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キャッシュレス決済を上手に利用するために
〜仕組みと課題〜 報告

 クレジットカードやデビットカード、電子マネーなど、キャッシュレス決済は私たちの生活で身近になっています。我が国のキャッシュレス決済比率は、2017年には21.3%と推移しており、国の方針ではキャッシュレス・ビジョンの掲げた2025年 40%までに高める目標が設定されています。一方、キャッシュレス決済は利便性がある中、先般の「セブン・ペイ」の問題でも見られるように、トラブルや相談事例も多く発生しています。

 金融庁の金融審議会「金融制度スタディ・グループ」では、金融を取り巻く環境変化を踏まえた金融制度のあり方について検討をし、2019年7月26日「決済法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告 基本的な考え方」が公表されました。

 学習会では、消費者トラブル事例の紹介とキャッシュレス決済の仕組みと決済法制の見直しについて解説いただき、意見交換を行いました。

【日時】9月18日(水)18時00分〜20時00分

【会場】主婦会館プラザエフ 5階 会議室(東京・四ツ谷)

【講師】坂勇一郎さん(弁護士、金融審議会「金融制度スタディ・グループ」委員)
石田幸枝さん(全国消費生活相談員協会 団体訴訟室長、船橋市消費生活センター勤務)

【参加】32人

概要(事務局による要約)

■キャッシュレス決済に伴う消費者トラブルの事例紹介  石田幸枝さん

 全国消費生活相談員協会では、消費者の支払い時の決済方法で起こる契約トラブルについて、実態を把握するために相談110番を実施しました。受付件数285件で、販売形態で見ると、通信販売(94件)に関する相談が、店舗購入(87件)より上回りました。総務省の平成30年度版情報通信白書によると、インターネット購入の際の決済方法では、クレジットカード払い(72.7%)、コンビニエンスストアでの支払い(34.0%)になっています。

 平成28年の割賦販売法の一部改正で、決算代行会社にも経済産業省への登録義務と加盟店の調査義務が課せられました。販売事業者による不正な取引は、カード発行会社を通じて、クレジットカード会社や決算代行会社の協力で解決することも多くなりました。また、クレジットカードの不正利用防止には、事前にパスワード等を設定する本人認証システム(3Dセキュア)がありますが、販売会社のコスト負担やパスワード等の入力による利用者の減少の心配等で、活用が進んでいないようです。

 高額なサービスや商品利用で月々の負担を減らすことができる「リボルビング払い」では、手数料が高額であることや、契約を重ねることで残高が増え、返済不能に陥る危険があります。成年年齢引き下げを考えると、社会に出る前の高校生に対して、仕組みの消費者教育が必須であると考えます。

 「電子マネー」は、資金決済法の規制を受け、前払式支払い手段に分類されます。媒体別では①磁気カード型、②ICカード型、③サーバ型に分類されます。与信審査はなく、誰でも利用でき、匿名性も高い、返金できないとの特徴があります。最近では、スマートフォンにアプリをダウンロードしてウォレットにチャージすれば、買い物に簡単に利用できる「電子マネー」も登場しています。様々な仕組みでサービスを提供していることもあり、理解がしにくく、注意が必要です。

 現在、経済産業省の『割賦販売小委員会』の「支払可能見込額調査及び指定信用情報機関の信用情報の使用の義務等の規制緩和について」の議論では、利用限度額10万円以下の少額与信カードの場合に、指定信用情報機関の信用情報の使用義務を免除することが検討されています。信用情報の免除は延滞状態になっても債務が把握できず、さらなる債務が増え、多重債務者になりかねません。1件ごとが少額でも、まとまると少額ではない状態になることもあり、規制緩和には注視が必要です。

 多様なキャッシュレスの支払い方法に消費者は仕組みを十分理解をして利用する必要があります。少額であるからと安易に後払いにすることで、支払えない状況になる場合もありますので、よく考えて利用する必要があります。

■キャッシュレス決済と決済法制の見直し  坂勇一郎さん

◆さまざまなキャッシュレス決済

 決済とは、「送金(資金を移動すること)」「支払い(債権債務関係を解消すること)」。社会生活や経済活動の重要なインフラのひとつです。決済手段は「前払い」「即時払い(銀行送金やデビット、資金移動、収納代行など)」「後払い(クレジット)」があります。

 この10年を振り返ると、以前は銀行中心の決済とクレジットでしたが、資金決済法が施行され、いろいろなサービスが出てきました。大きく影響したのはスマートフォンの普及で、決済サービスは多様化、複雑化していて、事業者も多様化しています。利用者にとっては、利便性が広がってきていますが、リスクも拡大しています。

 前払式支払い手段としては、紙型(百貨店共通商品券)、磁気型(図書カード)、IC型(Suicaなど)、サーバ型(Amazonギフト券など)があります。

 資金移動は、単純な送金(仕送り、代金支払い)、資金移動業者のアカウントにチャージをして移動するものがあり、アカウントに資金が滞留する問題(億単位で滞留があること)も出てきています。

 収納代行は、コンビニ収納代行(コンビニ窓口での各種支払い)、運送会社の代金引換(宅配業者と代金引換)がありますが、利用者は代金を払った段階で支払いは完了します。その後、コンビニエンスストアや運送会社が破産したとしても、利用者に不利益はありません。しかし、新しいサービスとして割り勘アプリなどでは、現在、法律の規制がない状況のため、業者が破産すると利用者が被害を被ることになります。最近では、多様化・複雑化する決済として、複数の決済サービスを組み合わせたものが出てきています。たとえば、クレジットと前払式支払い手段(交通系カードとオートチャージ機能)、複数の決済サービスを提供するもの(国際ブランドカード、LINEペイ、PayPay、ヤフーウォレットなど)などがありますが、それぞれ規制法が違うので、問題が起きた場合の救済が違ってきます。

◆決済制度制度見直しの議論について

 「金融制度スタディグループ」では、2017年秋より審議が始まり、2018年6月に中間整理、2019年7月に「決済法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告 基本的な考え方」が報告されました。秋以降、制度の具体的な論議を経て、来年度通常国会に法案提出の見込になっています。事業者団体からは規制緩和の積極的な意見が出されています。

 報告書の中で、たとえば、ポストペイサービスでは、過剰与信防止を適切に確保しつつ「少額」を念頭に検討をすすめるとされています。これに関しては、経済産業省・割賦販売小委員会で論議されたクレジット決済の過剰与信規制緩和について、全国消団連や日弁連からも問題であるという意見書が出された影響があり、規制緩和がスムーズに行われる状況ではなくなったかと思われます。

◆期待される制度整備の方向性

 今後、秋以降の議論で目指すものと中長期的課題で考えるものがあります。総論的視点では、規制の緩和に偏することなく、利用者にとって安全・安心な決済手段を実現することが重要です。

 特に、利用者保護に直結する論点については、是非、消費者団体でも議論をしてほしい内容です。①加盟店管理制度をどうするか、②抗弁の対抗に相当する制度を前払式にも入れられないか、③第三者による不正利用に保護救済規定を設けてはどうか、との点です。

 制度整備を進めるうえでは、被害の事例など、生の声が重要であると思っています。また決済に関する問題認識を広げて制度整備を目指すとともに、事業者や業界団体の対応を促すこと、不用意な規制緩和が行われないよう監視をすることも重要です。

以上

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