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原子力政策にかかわる「GX実現に向けた基本方針」(案)ほか
あわせて4件のパブコメ募集に対して意見を提出しました

 8月のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で次世代革新炉の新設について検討が指示されたのを受けて、基本政策分科会、原子力小委員会でも検討がされ、今後のGX実現に向けた政策課題やその解決に向けた対応の方向性等を整理した「GX実現に向けた基本方針」、「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」が示されました。

 これらの案には、原発の再稼働の加速のほか、「安全確保を大前提とした運転期間の延長など既設原発の最大限活用」「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設」など、原発推進の項目が並んでいます。

 またこれらの方針に沿った「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)に対する科学的・技術的意見の募集の実施について(原子力規制委員会)」「原子力利用に関する基本的考え方」改定に向けた御意見の募集について(内閣府原子力委員会)」についても意見募集されました。

 全国消費者団体連絡会は他団体と共に、エネルギー問題について行政担当者や専門家を招き、エネルギー政策の在り方を継続的に検討してきました。今回の「GX実現に向けた基本方針」(案)「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」は、国民的議論が進んでいない中で、約4ケ月という短い期間の議論で作成されており、国民の理解を得ることは困難です。これまでの「福島第一原子力発電所の事故を踏まえて原子力の依存度をできるだけ低減させる」方針から「原発の新設・リプレースを含め原発を最大限活用する」方針へ転換されています。

 全国消団連は、2022年12月に発出した声明をもとに、それぞれの原子力政策にかかわる部分を中心に意見をまとめ、提出しました。

今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)に対する意見

提出先:経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課 パブリックコメント担当

【意見】

(該当箇所)7P、2.(2).@運転期間の取り扱いに関する仕組みの整備
9P、2.(3).@開発・建設に向けた方針

(意見)
 既設原発の運転期間延長と次世代革新炉の新設については、今回は行動指針を示さず1年程度の時間をかけ、国民参加の議論の上、結論を出すことを求めます

(理由)
 福島第一原子力発電所の事故以降、原子力政策は国民のエネルギーに対する最大の関心事ですが、原発のエネルギー利用に関しては、国民の間に大きな理解の隔たりがあります。
 「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」では、「原子力発電所の再稼働の加速」に加えて、「運転期間の延長など既設原発の最大限活用」「原子力について安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく」「準国産エネルギーとも言われる原子力エネルギーの活用を図っていくことが非常に重要である」など、同様に原子力を持続的に活用するための原発推進の項目が並んでいます。
 全国消費者団体連絡会は他団体と共に、エネルギー問題について行政担当者や専門家を招き、エネルギー政策の在り方を継続的に検討してきました。今回の「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」は、国民的議論が進んでいない中で、4ケ月という短い期間の議論で作成されており、国民の理解を得ることは困難です。これまでの「福島第一原子力発電所の事故を踏まえて原子力の依存度をできるだけ低減させる」方針から「原発の新設・リプレースを含め原発を最大限活用する」方針へ転換されていますが、どこがそうした決定をしたのかも不明確であり、総じて福島第一原発事故を教訓とした内容にはなっていません。
 短期間での議論で拙速な結論を出すのではなく、この間の議論のプロセスなど、原子力政策について国民が検討するのに必要な情報の提供と丁寧な説明を求めます。
 加えて、改めて各方面からのヒアリングを行い、国民参加の議論の機会と、国民の意見をもっと取り入れる政策決定プロセスを設け、原子力政策の検討を継続することを求めます。

「GX実現に向けた基本方針」に対する意見

提出先:経済産業省産業技術環境局環境政策課パブリックコメント担当

【意見1】

(該当箇所)本指針全体について

(意見)
 既設原発の運転期間延長と次世代革新炉の新設・リプレースについては1年程度の時間をかけ、国民参加で十分に議論した上、結論を出すことを求めます

(理由)
 福島第一原子力発電所の事故以降、原子力政策は国民のエネルギーに対する最大の関心事ですが、原発のエネルギー利用に関しては、国民の間に大きな理解の隔たりがあります。
 「GX実現に向けた基本方針」(案)では原発の再稼働のほか、「将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設」「原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果が高い電源を最大限活用する」など、原子力を持続的に活用するための原発推進の項目が並んでいます。
 今回の「GX実現に向けた基本方針」(案)は、同時に意見を募集している資源エネルギー庁の「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」とともに、国民的議論が進んでいない中で、4ケ月という短い期間の議論で作成されており、国民の理解を得ることは困難です。これまでの「福島第一原子力発電所の事故を踏まえて原子力の依存度をできるだけ低減させる」方針から「原発の新設・リプレースを含め原発を最大限活用する」方針へ大きく転換されていますが、どこがそうした決定をしたのかも不明確であり、総じて福島第一原発事故を教訓とした内容にはなっていません。
 短期間での議論で拙速な結論を出すのではなく、この間の議論のプロセスなど、原子力政策について国民が検討するのに必要な情報の提供と丁寧な説明を求めます。
 加えて、改めて各方面からのヒアリングを行い、国民参加の議論の機会と、国民の意見をもっと取り入れる政策決定プロセスを設け、原子力政策の検討を継続することを求めます。

【意見2】

(該当箇所)P6、2.(2).3)、原子力の活用

(意見)
 安全性への懸念や放射性廃棄物の最終処分等の問題について解決の見通しを立てることこそ先決で、既存原発の運転期間延長、次世代革新炉の新設・リプレースは実施すべきではありません。

(理由)
 原発については老朽化による安全性への不安、緊急停止時の代替電源確保の問題、使用済み核燃料はじめ今後増えてくる廃炉における放射性廃棄物の処分問題、安全対策費などの発電コスト上昇など課題の多さを鑑みれば、既存原発の運転期間延長及び、新型炉開発といった政策はとるべきではありません。

参考資料(全国消団連の会員団体が発出した関連意見)

  1. 全大阪消費者団体連絡会
    次世代革新炉の開発、建設」の検討の撤回を求める要請書
  2. 主婦連合会の声明 「原子力発電所の再稼働及び新設に断固反対します」
    〜原発推進から、再生可能エネルギーを最優先させる政策への転換を求めます〜

【意見3】

(該当箇所)P5、2.(2).2).再生可能エネルギーの主力電源化

(意見)
 気候危機回避には2030年までの温室効果ガス削減が重要であり、再生可能エネルギーの主力電源化の取り組みを加速させ、その電源構成を50%まで高めることを求めます

(理由)
 (タイトル副題の)〜今後10年を見据えたロードマップ〜 を考えるにあたり、今回示されている様々な施策の中で、国の再生可能エネルギーの最大限導入の方針のもと、再生可能エネルギーはすでに既存技術の社会実装が進んでおり、さらに次世代に向けた技術開発によりGXに最大限寄与できると考えます。
 再生可能エネルギーの普及・拡大は、CO2排出削減のみならず、エネルギー自給率向上や将来的な発電コストの低減、化石燃料価格高騰やエネルギー安全保障への対策、レジリエンス強化といった多くのメリットも追求できます。

高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)に対する
科学的・技術的意見

提出先:原子力規制庁原子力規制部原子力規制企画課宛

【意見】

(該当箇所)本文5〜6行目

(意見)
 福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて原子力規制法に盛り込まれた、既存原発の運転期間の定めを原則40年とする規定を変更するべきではありません。

(理由)
 今回示された(案)は運転期間に関する制度を改正する方針を受けて提案されましたが、既存原発の運転期間の延長の判断を推進側である利用省庁に中立的な判断は期待できません。中立した立場の原子力規制委員会が科学的判断に基づいて運転延長を判断する状況が確保される必要があります。

「原子力利用に関する基本的考え方」改定に向けた意見

提出先:内閣府 原子力政策担当室

【意見】

(該当箇所)P13、3、3.2、(3)着実な軽水炉利用に向けた取組
P14、3、3.2、(4)革新炉開発・利用に向けた取組

(意見)
 これまでの原子力政策を大きな方向転換することとなる、既設原発の運転期間延長と次世代革新炉の導入については1年程度の時間をかけ、国民参加の議論の上、結論を出すことを求めます

(理由)
 福島第一原子力発電所の事故以降、原子力政策は国民のエネルギーに対する最大の関心事ですが、原発のエネルギー利用に関しては、国民の間に大きな理解の隔たりがあります。
 今回と時期を同じくして意見募集されている「GX実現に向けた基本方針」(案)および「今後の原子力政策の方向性と行動指針」(案)はいずれも、国民的議論が進んでいない中で、4ケ月という短い期間の議論で作成されており、国民の理解を得ることは困難です。既存原発の運転期間延長、次世代革新炉の新設・リプレースを含め原発を最大限活用する方向へ大きく方針が転換されており、総じて福島第一原発事故を教訓とした内容にはなっていません。
 「原子力利用に関する基本的な考え方」についても拙速に改定を進めるのではなく、まずはこの間の議論のプロセスなど、原子力政策について国民が検討するのに必要な情報の提供と丁寧な説明、国民参加の議論の機会を設けて原子力政策の検討を継続し、判断することを求めます。