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食料・農業・農村基本法見直しに関する意見・要望書を提出しました。

 農政の根幹である「食料・農業・農村基本法」は、1999年の制定から20年以上が経ち、現在、総合的な見直しに向けた検討が開始されました。

 制定からの20年余で、国内市場の減少や生産者の減少・高齢化、昨今は食料安全保障上のリスクの高まりや、気候変動、海外の市場の拡大など、農業を取り巻く状況は大きく変化しています。

 このような国内外の情勢変化に対応するために、農林水産省の「食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会」において、改正に向けた同法の検証や見直しが進められ、令和5年5月29日、第16回の基本法検証部会において、食料・農業・農村基本法の検証・見直しに関する「中間取りまとめ」が公表されました。

 全国消団連では、今後の食料・農業・農村基本法の検証・見直しに当たり、以下の通り7月3日に、意見・要望書を提出しました。

2023年7月3日

農林水産大臣 野村 哲郎 様
農林水産省 大臣官房政策課 御中
関東農政局 企画調整室総括班 御中

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

食料・農業・農村基本法見直しに関する意見・要望書

 我が国の農業を取巻く情勢はめまぐるしく変化していますが、農政の根幹である「食料・農業・農村基本法」は制定から約20年以上、見直しがされてきませんでした。

 農林水産省が公表している「2050年における世界の食料需給見通し」によると、世界の人口は増え続けて80億人を突破し、食料需要は2050年には2010年の1.7倍の58万トンまで増加する見通しです。

 さらに、ウクライナにおける戦争や、地球規模の気候変動に由来して近年多発する異常気象による自然災害や水不足などにより、国際的な食料需給における不安定さを増し、その結果として穀物価格の高騰、為替変動などによる輸入食品・飼料の価格は高騰が続き、多くの国民が国内の食料供給能力の低下に不安を感じています。

 また、国内の総人口は12年連続で減少を続け、2022年の死亡者数は約158万人、出生数は約77万人となっています。人口減少による市場の縮小や、農業従事者の高齢化(平均年齢67.9歳)と減少・農村人口の減少も進行しています。このような国内外の大きな情勢変化に対応して、国内の生産者、加工・流通事業者、小売事業者、消費者等の多様なステークホルダーが関わる安定的な食料システムの構築をはじめ、環境等に配慮した持続可能な農業・食品産業に転換を図ることは喫緊の課題です。すべての消費者が、安全・安心で栄養価のある食料を確保し、健康で文化的な食生活を持続可能なものとしていくことが求められます。

 全国消団連では、これまでも食の安全、消費者の信頼確保、食育・食文化、食品産業政策において意見・要望を提出するなど、農業政策に関わってきました。この度、食料・農業・農村政策審議会 基本法検証部会でまとめられた中間まとめ(案)に対して、次の通り意見・要望書を提出します。

【No.1】食料の安定供給と国産農産物の生産・消費拡大に向けた取り組みついて

 食料の安定供給を確保するためには、国内の農業生産の強化と併せて、平時から平和な国際協力関係を構築・維持するとともに、備蓄の有効活用や代替国からの輸入、緊急増産などの対応が講じられるように備えることが大切です。これらの重要事項を基本法に記述することを求めます。また、食料の調達から生産、加工、流通(輸送)及び販売、消費など食料システムに関わり、食料供給に影響を与える可能性のあるリスクについて、毎年度、将来的な国内外の需要による生産量や市場価格を予測しつつ、戦略的にどう対応すべきか、具体的な施策を公表することを求めます。

 今後、具体的な施策を実行するにあたって、100%自給可能な「米」に着目し、安定的な生産と供給のため、担い手の支援、水田稲作の生産構造の強化、消費の拡大、飼料原料への積極的活用など飼料の国産化、エコフィードの積極的利用、食品ロスの削減等をさらに推進してください。

 生産と消費が離れる中、農業の持続可能な発展のためには担い手の育成・確保と担い手を支えるサービス等は喫緊の課題です。

 国産農産物の消費拡大に関連して、健康に配慮した食生活に注目が集まる今こそ、消費者の多様なニーズ・特性に対応しながら、農林水産業への理解促進、地産地消、食育などを通して、日本型食文化に代表されるような食文化を次世代へ継承していくことを求めます。

 今後、具体的な施策を実行するにあたって、文部科学省を中心に他省庁とも連携の上、学校給食における地元農産物の利用や、農林漁業の体験型学習の導入など、次世代を担う子どもたちに関心を持ってもらえる取り組みを積極的に推進してください。

【No.2】透明で適正、かつ公正な価格形成について

 肥料・飼料価格の高騰に加え、生産・加工・流通コストなどの上昇により、農業従事者の経営が厳しい状況にあることを承知した上で、コスト上昇分を適正に小売価格に反映させることはやむを得ないこととして理解しています。ただし、この問題は、流通・販売の努力などを含め、フードチェーン全体で対応しながら解決を図るべき課題であると考えます。まず、値上げの背景や理由、生産者の厳しい状況などを消費者に対して分かりやすく「見える化」することを求めます。

 今後、具体的な施策を実行するにあたって、農林水産省・都道府県・市町村・生産者・メーカーなどが協力・連携して情報発信をするためのイベントの実施や交流の場の企画、全国の小売店・飲食店を巻き込んでの消費拡大に向けたキャンペーン等も有効と考えます。生産者と消費者との定期的な交流を通じてより多くの方の共感につながるよう、広報資材、発信方法などを工夫し、流通や小売の協力も得ながら、店舗のポスターやPOPなどでもわかりやすく丁寧に伝えてください。

 一方で、消費者はすでに相次ぐ食品や日用品の値上げに直面しており、さらなる値上げによる消費者のくらし全般に与える影響は計り知れません。消費者の家計負担や可処分所得の状況を踏まえて、段階的な値上げや急激な価格上昇を緩和するための政策的な補助・補填を検討ください。

【No.3】食品の安全性の確保、消費者の選択に資する食品表示の適正化について

 食の安全・安心は、健康なくらしの基礎となるものです。食の安全を確保するための適切なリスク分析の仕組みが運用されるとともに、消費者が自らのニーズや価値観に沿って適切に品質管理された安全で栄養のある食品を主体的に選択することができるよう、消費者にとってわかりやすい食品表示制度のさらなる整備・充実、食品アクセス問題に対応する仕組みの構築を図っていくことを求めます。

 今後、具体的な施策を実行するにあたって、世界的に注目されているフードテックなど、新たな技術を利用した食品の導入や普及に際して、正しくリスク評価・リスク管理が行われるとともに、消費者への適正な情報開示と、消費者自らが判断して選択できるよう、適正な食品表示制度のルール作りを行ってください。なお、消費者に誤認させる不当な表示に対しては監視・指導を強化してください。

【No.4】食料・農業・農村施策における消費者と生産者のコミュニケーション推進について

 消費者は生産者の意欲や苦労、付加価値のある取り組みなど生産現場に思いを馳せながら食と農について理解を深め、生産者は消費者の多様なくらしや食のニーズについて理解を深めるために、お互いが理解し合える「顔の見える」関係を強化することを求めます。

 今後、具体的施策を実行するにあたって、食料・農業・農村に関わる方向性や方針を決定する場には、生産者やその関係者だけでなく、消費者を含めた多様なステークホルダーが参加でき、その声を反映する仕組みを構築して、生産者と消費者の交流やコミュニケーションを重要なものとして拡大し、消費者による生産者の応援につながる信頼関係を築くための取組みを進めてください。また、ICT・IOT技術なども活用しながら、全国の生産者にマーケット・イン発想による取り組みを発信して普及を図り、一層レベルアップできるようサポートを強化してください。

以上