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2017年度第4回運営会議

「適格消費者団体と消費者スマイル基金の意義と課題 」を開催しました

 消費者団体訴訟制度が従来の差止請求の範囲から被害回復訴訟にまで拡充され、消費者団体が取り組める公益的活動の領域が大きく広がりました。他方、団体の財政事情は依然として厳しく、本年の通常国会で改正国民生活センター法が成立しましたが、適格消費者団体が安定して消費者団体訴訟制度に基づく活動ができるような公的支援は実現していません。

 こうした中、全国消団連では検討を重ね、適格消費者団体等の消費者被害防止・救済の活動に財政支援を行うべく「消費者スマイル基金」を本年4月に設立しました。あらためて適格消費者団体と「消費者スマイル基金」の意義と現状を学び、今後求められることについて考えあいました。

【日  時】 10月19日(木)13時15分〜15時15分

【会  場】 主婦会館プラザエフ 5階会議室

【参加者】 28名

【プログラム】

 ●消費者団体訴訟制度をめぐるこれまでの沿革と課題 磯辺浩一さん(消費者機構日本専務理事)

 ●適格消費者団体の活動と課題 石田幸枝さん(全国消費生活相談員協会消費者団体訴訟室長)
飯田秀男さん(全大阪消団連、消費者支援機構関西副理事長)

 ●「消費者スマイル基金」の現状報告 河野康子さん(消費者スマイル基金事務局長)

 ●グループワーク(適格消費者団体の活動を広く知らせ、社会からの支援を得るための方策とは)

概要(事務局による要約)

消費者団体訴訟制度をめぐるこれまでの沿革と課題 磯辺浩一さん(消費者機構日本)

●消費者団体訴訟制度が必要な理由

 1973年、物不足パニック・狂乱物価の中で灯油が町から消えたのは独禁法違反のヤミカルテルが原因であるとして灯油裁判になりました。消費者団体が企業の社会的責任に対して起こした裁判であるのに、団体は原告になれませんでした。1人ひとりの消費者が裁判をする大変さもあり、消費者団体が原告であってしかるべきではないかとの動きにつながりました。2001年施行の消費者契約法では、不当な勧誘行為により誤認・困惑して締結した契約は取り消すことができるなど、利用しやすいものになりましたが、事業者の行為自体を止めることができません。そこで2007年、一定の要件を満たした適格消費者団体が事業者に対し差止請求訴訟を提起できるようにしました(差止請求)。また1人ひとりの被害は事業者との協議や合意により解決することもありますが、訴訟となると、消費者自身が提起するのは困難です。そこで2016年より、共通の原因で多数に発生する消費者契約被害に対して、団体がまとめて救済を出来るようにしました(被害回復)。

●消費者団体訴訟制度の活用の課題

 適格消費者団体の体制強化と、特に特定適格消費者団体を増やすことが重要な課題です。また制度の請求対象外の損害がありますが、そこへの拡張ができないかとの論議があります。たとえば慰謝料は現状は対象外ですが、請求対象にしてもよいのではないかと考えます。

適格消費者団体の活動と課題 石田幸枝さん(全国消費生活相談員協会)

●適格消費者団体としての活動

 本協会は全国の地方自治体等の消費生活相談員 約2,000名の会員の団体です。2007年に適格消費者団体の認定を受け、活動の一部で消費者団体訴訟制度を担っています。差止請求事案は現在まで20件(うち19件は裁判外)です。

●差止請求事案

 週末電話相談(行政が行っていない土日)などで消費者から寄せられる情報から、分析・検討の上、差止請求につなげています。たとえば、ネット販売サプリの定期購入に関して「継続回数を購入するまで一切解決できないが、条件表示が非常に小さい」ことがあり、申し入れ後に「やむを得ない場合は、定期購入と単品価格の差額を支払うことで解約を受ける。表示が大きく見やすくなった」との改善になりました。差止請求事案はホームページで公開しています。現在、介護付き有料老人ホームで訴訟事案が1件あります。

●課題

 消費者契約法の、「事業者の平均的な損害」についての立証責任の転換が必要ではないかと考えます。

 活動では、弁護士や消費生活相談員のボランティアに依存している状態で、運営を継続していくために公的財政支援が求められます。

適格消費者団体の活動と課題 飯田秀男さん(消費者支援機構関西)

●組織運営のしくみ

 団体と個人の会員があり、組織には差止請求と被害回復の検討委員会、グループがあります。差止請求で改善を求めた業者は97件、そのうち申し入れは60件、改善は65件、改善に至らなかったのは15件で、訴訟は9件です。

●差止請求と被害回復

 差止請求業務の「検討グループ」は昨年17あり、1グループ5〜6名で、弁護士、学識者、司法書士、消費生活相談員、消費者などが所属し、全体で90名が活動しました。まずは事業者に問合せ、何回かやり取り後、改善すべきとなった場合に申し入れ、従わなかった時に提訴するとの手順です。1つの事案で立ち上げて3カ月〜1年で、終わるとグループは解散します。

 被害回復は、制度の枠組みに当てはまる事案がすぐ見つからないのが課題です。また、消費者に手を挙げてもらうために承諾書を取ることになりますが、案内文書を送った時に信用してもらえるか(新手の詐欺と間違われるのでは)との懸念があります。被害該当者の人数によって規模が全く違うという点も課題になります。

●すべて手弁当の活動

 弁護士などには実費の交通費のみ支給しています。公益性の高い活動をしているのに、支援がないという不可解な状態です。ドイツやフランスでは公的資金が団体に投入されているのですが、日本はそこに至っていないです。業を煮やして全国消団連で消費者スマイル基金を作りました。決してこれが正しい姿とは言えないのですが、この必要性を訴え、やがて公的資金が投入されて運営できるようにしたいです。

「消費者スマイル基金」の現状報告 河野康子氏(消費者スマイル基金)

●いつ、なぜできたのか

 全国消団連の60周年にあたり、昨年度全国消団連の定時総会で承認を得て、今年4月に設立総会を行いました。消費者被害の相談は約90万件で横ばいですが、実際に相談するケースは7%でしかなく、ほとんどの方は泣き寝入りをしている状況です。

 国は消費者被害防止・回復のための制度を用意しましたが、その仕組みを動かすための人材確保、組織運営は消費者団体の自助努力に委ねたままです。関わっている弁護士や消費生活相談員の知識や経験に対しての対価が払われない状況です。差止請求で事業者の業務改善がされれば、日本全国の消費者のためになるものです。

●仕組み

 消費者、事業者などから寄付を集め、消費者被害の防止・救済に取り組んでいる消費者団体に助成します。募金は現在約150万円集まりましたが、これを第1回助成に充てます。また、会員になっていただいた方の会費を運営費用に充てています。この活動を通して消費者市民社会の実現、健全な市場の実現を図ります。

 マスコットキャラクターとして、適正に使うということで「適にゃん」「ひよこさん」がいます。また、ポスターは全国消団連のインターンシップの大学生に作成してもらいました。

●目指すもの

 募金を集めるための工夫を考えています。どうしたら理解をして募金につながるか、お知恵をいただきたいです。ハードルはたくさんありますが、がんばっていきたいです。

グループワーク

 多くのアイデアをいただきました。実践できるところから取り組んでいきます。

1.適格消費者団体の活動を広く知らせる具体的アイデア

・消費者庁Webで紹介 / 学校からの紹介 /テレビ(ドラマ仕立て)や新聞で取り上げてもらう / キャラクター、ニックネーム / わかりやすい、話題性のあるもので集団訴訟を起こして知らせる / SNS、YouTube 1万いいね目標。

2.消費者スマイル基金が支援されるための具体的アイデア

・簡単な寄付方法(ワンクリック) / 商品を買うことで○円が支援される仕組みを使う / 50円募金にLINEスタンプ / ひよこさんキャラクターグッズ販売 / 適格消費者団体の実践のアピールと財政難であることを周知。

感想アンケートより(抜粋)

  • 消費者団体訴訟制度の内容から実際の事案までわかりやすく勉強になりました。
  • 広く知らせるためのアイデアがたくさん出て参考になった。せっかくのポスター、多くの方の目に触れるようにしてほしい。

以上