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「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を提出しました

 今年度、全国消費者団体連絡会 地方消費者行政プロジェクトで行った都道府県消費者行政調査では、「地方消費者行政強化作戦2020」の目標でもあった「地方版消費者基本計画」の策定状況、消費者教育や見守り活動に関わる「地域サポーター」の状況、消費生活相談員の現況、消費者教育の推進、そして現在、消費者庁と国民生活センターが検討を進めている「消費生活相談のDX化」についてなどを聞き取りました。

 これらの結果を踏まえ、「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を作成し、2月21日に「内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、財務大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長」に提出いたしました。

2024年2月21日

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
地方消費者行政プロジェクト

地方消費者行政の充実・強化のための意見

 デジタル化の急激な進展は、消費者の利便性を向上させた反面、新たな消費者トラブルも生み出し続けています。被害を受けた消費者の権利回復と被害救済のための法律と制度の充実、強化は非常に重要です。それとともに、被害発生を未然に防止するために、消費者への周知・啓発と消費者教育、地域の見守り活動なども、一層の強化が求められています。消費者が安全に安心して暮らすためには、より身近な自治体の消費者行政が充実し、消費者問題の変化や進展に対応して強化され続けることが、重要な鍵であるといえます。

 今年度、全国消費者団体連絡会 地方消費者行政プロジェクトで行った都道府県消費者行政調査では、「地方消費者行政強化作戦2020」の目標でもあった「地方版消費者基本計画」の策定状況、消費者教育や見守り活動に関わる「地域サポーター」の状況、消費生活相談員の現況、消費者教育の推進、そして現在、消費者庁と国民生活センターが検討を進めている「消費生活相談のDX化」についてなどを聞き取りました。

 私たちは、全国の消費者・消費者団体と連携して地方消費者行政のさらなる拡充を求め、国及び自治体に対し、働きかけを継続・強化していきます。

1.国は、計画的な消費者施策の実施のため、「地方版消費者基本計画」が策定されるように、未策定の県と政令市に働きかけてください
 加えて、計画の中に指標(数値目標・KPI)を設定している事例についても情報提供してください

 消費者庁が掲げる「地方消費者行政強化作戦2020」では、地方における消費者政策推進のための体制強化として、全都道府県と政令市での「地方版消費者基本計画の策定」を2024年度までの目標にしています。
 今回の調査から、策定したことで良かったこととして、「指標等で効果把握・評価ができる」「施策の方向性が明確になる・共有化できる」「関係団体との連携が進む」「審議会・専門家の意見を反映できる」などの回答がありました。
 また、基本計画を策定したほとんどの県で、指標(数値目標・KPI)を立てていて、「とても効果があった」「ある程度効果があった」と多くの回答があり、一定の効果があることがわかりました。
 国は未策定の県・政令市に対して、策定例を紹介するなどして早期策定を働きかけてください。
 その際、県民・消費者代表の意見をしっかりと汲み上げて基本計画を策定することや、適切に指標(数値目標・KPI)を設定・活用することの有効性についても情報提供してください。

2.消費生活相談のDX化について、国は現場の状況を把握し、自治体の意見を丁寧に聞いて、コミュニケーションの強化を図り、速やかに情報提供・共有をしてください
 併せて、DX化による変更が、相談者(消費者)の利便性に繋がるよう、消費者への周知と意見の聞き取りをしてください

 今回の調査から、自治体には、国が示す方向性がわからないことや、具体的な提案がないことでの不安が多くあることがわかりました。
 「消費生活相談のデジタル・トランスフォーメーションアクションプラン2023」で示されている「DX後の相談体制構築に向けた取組」では、システムを最大限に活用し、DXによる恩恵を最大化するため、自治体間の協力体制の充実などが必要であるとして、体制面では「広域連携」、人材面では、「指定消費生活相談員・主任相談員」が提案されています。これらについて、国が県と区市町村の役割分担をより具体的に示すことや、機器の配備や体制整備に対する国の支援についての要望が出されています。関連して、消費者安全法との関係性を懸念する声もあり、国からの具体的で丁寧な説明が必要であると考えます。自治体から寄せられた質問や意見に速やかに回答するとともに、DX化を進める上で各自治体が対応すべき具体的な業務内容などを早期に明らかにしてください。
 また、この消費生活相談のDX化を進める目的の1つに、消費者の利便性の向上があげられています。消費者が便利で使いやすい相談体制や対処の仕方などについて、消費者の意見を聞く必要があると考えます。

3.消費生活相談員の人材確保、処遇改善は喫緊の課題であり、国は人件費に関する財政支援の継続と、働き方も含む抜本的な消費生活相談員の採用政策をとりまとめてください
 今回の調査では、「以前から継続している」「今年度欠員状態になった」県を合計すると、30%を超える14県が消費生活相談員の欠員状態でした。そのうちの70%を超える県は欠員状態が継続しています。消費生活相談員不足が言われ始めて久しく、国による資格取得支援等も行われてきましたが、各県の相談員採用をめぐる課題の指摘から、相談現場においては深刻な担い手不足を解消できておらず、今後、さらにその状況が悪化することを危惧する回答も多く寄せられています。
 実際に消費者庁の令和5年度地方消費者行政の現況調査でも、消費生活相談員の年代層は、30代以下3.1%、40代12.3%、50代36.3%、60代40.1%、70代以上8.1%で、現在の年齢構成がそのままスライドすると、人材不足はさらに進行を早め、相談体制自体が成立しなくなることは必至です。
 加えて、消費生活相談員の仕事は、関連する法律知識のみならず、様々なスキルが要求されます。相談内容・相談者の多様化によりこれまで以上に厳しい状況下にある消費生活相談員の業務は、資格取得すればできる、というものではありません。単に資格を取得させるだけではなく、高いモチベーションを維持しながら働き続けられる環境の整備や、幅広い年代の相談員を採用できるようなシステムの構築も望まれます。若者が相談員の仕事を一生の仕事として選択したいと思えるような抜本的な見直しを国に期待する声もあります。
 国や国民生活センターが示すDX化案だけでは相談員の担い手確保は困難という県が少なくありません。相談現場の持続可能性を高めるために、若年層も含む人材確保に向けた制度的あるいは財源的な措置を直ちに実施する必要があります。
 それと共に、処遇や働き方、人材育成や安全・安心な地域社会づくりにおける役割など、消費生活相談員採用に向けた基本的な政策を決定して推進してください。

4.国は、地方消費者行政強化交付金について、自治体のニーズを把握し、活用しやすい事業メニューにしてください
 国(消費者庁)に対して、交付金等財政に関する要望では、毎年、継続的・安定的・長期的な財政支援の意見が出されます。同様に、地方消費者行政強化交付金の補助率のかさ上げ、制度改善、使途の拡充などについても多くの意見が出されています。
 また、地方消費者行政強化交付金の活用状況についても、活用が進むメニューと、あまり活用されないメニューとに二分される傾向があります。
 国は、地方消費者行政推進事業の活用期間終了による影響も含め、自治体のニーズを把握して事業メニューを設定し、持続的で使いやすい制度となるように改善することが必要であると考えます。

5.若年層の消費者被害の未然防止のためにも、国、自治体ともに早期からの消費者教育を実践してください
 国は、効果的な消費者教育のために消費者教育コーディネーターの複数配置のための予算措置に取り組んでください

 今回の調査で、消費者教育について、小学校・中学校から家庭向けまで多く取り組まれていたのは「出前講座、講師派遣」でした。出前講座では、「若者が陥りやすい消費者トラブルの事例と対処法などを伝える講座」など特徴的な内容や、消費生活クイズ「めざせ!消費生活マスター」(中学生向け)、「消費生活名人になれるかな」(小学5・6年生向け)のホームページ掲載、YouTube動画での配信など、さまざまな工夫がありました。
 消費者教育コーディネーターの配置も進んでおり、「教育委員会との連携、消費者教育普及啓発・調整、講座等」に期待をしていると回答がありました。消費者教育コーディネーターの活用が進み、低年齢層から積極的に消費者教育が実践されることが期待されます。 しかし、半数以上の県では消費者教育コーディネーターが1人しか設置されていません。役割として期待されている内容を1人で担っていくことは難しいと考えます。専任のコーディネーター配置のための予算措置を希望するという回答があったように、効果的な消費者教育を行えるよう消費者教育コーディネーターの複数人配置のための予算措置等、国を挙げての取り組みを考えていくべきです。

6.国は、地域での見守りや消費者教育の周知のためにも地域サポーター制度の設置と活用を促進してください
 また、自治体の消費者行政担当職員の役割を再確認し、人事政策の中に消費者行政担当のフルタイム職員の人材確保を位置づけ、見守り活動などの運営や関係団体との連携を強化してください

 今回の調査では、半数以上の県で地域サポーター制度を持ち、見守り、情報の周知、消費者教育の講師などの役割を消費者が担っています。また、大学生などの若者にも対象を広げ、若者に特化した啓発活動や消費者教育を展開している自治体もありました。役割が「十分発揮されている」「ある程度発揮されている」と答えた県が78.6%あることから、一定の成果をあげていると言えます。多発する消費者被害に関する啓発活動の担い手として、地域サポーターの養成を新たに始めた県もあり、市町村職員の手が回らないところを地域サポーターが補うことが期待されています。
 しかし一方で、近年は高齢化などの理由により、地域サポーターの人材確保に苦労している様子もうかがえます。また、区市町村での活動の機会が少ないことも課題のひとつとして挙げられており、その理由として区市町村担当者が業務多忙で都道府県との連携を作り切れていないことが考えられます。
 こうした現状を踏まえて、地域の消費者、消費者団体の活動支援の一環として、国は好事例を提供するなどして、県・区市町村での地域サポーター制度の設置と活用を促進してください。
 併せて、消費生活相談で得られた知見を地域社会の財産として行政運営に活用し、関係団体や近隣自治体との連携を構築していく等、消費者行政担当のフルタイム職員の重要な役割を再確認する必要があります。
 国、地方自治体ともに人事政策の中に消費者行政担当のフルタイム職員の人材確保、若手職員のキャリアパスとしての消費者行政担当への配置を位置づけ、安全・安心な地域社会づくりにおける地方消費者行政の重要性と仕事の魅力を職員や就職希望者に強く発信してください。

以上