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「民事裁判IT化について 消費者が知っておくべきこと」学習会
開催報告

 2017年、政府の「未来投資戦略 2017」において「裁判手続のIT化」が打ち出され、首相官邸の「裁判手続等のIT化検討会」にて検討され、とりまとめが行われました。その後「未来投資戦略2018」では、民事訴訟に関する裁判手続等の全面IT化の実現を目指すこととされました。

 現在の民事裁判手続は、書面の提出や当事者の対面での協議が原則ですが、手続きのIT化では、書類を電子データでやり取りし、口頭弁論をウェブ会議で行うなども検討されているようです。さらに、2019年の「成長戦略フォローアップ」では、ODR(オンラインでの裁判外紛争解決制度)の検討をすることとされているほか、本年には法制審議会で法改正の議論が始まります。

 「未来投資戦略2018」や「成長戦略フォローアップ」では、裁判IT化もODRも「世界で一番企業が活動しやすい国」の実現のための施策とされています。IT化のメリットも考えられる一方、裁判は、消費者や労働者など弱い立場の者の最後の権利主張の砦であるべきで、特に、消費者問題に関していえば、本人訴訟、デジタルディバイド、費用負担等の点で課題があります。

 学習会では、消費者として留意すべき論点について解説をいただき、意見交換を行いました。

【日 時】 11月22日(金)18時00分〜20時00分

【会 場】 主婦会館プラザエフ 5階 会議室

【講 師】 増田悦子さん(全国消費生活相談員協会 理事長)
鈴木敦士さん(弁護士)

【参 加】 11人

概要(事務局による要約)

■消費生活相談から裁判を考える

増田悦子さん

 消費生活相談の昨年度の相談件数は101万件。消費生活相談から法的手続きを案内するケースは、「斡旋不調になった場合」「消費生活センターでは解決レベルが低い場合」「法的解釈に争いがあり、譲り合えない場合」などがあります。とはいえ消費者にとって、裁判は「消費者被害が少額」「費用や時間はどのくらいかかるのか」「書類の準備や手続きなどの労力」「精神的負担」「適切な弁護士がわからない」ことなどから遠い存在と考えられます。

 裁判手続IT化による消費者の利便性は、「手書きの書面作成が苦手な若者層にはひな形の利用ができる」「高齢者・障がい者や、体調不良で遠距離移動の困難な人にとって便利になる」「平日昼間に手続ができない人が夜中にできる」などがあるかと思います。一方、課題としては「書面作成などは簡単ではなく法的サポートが必要」「IT機器が苦手な人や持ってない人への配慮としてITサポートが必要」「裁判制度の理解不足」などがあり、不安は「セキュリティの確保」「事業者から裁判を起こされやすくなるのではないか」「ホームページなどでわかりやすい表示や説明があるのか」「費用負担はどのくらいになるのか」「裁判に不慣れな消費者がウェブ会議で十分意見を伝えられるか」などがあります。

 裁判手続IT化と同時に「裁判制度についての消費者の理解のための法教育」「消費者にとって利用しやすい裁判制度にするため、サポート体制や費用負担」「ウェブ会議に参加できる環境整備」などを行ってほしいと考えます。

■裁判手続IT化の検討状況と消費者が知っておくべき論点

鈴木敦士さん

●現在の民事裁判の流れの概要

 訴えを起こす人(原告)が、裁判所に訴状を持参または郵送⇒裁判所より連絡(訴状の不備の補正や第1回口頭弁論期日の決定)⇒裁判所が特別送達で被告に訴状を送る⇒第1回口頭弁論〜(原告・被告が主張書面、証拠書面などを提出し出頭)⇒主張整理(和解の場合もあり)⇒証人尋問など⇒判決(裁判官が言渡し、当事者は出向かず電話で結論を聞くことも可能)⇒特別送達で判決書が送られる(⇒不服があれば控訴)

●民事訴訟手続のIT化の検討状況(法務省資料より)

「e-提出」(主張・証拠の書面をオンラインで提出。手数料は電子納付する)
「e-事件管理」(記録を電子化。裁判期日などをオンラインで調整、進捗などが確認できる)
「e-法廷」(ウェブ会議・テレビ会議の導入で出頭不要になる)

 実現までの工程としては、以下を目標にしています。

2019年度 【フェーズ1】「e-法廷」ウェブ会議等を用いた争点整理の一部実施

2020年度 【フェーズ1(拡大)】順次全国へ

2022年度 【フェーズ2(一部実施)】「e-法廷」ウェブ会議を用いた争点整理口頭弁論のウェブ化

2023年以降【フェーズ2(完全実施)】「e-法廷」口頭弁論のウェブ化
【フェーズ3(完全実施)】「e-提出」オンライン申立て、「e-事件管理」記録の電子化

●消費者が知っておくべき論点

 政府の「未来投資戦略2018」では、世界で一番企業が活動しやすい国の実現として裁判手続等の IT 化の推進が提案され、現在検討されている「民事裁判手続等IT化研究会」では報告書が12月に公表される予定です。その中で消費者が知っておくべき論点として以下6点の考え方を紹介がありました。

「オンライン申立て義務化について」
「濫用的な訴えを予防するための方策」
「公示送達の方法の見直し」
「特別な訴訟手続」
「簡易裁判所の訴訟手続における和解に代わる決定の制度」
「閲覧等の制限決定があった場合の秘密保持制度」

以上

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