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「モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告」に
対する意見を提出しました

 2021年6月30日より、政府の「デジタル市場競争本部」は、「デジタル市場競争会議」の「デジタル市場競争会議ワーキンググループ」で、モバイル OS を基盤とするレイヤー構造がデジタル市場の競争環境に与える影響や新たな顧客接点における競争環境について、市場実態を把握して、競争の活性化など目指すべき姿を検討していました。2022年の中間報告を経て、このほど最終案をまとめ、パブリックコメントを募集しています(締切8月18日(金)まで)。

 全国消団連では、セキュリティの確立とプライバシーの保護の観点から、中間報告に対して2022年6月9日に意見書を提出しました。

http://www.shodanren.gr.jp/database/471.htm

 最終報告に対して、「公正な競争による消費者利益の確保は必要ですが、大前提であるセキュリティの確立とプライバシーの保護をまずは優先して、安全・安心で使いやすいモバイル・エコシステムとすることを求めること」として、8月9日にデジタル市場競争本部に対して以下の意見を提出しました。

2023年8月9日
一般社団法人 全国消費者団体連絡会

「モバイル・エコシステムに関する競争評価 最終報告」に対する意見

(該当箇所:全体について)
【意見】
 消費者は、スマートフォンを便利であると同時に、安心して利用できることを望んでいます。その前提は、セキュリティやプライバシーが担保されていることです。
 報告書では、セキュリティやプライバシーを確保することの重要性について、各所で言及されています。その一方で重要性を担保するための具体的な方策について記載がありません。公正な競争による消費者利益の確保は必要ですが、利用の大前提である、セキュリティの確立とプライバシーの保護をまずは優先して、安全・安心で使いやすいモバイル・エコシステムとすることをより明確に打ち出すことを求めます。

【理由】
 スマートフォンの利用率は2023年度では90%以上となりました。若者から高齢者まで幅広い年代の国民が、安全、安心なツールと認識して日常的に使用しています。そして、様々なアプリを通じて、銀行口座やクレジットカードとの紐づけなどが出来るようになり、ネットでの取引情報や各種健康情報、個人の行動履歴や位置情報など、個々の端末には多様で重要な個人情報が保存されています。
 その一方で、フィッシング詐欺やマルウェアの感染などのサイバー攻撃により、自身の知らないところで個人情報が売買される、あるいは、マルウェアに感染した端末が起点となって被害者が加害者としてサイバー攻撃を拡大してしまう可能性も否めません。
 デジタル化が急激に進み、モバイル・エコシステムも複雑化し、高齢者、若年層を問わず、利用者の間でスマートフォンに関する情報格差が生じる中で、消費者がスマートフォンに求めているものは、セキュリティやプライバシーが確保されていて安心して利用できるものであることです。
 公正取引委員会のアンケート「モバイル OS 等の取引実態に関する消費者向けアンケート調査結果」では、App Store 以外のアプリストアをどのような条件であれば利用したいかというiOS ユーザーに対する問いに対し、一番多かったのは「App Store よりもセキュリティが守られるなら利用したい」と答えたユーザーが全体の 34.9%になっています。このような点から、報告書全般に通底する開発者・事業者からの視点を改め、消費者の求める安全性の確保を第一義とするべきと考えます。

(該当箇所:p.411−1.OS、ブラウザのアップデート、仕様変更、ルール変更への対応)
【意見】
 OS、ブラウザは、日々発生するセキュリティ問題やバグ等不具合に対処して不具合を生じさせないために、日常的かつ間を置かない改善と更新が必要です。しかしながら、提供されるバージョンアップ情報が不十分である、情報提供時期が遅く十分な準備期間を確保出来ないなど、デベロッパ側の速やかな対応を阻害するような問題点も指摘されています。
 GoogleやAppleはデベロッパへ早期に更新計画を発信し、併せてデベロッパも公開を延期させることがないよう、自ら準備出来る体制を整備することを明記してください。

【理由】
 スマートフォンは常に様々な脅威にさらされています。消費者の安全と安心を確保するために、システム脆弱性を解消するためのアップデートは必須です。更に、デベロッパがOS、ブラウザのアップデート情報を踏まえて遅滞なくアプリを改修することも危険性排除の点で鍵と言えます。改修の間隙を縫って弱体化したシステムに悪質な攻撃が仕掛けられ、個人情報の剽窃など、消費者被害が拡大することが容易に想定されるためです。

(該当箇所:p.61 2−1.決済・課金システムの利用義務付け)
【意見】
 決済・課金について、1つのアプリに2つの異なる決済システムを組み合わせることは、消費者の混乱を招くことに繋がります。トラブルが発生した場合に、どこで決済したのかわからなくなり、その問い合わせにも時間とコストがかかって、却ってトラブルが増えてしまう可能性もあります。また、複数の決済システムから一つを選択する場合に、その決済システムがプライバシー保護の面で十分に機能しているのかを確認するすべはありません。
 消費者にとって、わかりやすい安全な決済システムとすることを求めます。

【理由】
 アプリ内から外部のWebサイトに移されて決済・課金されるようなシステムも含まれると消費者は全く混乱することになります。現在のアプリストアでの決済・課金システムでは消費者の選択に繋がるような細かな料金設定が出来ず、消費者の利益を阻害しているとの記述がありました。同じアプリの中で複数の決済システムが存在し、それに紐づいて料金設定がされることは、一見すると消費者の利便性を促進するものにも思えますが、操作や選択の間違いで消費者の意図しない決済が行われる、自ら利用した決済システムを理解しておかないと仮に返金を求める事態に陥った場合に、返金を受けられない可能性は高まります。わかりやすく安全であることを第一義にして対応を取りまとめてください。

【意見】
 決済・課金システムの利用義務付け解消の対処法として、P84の結論部分に「このため、決済・課金システムの拘束だけを問題として対処するのでは足りず、アプリ流通においてプラットフォーム事業者の提供するアプリストアを通じた経路以外の方法を認め、競争を導入することが必要である。」とありますが、決済・課金システム拘束問題の解決方法として、「アプリ代替流通経路」を導入するというのは、特に金銭に関わる「決済・課金」の場面で、消費者を危険にさらすものであり、不適当です。

(該当箇所:p.90 2−3.信頼あるアプリストア間の競争環境整備(アプリ代替流通経路の容認))
【意見】
 「アプリ代替流通経路」の④のプラットフォーム事業者の提供するアプリストアを通じた経路以外からアプリを直接ダウンロードする類型を認めた場合、プラットフォーム事業者による安全性審査の過程を経ず、消費者は安全性を担保されていないアプリをダウンロードすることになります。誤って悪意あるアプリをダウンロードし、個人情報の抜き取られやマルウェアに感染する恐れがあります。特にマルウェアに感染した場合、被害者がマルウェア拡大の加害者にもなりうるものです。直接ダウンロードは極めて危険なものであり、反対です。

【意見】
 「アプリ代替流通経路」の①②③に記載された、App Store以外の代替アプリストアですが、プライバシーやセキュリティをどの程度まで確保して設定出来るのかが重要です。
 少なくとも「App Store」と同等程度のセキュリティレベルを確保することが必要であり、消費者にとって安全でアプリを安心して利用できる環境を確保することを第一義としてください。

(該当箇所:p.102 青少年保護の観点からの留意点)
【意見】
 青少年保護の観点について、仮に「アプリ代替流通経路」を容認した場合でも、保護者にわかりやすい仕組みを作って被保護者を保護できることが必要です。わかりやすく利用しやすい仕組みを作れない場合は、「アプリ代替流通経路」は容認すべきではありません。

以上