再び、製造物責任法の改正案を提起するに当って
製造物責任法(PL法)が施行されて10年が経ちました。
PL法ができて、欠陥製品事故による消費者被害は本当に救済されるようになったでしょうか。また、企業の安全性確保に対する意識が高まり、被害が未然に防止されるようになっているでしょうか。
この10年を振り返ってみると、確かに消費者にとって前進していると評価していい面もありますが、まだまだ以前と変っていない面も多いというのが率直な感想です。
国民生活センターによれば、拡大損害に関する相談件数は、毎年数千件に及んでいますが、欠陥製品による被害とその救済については、ベールに包まれていることが多く、なかなか全体像を把握することが難しいのが現状です。
訴訟が提起されたものは、この10年間で数十件にとどまっており、とても多いとはいえません。訴訟の結果をみても、原告勝訴の比率は高いとはいえない状況で、「欠陥の存在」や「損害との因果関係」の立証が依然として大きな壁になっていることがうかがわれます。そもそも訴訟が少ないことの理由の一つには立証負担の重さがあるといわざるをえません。
裁判外紛争解決機関についても、透明性・公正性・情報の活用など問題が残されています。
一方、製品の安全性に関わる問題でも、三菱自動車の欠陥・リコール隠しと相次ぐ事故、雪印乳業の食中毒事件、BSE問題、鳥インフルエンザ事件、ジェット風呂による死亡事故や回転ドアによる死亡事故など、大きな事件・事故が続発しています。PL法ができたにもかかわらず、企業の安全意識の向上どころか、これらの企業においては安全の確保がないがしろにされ、法の無視、違反行為が平然と行われているのです。企業には、自分の利益を優先して、消費者の生命や健康を軽視するという姿勢や体質が根強く残されているのです。
このような状況をみると、欠陥製品による消費者被害の公正・迅速な救済と被害の未然防止のためには、PL法の強化・改正こそが必要であると考えます。
私たちは、既に3年前に、PL法改正案をまとめて発表していますが、施行10年を経過した今、改めて改正の必要性を訴えるものです。
各界のみなさんが、この提案を真剣に受け止め、公正・迅速な被害の救済と事故の未然防止の実をあげるために検討することを期待するものです。
2005年7月1日
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