすべきである。憲法9条は多くの国から高い評価を受けており、みんなが憲法の大切さを伝える活動を広げることが重要との指摘をいただきました。

今回の3名の方からのお話を通して、私たちは現在の憲法の理念をより理解して、暮らしの中で息づかせる必要があるということを改めて実感しました。