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取引デジタルプラットフォーム消費者保護法を学ぶ 開催報告

 「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(通称:取引DPF消費者保護法)」が、昨年の通常国会で成立し、本年5月1日より施行されました。

 取引デジタルプラットフォーム(以下、DPF)事業者は、取引の当事者ではなく取引の「場」の提供者ではありますが、この法律では、「通信販売取引の適正化および紛争解決の促進に協力すべき責務を負うもの」として位置づけられています。また、取引DPF事業者と消費者との間の取引の中で、危険商品等の流通や、販売業者が特定できず紛争解決が困難となるなどの問題に対して、消費者利益の保護を図るための規律が整備されています。

 さらに、内閣府令や取引DPFの努力義務の内容の望ましい例を示した指針、販売における事業者と消費者との違いを示した「販売業者等」に係るガイドラインなどが整備されてきました。学習会では、法律の内容と消費者が知っておくべきことについて、消費者庁より説明いただきました。

【日時】5月24日(火)15時30分〜17時00分 〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講師】片岡 克俊さん (消費者庁 消費者政策課 企画官)

【参加】76人

概要(事務局による要約)

■取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律

◇デジタルプラットフォームで起きている消費者問題

 大手DPFで購入した中国製モバイルバッテリーから発火し自宅が全焼した事例では、被害者は当初はDPF上のメッセージフォームを使って売主とやり取りをしていましたが、そのうち連絡が途絶えがちになりました。そこで、DPFに連絡先の開示を求めましたがDPFに拒否され、商品代金と少額の和解金は支払われましたが、損害の大部分は賠償されないままとなり、訴訟になりました。

 大手DPFで偽ブランド品が販売されていた事例では、特定商取引法上の表示が虚偽で、身元を追跡することができませんでした。

 フリーマーケットサイト上で健康食品の偽物が販売されていた事例では、正規品と偽物はパッケージにおいては限りなく似せて作られており見分けがつかず、内容物も詳細に見比べないとわからないものでした。この事例の販売者は個人となっていましたが、事業として組織的に偽物を作り、それを複数の個人名をかたって売っていたのではないかと思われます。

◇取引DPF消費者保護法

(1)定義規定(第2条)

 取引DPFにおいて危険商品等の流通や販売業者が特定できず紛争解決が困難となる等の問題が発生し、これに対応して消費者利益の保護を図るための法律です。対象は、BtoC取引で「オンラインモール(Amazon、楽天など)」「オークション(ヤフオク、モバオクなど)」「役務提供(UberEats、出前館など)」「アプリ(Googleplay、AppStoreなど)」になります。検索サイトやSNS、またCtoC取引は対象になりません。

【政令】ネットオークションの仕組みの中で「競り(金額が競り合って落札)」に加えて「即決方式(設定された金額ですぐ落札)」も対象になります。

【ガイドライン】取引DPF上の個人間取引の中で(BなのかCなのか区別が難しい)「隠れB」と称する者が存在します。事業者であれば消費者保護の責任を負わせるのが消費者法の基本的な考え方です。そこで、「販売業者等」について基本的な考え方として、営利の意思を持って、反復継続して取引を行う者としています。また、取引の金額等で事業者とするかどうかなど、画一的な基準を定めることは困難なため、個別具体的な事情を総合考慮して判断をするための考慮要素・具体例を示しています。たとえば、「販売事業者等」への該当性を推認させる事情となり得るものとして、「情報商材のように商品・役務の性質上、通常は営利の意思・反復継続性が認められる場合」「新品や新古品等の商品を相当数販売している場合」「メーカー、型番数が全く同一の商品を複数出品している場合」「一定期間に相当数の口コミがある場合」など具体例が示されています。

(2)取引DPF提供者の努力義務(第3条)

  1. ①販売業者と消費者とが円滑に連絡できるようにすること
  2. ②販売条件等の表示の苦情の申出に必要な調査等を実施すること
  3. ③販売業者の身元について必要に応じて確認を取ること

【指針】3つの努力義務の望ましい取組の例(ベストプラクティス)として具体的な内容を示しています。

  1. ①専用のメッセージ機能を提供して連絡しやすくする、連絡手段が機能しない場合に対応すること、など
  2. ②消費者からの苦情の受付をしやすいようにする、関係者(メーカーや業者など)への照会をする、など
  3. ③販売前に住民票や登記など公的書類を出してもらう、など DPFは、最初の身元確認は丁寧に行っていますが、途中販売事業者が住所変更する場合もありますので変更時にも確認することが期待されます。

(3)商品等の出品の停止(第4条)

 消費者庁から取引DPF提供者に、危険商品等が出品され、販売業者が特定できない場合などに出品削除を要請します。

【内閣府令】危険な商品以外にも偽ブランド品や資格を偽って販売をしている場合も含まれます。

(4)販売業者に係る情報の開示請求権(第5条)

 消費者がDPFで購入した商品で1万円を超える被害(拡大損害や精神的損害も含む)を受けた時に、販売業者等の情報開示を請求できます。ただし、不当な目的で請求を行う場合はこの限りではありません。

【内閣府令】開示請求の対象となる情報内容(氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど)を定めています。

 消費者が「販売業者等の情報の開示請求」を取引DPF提供者に行うと、取引DPF提供者が販売業者等への意見聴取手続を行います。その後、取引DPF提供者が消費者に開示するかどうかを判断します。開示された情報を基に消費者は交渉したり訴訟をしたりすることができます。また、もし開示しない場合には、消費者は裁判所を通じて第5条の請求権を行使することになります。

(5)官民協議会(第6条〜第9条)・申出制度(第10条)

 国の行政機関、取引DPF提供者の団体、消費者団体等により構成される官民協議会を組織します。近々、官民協議会が立ち上がる予定です。悪質な販売業者等への対応など、取り組むべき事項について協議をしていきます。

■質疑応答(抜粋)

Q:第3条は、消費者保護の観点からは、努力義務ではなく、もう少し強制力がある方が良いように思います。努力義務となった理由を知りたいです。

A:消費者庁の検討会では様々な議論がありましたが、今回の法律の対象は、DPFの規模を限定せず広く対象にしています。まずは努力義務でスタートして、施行後不十分であれば義務や行政処分など厳しい規制とすべきとの議論も出てくるのではないかと思います。新しいサービスも生まれる流動的業界なので共同規制としてソフトな規制からスタートし、足りなければ厳しい規制とするという議論もあります。

Q:官民協議会について、年2回開催を予定ということですが、何かしら大きな問題が生じたときは、必要に応じて開催し、事業者団体の対応を促すことをするなど、考えられるのでしょうか。

A:大きな会合は年2回程度として、大枠の進め方を提示しています。ここでは施行状況について議論するほか、勉強会なども行っていきます。この他、実務的な観点で、実際の個別事案の情報共有や良い取り組みがあれば評価し、足りない部分があれば高め合っていければと思います。実務的な観点で個別事案の情報共有や細かい議論を行う必要が生じた場合は、少人数で頻度高く実施するなど、柔軟な開催も想定しています。

以上

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