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12月セミナー「個人情報保護に関する消費者問題最前線」開催報告

 個人情報の漏洩や不正使用に関するさまざまな事件が起こっています。最近では、株式会社リクルートキャリアが提供する就職情報サイト「リクナビ」が、学生の内定辞退率の算定データを企業に販売していた事件は、本人が知らないうちに個人情報が使用されていたということで大きな問題になりました。そのような事件が起こると、消費者は自分の個人情報は守られているのか、不安が広がることになります。リクナビの問題は、これまでデジタル・プラットフォーマーが行ってきたインターネット広告の仕組みの延長線上にあるものです。ブラウザや端末の追跡に利用されてきた機能が悪用されたことが、リクナビの問題につながりました。

 このところ、情報銀行やスコアリング、ゼロレーティングなど、消費者の個人情報に関係する可能性のある新しいサービスが次々と展開されています。これらのサービスに関して消費者が注意すべき点について学習会を行いました。

【日 時】 12月13日(金)15時30分〜17時30分

【会 場】 主婦会館プラザエフ 5階会議室

【講 師】 森 亮二さん(弁護士)

【参 加】 38人

概要(事務局による要約)

■クッキー情報(DMP)の行き過ぎた利用

 10年以上も前から、広告事業者のクッキーによる名寄せという仕組みを使って、行動ターゲティング広告が行われてきました。問題視されたこともありましたが、個人情報ではないということで、事実上許容されてきました。しかし、以下事例のような問題も生じており、対応が求められています。

◇事例)Facebook行政指導

 ブラウザのwebサイト(いいね!ボタン設置)のアクセス履歴とSNSサーバにあるユーザー登録情報とがつながることで、ユーザーが気付かないうちに、個人情報として集められていることになります。十分な説明がないまま、いいね!ボタンにより個人情報を取得することは、個人情報保護法違反、利用者のプライバシー侵害のおそれがあります。

◇事例)JR東日本の乗客履歴情報の販売計画

 2013年6月、乗客の乗降履歴を匿名化(住所、氏名等を削除)して販売すると公表。個人情報ではないので、本人同意は不要であることを前提に行われましたが、個人情報として扱うべきではないか、と疑問が出て大炎上しました。

◇事例)リクナビ事件

 リクナビ2019:リクルートキャリアが契約企業から就活生の企業IDやクッキーを受け取り、就活生が内定を辞退する確率を判定したデータを契約企業に販売していました。内定辞退率は「契約企業から提供された過去の内定辞退の状況」「就活生の登録情報」「就活生の就活サイト等内外のwebサイトの閲覧状況」を基にAIにより分析しスコア化したものです。リクルートキャリアでは個人情報ではない(×)、契約企業では個人情報となる(〇)。このような「×〇パターン」の場合、法執行の対象外でした。

 リクナビ2020:リクルートキャリアが契約企業から就活生の氏名を受け取り、これにスコアを付けて返す運用に変更。リクルートキャリアでは個人情報(〇)、契約企業では個人情報(〇)。個人情報の第三者提供について、説明を利用規約に入れましたが、わかりにくく、一部の就活学生には同意が取れていなかったことで個人情報保護委員会から指導勧告を受けました。

◇DMP(データマネジメントプラットフォーム)についての問題意識

 DMPは、個人情報ではない形で収集された行動履歴とその分析で「その人はどんな人か」の疑問に答えることができ、従来では「その人はどんなものを買いそうか」との行動ターゲティング広告に使われていました。リクナビ事件により、広告以外にも使われるものであることが広く認識されました。Web閲覧履歴を収集して、特定の個人に結び付けることは可能で、今後は、従業員監視などにも使われる可能性があります。

◇個人情報保護法の3年ごとの見直し

 「提供元で個人データに該当していないものも、提供先で個人データになることが明らかな情報については、第三者提供を制限する」「事業者は不適当な方法により個人情報を利用してはならない」との改正大綱が示されています。

■ほか、注目すべき新たなサービスとして「スコアリング」「情報銀行」「ゼロレーティング」の概要と懸念について説明がありました。

以上

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