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地方消費者行政の充実・強化を考えるシンポジウム 報告
全国消団連の地方消費者行政プロジェクトは、47都道府県の協力を得て、2025年度も「地方消費者行政調査」を実施しました。地方消費者行政は、多様化する様々な消費者被害を防ぎ、安心して暮らせる社会を支える重要な基盤です。相談員体制の維持や財政支援の継続が大きな課題となる中、2025年6月5日には衆議院の消費者問題に関する特別委員会が「地方消費者行政の充実強化」を全会一致で決議され、政府の「骨太の方針2025」にも盛り込まれました。
そのような情勢の下、シンポジウムでは行政調査の結果を共有し、地方消費者行政の現状と課題を明らかにするとともに、今後の地方消費者行政充実に向けた方向性を議論しました。
【日時】3月19日(木)14時00分〜16時30分 〔Zoomを活用したオンラインシンポジウム〕
【内容】
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全国消団連2025年度「都道府県の消費者行政調査」報告
大森 隆さん(地方消費者行政プロジェクトメンバー/全大阪消費者団体連絡会)
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パネルディスカッション
意見交換テーマ「地方消費者行政を支援する新たな枠組みについて」
パネリスト:赤井 久宣さん(消費者庁 地方協力課課長)
地方消費者行政プロジェクトメンバー
尾嶋 由紀子さん(全国消費生活相談員協会)
釘宮 悦子さん(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)
コーディネーター:池本 誠司さん(弁護士)
【参加】107人
概要(事務局による要約)
1.全国消団連2025年度「都道府県の消費者行政調査」報告
大森 隆さん

本調査は2025年8〜9月に都道府県を対象に、「1.地方消費者行政推進交付金の活用について」「2.消費生活相談員(以下、相談員と記します)について」「3.新たな相談支援システムへの移行について」「4.消費生活相談の広域連携について」「5.消費者安全確保地域協議会について」「6.地方消費者行政強化交付金の活用について」「7.要望について」の七つの質問を設けて回答をお願いしたもので、回答の分析結果を報告書にまとめました。さらにその分析結果を基に意見書を作成し、2026年2月24日に内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、財務大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長宛に提出しました。意見書骨子は以下の通りです。
地方消費者行政の充実・強化のための意見(骨子)
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自治体は、新たな枠組みによる地方消費者行政強化交付金を地方消費者行政の推進のために積極的に活用してください
国は、自治体が交付金メニューに対して、意欲を持って取り組めるよう、申請条件を緩和して活用しやすいルールにすること、申請手続き自体を自治体担当者にわかりやすく伝えることで、取り組みを促してください
- 新たな相談支援システムへの移行にあたり、自治体の実情を十分に把握し、理解を深めた上で、2026年10月のスムーズな移行を実現してください
- 消費生活相談員の担い手確保と人材育成を推進し、働きやすい環境整備を求めます
- 消費者安全確保地域協議会の設置を推進し、被害の未然防止や早期解決に向けてその役割を十分に発揮できるように取り組みを進めてください
2.パネル ディスカッション
◇自治体の取り組み報告
―――――――岐阜県 環境エネルギー生活部 県民生活課 消費生活安全係 主事 鈴木 千智さん

岐阜県では、消費生活相談件数が増加傾向で、2025年(令和7年)度上半期は971件で前年同期比15.6%増でした。相談員の担い手確保の取り組みとして、消費生活相談員人材バンクを設置し、希望する市町村へ情報提供をしています。また、今年度は消費者庁「消費生活相談員担い手確保事業」に参加し、人材発掘の機会の拡大を目指しました。講座への参加はあったものの担い手確保や就労に結びつけることに繋がらず、相談員として働く意欲があっても条件が合わず採用に至らないケースもあり、難しさを痛感しました。
見守り体制強化のため、2025年(令和7年)8月に岐阜県消費者安全確保地域協議会を設置し、市町村協議会の設置支援や関係団体との連携を進めています。見守りハンドブック作成や情報発信、講座開催などの取り組みを行っています。今後の課題としては、協議会の効果検証が重要であることと、小規模市町村の窓口強化です。高齢者・障がい者が相談しやすい環境づくりを支援していくことが大切であると考えています。
――――――――――――――――――京都府 文化生活部消費生活安全センター センター長 桑谷 正之さん

京都府では、相談体制について質の高い相談や救済が受けられるよう、有識者会議で府・市町村の役割や支援策等を検討しました。市町村の相談窓口では、相談時間や開設日の短縮、資格を有しない相談員の配置など課題があるため、市町村ヒアリングも実施し、有識者から今後の府および市町村政策の提言をいただきました。この提言も踏まえ、「京都府安心・安全な消費生活の実現を目指す行動計画」を2025年(令和7年)3月に改正しました。府レベルでは、消費者団体・福祉関係団体など約60団体で構成する「京都くらしの安心・安全ネットワーク(消費者安全確保地域協議会)」を設置しています。また、市町村のさらなる設置促進のための部会では福祉関係者と連携した実践的な検討や活用できる簡潔な対応フローの作成を進めました。一方で、市町村職員の経験不足や福祉関係団体への働きかけの難しさという課題も明らかになりました。
今後は、行政職員のスキルアップ、参画団体の拡大、財政支援の充実を求めつつ、見守りネットワークの実効性向上を図っていくとしています。
◇消費者庁「地方消費者行政強化交付金の見直しについて」――――――――――――――― 赤井 久宣さん

今回の交付金は、みなさんからの声が凝縮された2025年6月5日の衆議院消費者問題に関する特別委員会の決議を具体化したものです。
新たな枠組みの「地方消費者行政機能維持事業」は、これまで推進事業を活用していた自治体の取り組みが後退しないように支援するものです。
「@相談機能維持・未然防止強化型」は、推進事業を2029年(令和11年)度まで事実上延長するものです。「A広域連携推進型」は、相談機能を維持するために単独では難しい自治体が周辺市町村と連携し、広域的に消費生活センターを運営していく取り組みを支援するものです。「B地方消費者行政推進型」は、小規模市町村の推進事業を予定どおり2027年(令和9年)度まで行うものです。
「地方消費者行政機能強化事業」は、環境変化に対応するための新たな体制整備を図る目的のものです。
「C相談・見守り連携強化型」は、市町村向け事業で相談と見守り活動との連携を強化するため消費生活センターの機能強化を図る自治体への支援です。「待ち」の相談対応から地域に積極的に出向き、被害の未然防止や救済機能の強化を図るという、理想とする今後の市町村の消費者行政の姿の実現のための支援になります。地域に出向き、情報をきめ細かく伝え、被害を発見した際に消費生活センターにつなげること、また相談内容はしっかり分析をして、必要であれば福祉などの関連機関につなげ、住民の生活を守ることです。相談員が見守りネットワークの構成員に対して情報提供を行う「見守り活動支援」及び相談情報をより早く国に届けることを新たな役割と位置付けることで、相談員人件費を含めて補助率1/2で支援します。これは将来的に市町村向けの大きな柱になると考えます。
「D広域連携強化型」は、広域連携の中心自治体の機能強化への支援です。中心自治体は何かと負担も多く、周辺自治体への情報提供や連携など、広域連携が機能するためには丁寧な対応が必要になります。そのために相談員の増員を補助率2/3で支援します。
「EF担い手確保、人材育成・強化型」は、都道府県(一部政令市)の消費生活センターの機能強化のための事業です。担い手確保が厳しい中で、人材確保や育成は、基本的に都道府県が主導的に行っていただきたいという意図です。担い手の掘り起こしは、相談業務のPRや実践的講座の開催等により広く候補者を発掘する取り組みを補助率1/2で支援するものです。育成事業は、OJT(実務訓練)の実施を定額で支援します。都道府県では、管内市町村の相談員の配置状況を把握しており、市町村と連携して、計画的に養成をしていただく事業になります。人材強化は、都道府県がより難しい相談への対応や市町村への支援に重点化していくための人材配置を支援するものです。
「G重点課題対応型」は、これまでの強化事業を引き継いだものです。ポイントは機能強化要件として、毎年、事業の内容を強化する必要がありましたが、使いにくいとの意見もありました。これを見直し、3年に1度はしっかりと精査をしていただく運用に見直しを行いました。

◇意見交換
――相談員の担い手確保について
地方消費者行政プロジェクトメンバーからの問題提起
尾嶋 由紀子さん)県の資格養成講座の実施は少ないものの、実施の約75%で新規採用につながっており高い効果が確認できました。国の講座の継続と地域での就職につながる独自講座の充実が重要であると考えます。
会場からの発言
熊本県消費生活課 課長 浦田 武史さん)熊本県の担い手育成支援講座と資格取得講座の紹介がありました。
全国消費生活相談員協会 川野 玲子さん)小規模センターの実情についての訴えがありました。
コーディネーター 池本 誠司さん)消費者庁の講座の期待とともに、地域でも行うことの報告がありました。担い手掘り起こしの「実践的講座の開催」について、少し補足していただけますか。
消費者庁地方協力課 赤井 久宣さん)相談体制の維持は見守り推進とともに大変重要な課題です。消費者庁Webの養成講座は、第1部で仕事や知識の概要、第2部で全国10か所のグループワークを行います。なかなか就業に結びつかないという指摘もあり、今年度から少しやり方を変え、都道府県との連携を強化し、手探りで行っているところです。県独自の講座が就業に結びついていることは大変興味深いです。熊本県の取り組みのように、消費者庁の講座の上に県の独自の取り組みをする姿が理想的なのではないかと思っています。ベースを国が行い、実践的に実情にあった取り組みを県にやっていただくのが効果的ではないかと思い、担い手確保事業を交付金で措置しています。
――相談・見守り連携強化
地方消費者行政プロジェクトメンバーからの問題提起
釘宮 悦子さん)都道府県での協議会設置は増加傾向にありますが、会議の開催頻度は1年に1回程度で高いとは言えないようです。運用の課題として、協議会を設置しても消費者トラブルの未然防止につながっていないとの意見もあります。協議会の活性化を工夫しているところもありますが、県の市町村の支援のあり方、設置後の活動の活性化、見守りを実効性につなげていけるのかが課題であると感じます。
赤井さん)相談・見守り連携強化型は、見守り活動を活性化して、被害の未然防止機能を強化し、被害の探知機能を強化し、消費生活センターにつなげる事業です。相談員が見守り活動支援として、実際に見守りをする方(構成員)に対して消費者被害の実情や気を付けるべき点を伝授する役割を担います。2026年(令和8年)、2027年(令和9年)度は先行実施としてモデル的に行い、2028年(令和10年)度に本格実施の予定です。そのために、事例の収集を行い、課題を分析し、ガイドラインで示していきます。
※パネルディスカッションでは、相談員の人材強化、見守り活動支援員の啓発・情報提供の対象者などについてのやり取りも行いました。
――まとめ

コーディネーター 池本さん)新しい交付金は、従来の交付金の単なる継続にとどまるものではなく、消費者行政や相談員の役割、さらには消費生活センターの役割など、新たな段階へと進展させるものであると確認しました。一方で、自治体が抱える課題は、消費者庁による制度設計のみで解決できるものではないことも、重々承知しています。だからこそ、現在各地で発生しているさまざまな被害から住民を守るために、自治体が責任をもって十分な予算を投入する必要があります。そのため、各地の消費者団体や弁護士会など、さまざまな関係団体が連携し、首長や議員にも参画を求めながら、自治体の政策判断を動かしていく取り組みを進めていただきたいと考えています。
私たちプロジェクトチームとしても、各地の消費者団体に積極的に声を掛け、こうした動きを後押ししていきたいと思います。
以上
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