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省エネルギーの取り組み 「ヒートポンプを学ぶ」 〜脱炭素社会に向けた緩和策・適応策を知る学習会〜開催報告
2025年2月に策定された「第7次エネルギー基本計画」及び「改定地球温暖化対策計画」により、日本における温室効果ガス削減目標が示され、家庭部門においては基準となる2013年に対して2030年に66%削減することが求められています。全国消団連が開催したこれまでの学習会で、目標達成に向けて「私たちにできること」として、「知る」「伝える」「省エネルギーに努める」「再生可能エネルギーを活用する」「気候変動に取り組む政策を求める」という方向性と具体例を知ることができました。今回はこのうち省エネルギーに焦点を当てて、これまで以上の活用が期待されているヒートポンプの基本的な知識のほか、温室効果ガスの削減に向けてこの技術の活用と可能性などについて学びました。
【日時】1月30日(金)14時00分〜16時00分〔 Zoomを活用したオンライン学習会 〕
【講師】印南 幸夫さん(早稲田大学 持続的環境エネルギー社会共創研究機構環境エネルギーシステム総合研究所 招聘研究員)
【参加者】27名
概要(事務局による要約)
「ヒートポンプを学ぶ〜私たちの生活を快適に、ヒートポンプが安全な社会を支える〜」
印南 幸夫さん

ヒートポンプについて
ヒートポンプは、一言でいうと「熱(ヒート)を汲み上げ、移動(ポンプ)させる技術」です。身近な例ではエアコンです。今は暖房の季節ですから、外気からくみ上げた熱を部屋に運んで暖房としています。温度の低いところから温度の高いところに熱を汲み上げて活用する仕組みがヒートポンプです。その時に高い温度側を利用するのは暖房あるいは加温、低い温度側を利用するのは冷房あるいは冷却です。
ヒートポンプは消費するエネルギーよりも暖房冷房の能力が大きい、とても省エネに優れた技術であることが特徴です。大気の熱や地中熱、河川水などの再生可能なエネルギーの熱を集め、それらを移動させながら利用に適した温度に調整して活用します。この際に使用する電力は、主に「熱を運ぶための動力」として使われています。そのため、わずかな電力で多くの熱エネルギーを利用できることも大きな特徴です。例えば。家庭用ヒートポンプのエアコンの冷房運転では、おおよそ「1」の電力で「6」の熱を室内から汲み出し、合計「7」の熱として屋外に放出するイメージです。つまり、わずか1の電力で、6の熱エネルギーを外に排出していることになります。
暖房運転の場合は、使用する電力「1」に対して、その約5倍に相当する熱を外気から取り込み、さらに自ら消費した電力分も加えて、合計「6」の熱エネルギーで室内を温めます。
ヒートポンプの性能は、家庭用エアコンの場合、この20年で約30%高性能化されたと言われています。インバーター制御による省エネ運転、送風機の高効率化、熱交換器の性能向上など、さまざまな技術の積み重ねによって、さらに性能向上を図っています。
家庭用のヒートポンプ給湯器はエコキュートという愛称で広く普及してきています。エコキュートの場合は「1」の電気を使って「3」の熱を集めてお湯を作ります。これも燃焼や、電気ヒーターでお湯を作るのに比べ省エネです。また、火を使わない安全安心な加熱方法であることも大きな特徴になっています。
2023年度の統計では、家庭部門のエネルギー消費は暖房が約25%、給湯は27%程と、この二つで半分以上のエネルギー消費を占めています。この部分の省エネ化を図っていくことはCO2削減に大きく寄与することになります。
ヒートポンプは、さまざまなところで活躍しています。家庭で代表的なヒートポンプは、エアコンの冷暖房で使われています。冷蔵庫もヒートポンプの冷やすサイクルを利用した製品の一つです。最近ではヒートポンプ乾燥機能付き洗濯機も普及してきました。給湯器や床暖房などではお湯を使いますが、この時ヒートポンプを使い、省エネで加温する方法も普及しつつあります。
ヒートポンプがどのようにして冷やしたり温めたりするのかについて説明します。ヒートポンプの内部には熱を運ぶ役割を持つ「冷媒」と呼ばれる物質が入っています。この冷媒は、圧縮されることで温度が上昇し、逆に膨張することで温度が低下するという性質があり、圧縮による温度上昇と、膨張による温度低下を繰り返しながら、装置の中を循環します。エアコンであれば室内の空調温度に近い25度近辺で効率よく熱の出し入れが行える冷媒を使ってヒートポンプを作る必要があります。 その代表的な例がフロンです。フロンには多くの種類があり、目的に合わせて特徴をうまく選択して使っています。
ヒートポンプは2024年に世界で約3億4,400万台ほど、そのうちエアコンとして約1億3,000万台が使われています。この中で、日本国内では業務用を含めて約1,000万台が使用されています。
ヒートポンプが取り組む重要課題
ヒートポンプが取り組む重要な課題の一つに、地球温暖化問題があります。産業活動の拡大に伴い温室効果ガスの排出量が大きく増加し、地球温暖化が深刻化している現状では温室効果ガス削減は喫緊の課題となっています。
また、化石燃料や鉱物資源など有限な資源をより効率的に使用することも重要です。これらの資源を無駄なく使い、環境負荷を低減しながらエネルギーを確保していくことが求められています。
食料問題については、ヒートポンプの冷やすという機能を使ってフードロスを減らして安全・安心な食品流通(コールドチェーン)を構築していくことも大事なポイントになっていくと思います。
2025年2月に策定されたエネルギー基本計画の中でも、徹底した省エネを行うと書かれています。私たちが取り組める観点からは、高性能な給湯器の普及など住宅の省エネ化の支援があります。メーカーにはトップランナー制度によって製品の効率を上げるための努力が課せられています。
エネルギーの最終利用の50%以上は熱を使っています。カーボンニュートラルを実現するために、ヒートポンプの技術への期待は今まで以上に高まっています。 ヒートポンプ技術そのものは決して新しいものではありませんが、再生可能エネルギーである大気の熱を利用する観点から、改めて注目されています。今後はDXなどを活用してサーキュラーエコノミーへの考慮や、バリューチェーンの最適化のシステム構築が必要だと思っています。
重要課題解決に向けたコンソーシアムの役割と活動
次世代ヒートポンプ技術戦略研究コンソーシアムは、次世代のヒートポンプの技術の基礎研究から実装まで、アカデミックの立場と、産業界、行政関連機関などが連携を取りながら推進していくことを目的に作られました。
中でも冷媒転換は、最重要課題と位置付けられています。従来のフロン冷媒は性能が高く極めて安定している一方で、1990年代に使用されていたフロンは、塩素が含まれており、紫外線と反応してオゾン層を破壊する原因となりました。その後、日本はすべて塩素を含まない代替フロンに転換しました。ただ、代替フロンは、温暖化係数がCO2の約670倍と非常に大きいところが問題です。ヒートポンプ内部に封印されているとはいえ漏えいのリスクが完全にゼロではなく、少しでも温暖化係数の低い「グリーン冷媒」に切り替えていく動きが進んでいます。一方で、温暖化係数が小さい冷媒は分解しやすく、可燃性が高いという特性があり、 安全性を担保し温暖化係数を下げることは非常に重要で、大学、メーカーはじめ国を挙げて冷媒の開発が進められています。そして、このような情報を発信し、ユーザーの理解・協力をいただくこともコンソーシアムの重要な役割の一つです。そのほか、リサイクルを前提とした製品設計をして、リサイクル、リユースを基本とした仕組みを実現すること、機器効率の最大化と、再生可能エネルギーの活用、情報ネットワークを使って、機器、エネルギー、環境負荷の一括管理に取り組むこと、などをテーマとしています。
ヒートポンプが創る未来の社会
ヒートポンプのシステムで、社会全体で必要なところに必要なだけ効率よく熱を使用できる未来ができると考えています。サーキュラーエコノミーの考え方を取り入れて、使用される冷媒や部材などを無駄なくリサイクルできるシステムを構築することによって、さらにヒートポンプが広がり、地球温暖化の問題の解決につながっていくと考えています。
もう一つは電気代を気にせず室内を快適に保ち、健康で安全な暮らしを送る未来です。昔は夏場の電力使用を抑えて省エネに貢献しましょうという動きでしたが、今はエアコンを積極的に使って健康を維持しましょうという世の中に変わってきています。この快適に健康を保つところで、ヒートポンプを活用できると思います。
日本だけではなく、世界全体で熱を上手く使える未来を目指して、ヒートポンプ技術をもっと良くしていくために、コンソーシアムが活躍していきたいと思っています。
ヒートポンプ家電最近の動向(製品の拡大と機能の充実)
ヒートポンプ家電のうち、エアコンについては、各社空調の快適さと省エネ機能のほか、最近は清潔を維持できる機能が大事になっています。
エアコンの寿命は一般的には10年と言われています。10年というのは、修理部品をメーカー側で保管している期間で、それ以上になると、部品がなくなり修理できなくなる可能性があります。また、省エネ性や機能性は10年で15%ぐらい上がっています。10年経っても使えますが、これらのことも知っていただければと思います。
ヒートポンプの技術はまだ発展する可能性が高く、CO2削減に非常に貢献する技術ですので、ぜひ興味を持っていただきたいです。
コラム:参加者アンケートで「気候変動の緩和策または適応策として個人で取り組んでいること」にお答えいただきましたので、ご紹介します。
- 風の通り道を確保して家を涼しくする
- 太陽光発電を設置・利用する
- 再生可能エネルギー由来の電源を調達する
- 会議のペーパーレス化、紙資料がある場合はリユース
- ベランダの雨水をタンクに溜める
- 生ゴミはコンポストで堆肥にして庭で使うなど、食品ロスを減らす
- 古い家電を買い換えて省エネの率を高くする
- 公共交通の利用
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