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預託法・特定商取引法の改正に向けたシンポジウム 開催報告

 消費者庁「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会(以下、検討委員会)」の報告書では、販売預託商法は本質的に反社会的な性質を有し、行為自体が無価値と捉え、「販売を伴う預託等取引契約の原則禁止等」と明記されました。また、「詐欺的な定期購入商法の規制強化」「送り付け商法(ネガティブオプション)への制度的措置」など、法改正や執行強化などの措置をするよう記載されています。

 全国消団連では、地域の消費者団体が地元の弁護士や適格消費者団体などと連携し、2月の地方議会での意見採択に向けて「地方議会から国への意見書提出を求める取り組み」の呼びかけを行っています。その一環として、預託法、特定商取引法の法改正のポイントや取り組みに向けた情報の共有を行いました。

【日 時】12月8日(火)18時〜19時20分〔Zoomを活用したオンライン シンポジウム〕

【内 容】検討委員会報告書の概要(消費者庁取引対策課課長 笹路健さん)
預託法改正のポイント(弁護士 加藤了嗣さん)
特定商取引法改正のポイント(弁護士 小林由紀さん)
全国消団連の取り組み(地方議会へのはたらきかけの紹介)

【参 加】約150人

概要(事務局による要約)

■特定商取引法及び預託法における規制・制度改革に向けた検討について

笹路 健さん

(全国消団連では、10月6日に笹路課長を講師に「悪質な商法をなくすために!〜特定商取引法および預託法の改正に向けた取り組みについて〜」を開催しました。そちらの報告も参考にしてください。)

 「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」は、消費者庁で重要な政策課題のために特別に設けられ、報告書はコンセンサスを得られた反対のない形でまとめられた極めて画期的な内容と言えます。報告書を踏まえた3つの基本方針(①共通の敵にターゲットを絞った改革、②イノベーションの進展と課題の対応、③「新しい生活様式」での課題)に基づいて報告いたします。

◇今後の取り組む方向性

 消費者の脆弱性の考え方としては、判断力が低下した高齢者や経験未熟な若者に限らず、全ての消費者が脆弱性を持っているとすることが、国際的なスタンダードな考え方になっています。また、デジタル上での取引が日常になり、嗜好や検索、購買履歴など様々な個人データが蓄積されたうえで、個人へのアプローチが可能になる中、浅慮な判断を誘導されるなども起こり得ます。従来とは異なる前提条件があることも重要な視点になります。

 預託法の改正では、「特定商品制の撤廃」で規制の後追いにならないようにすることや、「販売預託の原則禁止等」との方向性でコンセンサスが得られました。この他、勧誘規制強化や、広告規制新設、民事ルールの拡充などを検討することになっています。

 通信販売は、国民の生活に重要になり、生活の生命線にもなっています。知らないうちに定期購入にさせられていたり、解約ができなかったり、詐欺的な行為として、「詐欺的な定期購入商法への対応」が必要であるとしています。

 あわせて販売業者を追跡できるような特定商取引法の規定を設けることも必要であるとしています。海外の事業者も日本の消費者との取引が可能になっている現状で、国内外の差別なく、法執行、悪質事業者を取り締まる法律規定の環境整備や制度措置も必要とされました。

 送り付け商法は、現在消費者側に14日間の保管義務がありますが、正当性が認められるものではありません。消費者に保管義務が生じるようなことがないよう、諸外国の法制も参考に制度的な措置を講じる必要があるとされました。

■預託法改正のポイント

弁護士 加藤了嗣さん

◇販売預託商法とは

 「販売取引(預かることを前提に商品を販売する)」と「預託取引(商品を預かって配当を出す)」が組み合わされた取引です。シェアリングエコノミーは、消費者が元々持っていた遊休資産を預かる取引なので、販売預託商法には含まれません。

◇何が問題か

 販売預託商法では、実際にモノ(商品)が存在しない(少量しか存在しない)ため、顧客は、商品を購入したというのは形式だけで、実際は金銭を拠出しているということになります。

 また、配当を生み出すような事業の実態がなく、あらたな顧客が拠出した金銭で既存の顧客に配分しているので、自転車操業となり、いずれ破綻することになります。

 現行の「預託法」は、預託取引を規制しているもの(商品を預託業者に預託し、貸し出しなどでレンタル料を回収し、顧客に配当する)で、シェアリングエコノミーも規制対象に含まれます。他方で、指定商品以外の商品や3か月未満の預託取引は対象外になり、抜け道になります。また、販売を伴う預託取引については特段の加重規制がありません。「金融商品取引法」は、金銭を出資し配当を受ける取引で、登録制によって管理されています。原則として金銭拠出(他に競争の馬のみ)に限られていますので、形式的には商品の拠出となる販売預託商法の規制は難しいことになります。「出資法」は、不特定多数から金銭を預かることを禁止していますが、商品の預託を実質的に金銭の預かりと評価するのは困難が伴います。このような法のすき間でこれまで約1兆円の被害が出ました。

◇預託法の改正の必要性

 検討会報告書は、販売を伴う預託等取引契約は、本質的に反社会的な性質を有し、行為それ自体が無価値と捉えるのが相当であるとして、原則禁止を提言しました。適正な評価で、画期的内容です。他方で、原則禁止とされる「対象の明確化等を実務的に検討」が必要であることとされているように、想定される様々な脱法類型を捕捉できるような定義を定めることが重要です。

 また、実効性のある規制とするためには、販売預託取引について、脱法行為が生じることがないよう、預託法、金融商品取引法、出資法とのすき間を作らないようにすることです。

 法改正の作業においては、内閣法制局が一番の肝になるかと思います。みなさんのはたらきかけによって地方議会から意見書が出されることは、国会審議を行うにあたっても、みなさんの取り組みが大きな支えになります。力を合わせて頑張っていきましょう。

■特定商取引法改正のポイント

弁護士 小林由紀さん

◆詐欺的な定期購入に対する規制強化
◇何が問題か

 消費生活相談では定期購入に関する被害が急増しています。詐欺的な定期購入の問題は、広告画面や申込画面上の「お試し」「初回〇円」「モニター」などの文言によって、定期購入契約であることが気づきにくい、値引き価格が大きく強調され、不利な条件は離れた場所に小さく記載されている、いつでも解約できると記載されているが実際は電話がつながらない、などの事例が報告されています。

◇特定商取引法の規制強化・法改正の必要性

①申込み時の問題:「お試し」「初回〇円」「モニター」など有利な条件が大きく強調され、定期購入契約であることには気付かせないよう、離れた場所に目立たないよう小さく記載されている等の不当な表示は禁止すること。また、誤認をもたらす不当な表示は錯誤取り消しの対象となることを法に明記することが重要です。

②解約時の問題:いつでも解約できると強調されていても、実際には解約申し出期間や方法、条件に厳しい制限がされていて解約が困難であったり、あるいは解約方法が電話連絡に限定されているのにつながらず、解約できないまま2回目以降も届いてしまう場合がありますが、不当な解約妨害は禁止することが重要です。また、解約妨害をした場合は、2回目以降の契約について違約金のない中途解約権を保障すべきです。

◆送り付け商法(ネガティブ・オプション)に対する規制強化
◇何が問題か

 コロナ禍でマスクや消毒液等、不審物の送り付け問題がありました。高齢者をターゲットに健康食品を送り付けられる事案の消費者相談も増えています。現在の特定商取引法では、申し込みをしていないのに商品が送り付けられた場合、14日(販売業者に引き取り請求で7日)は、商品を保管しなければいけないかのようになっています。

◇特定商取引法の規制強化・法改正の必要性

@販売業者の規制:申込み(契約)をしていない人に商品を送付し、代金の請求や連絡をしたり、商品の返送や連絡を要求する行為は禁止することが重要です。

A消費者として:販売業者が申込み(契約)をしていない人に商品を送付したら、期間を置かず直ちに返還請求権を喪失するようにして、受領した名宛人はその商品を自由に処分できるようにすること、また、誤認して対価を支払ったり、不当な請求を受けることのないよう、受領した名宛人に代金支払い義務がないことを法に明記することが重要です。

 事業者対消費者の闘いではなく、健全な経済社会を守るための悪質業者との闘いに異論を唱える方はいないと思います。力を合わせて頑張っていきましょう。

全国消団連の取り組みについて

 全国消団連では、「地方議会から国への意見書提出を求める取り組み」を進めています。各地域の消費者団体から取り組みの進捗状況もいただいています。全国の消費者から声を出して、2021年通常国会での預託法、特定商取引法の改正を実現させましょう。

以上

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