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「2022年3月の東日本における電力需給ひっ迫に係る検証取りまとめ(案)」
に対する意見を提出しました

 2022年3月に東日本において発生した電力需給ひっ迫について、その背景と要因、需給ひっ迫への対応状況についての検証、今後の対応策について総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会にて検討し、まとめられた「2022年3月の東日本における電力需給ひっ迫に係る検証取りまとめ(案)」に対し、全国消団連では、このうち今後の対応策に注目し、6月27日に以下の意見を提出いたしました。

[意見1]

・該当箇所

 Ⅱ(3)今回の需給ひっ迫の要因に対する評価と対策の方向性(P39)

・意見内容

 資源価格に左右されない再生可能エネルギーの普及に、今こそ力を入れてください。

・理由

 今回の電力需給ひっ迫の検証として、P34、35において電力需給状況の構造的変化が示されています。3.11以降の原子力発電所の順次停止後、急激に火力発電の割合が増えてきましたが、設備の老朽化やカーボンニュートラルに向けた政策の転換などによる撤退が、今般の供給力不足の要因とされています。また、今般のウクライナ情勢や円安などの影響によりLNGや石油などの資源価格も急上昇し、さらに供給が厳しくなると見込まれるため、火力発電依存を脱却し再生可能エネルギーの利用・普及を促進するべきです。なお、原子力発電所の再稼働や小型原子力の開発などに期待する声も聞かれていますが、使用済み核燃料の処分問題に道筋がつかないことや、福島第一原発の事故から10年以上が経過した現在においても廃炉の道筋が見えていないなか、安易な原子力回帰をするべきではないと考えます。

[意見2]

・該当箇所

 Ⅲ(2)①経済ディマンド・リスポンス(DR)導入促進に向けた対策の検討(P42,43)

・意見内容

 経済ディマンド・リスポンス(以下、DR)の早期の導入を促してください。また低圧需要家の消費者へもDRへの参加を促すためのわかりやすい情報提供を実施してください。

・理由

 今回の需給ひっ迫の際、多くの小売電気事業者はDRの実施を検討しておらず、消費者への情報提供も不十分でした。ただ、今回においては、産業、オフィス、家庭(以下、需要家)の協力もあり、なんとかひっ迫を回避できましたが、需要家への節電の協力を求めるだけでは限界があります。今後の夏冬の需給のひっ迫がわかっている今、DRを早期に導入するとともに、導入に際してはその内容と、取り組むことで生じるメリット等(取り組まないことで考えられるデメリット含む)をわかりやすく提示することで、継続した取り組みにつなげていくことが重要です。またインセンティブ供与は更なるエネルギー効率利用にもつながり、有効な取り組みです。小売り電気事業者や産業界だけでなく、低圧需要家の消費者にも具体的でわかりやすい情報提供が必要です。

[意見3]

・該当箇所

 Ⅲ(2)②産業、オフィス、家庭等の場面ごとに、ひっ迫度合いに応じた個別的な節電行動様式の提示(P44,45)

・意見内容

 個別的な節電の取り組みと効果を示す際には、需要家の誰もが無理なく出来る行動様式とすることを求めます。

・理由

 これまでの節電・省エネルギーの取り組みにおいては、我慢するという受け止めが強くありますが、それだけでは継続は困難です。需給ひっ迫が見込まれる時期は猛暑、あるいは厳冬といった厳しい時期が多く、無理な取り組みによっては、身体・生命への悪影響を及ぼしかねません。新たな知見も含め、具体的な取り組み事例とその効果について提示することで、時節やひっ迫の状況に応じて産業、オフィス、家庭のそれぞれがどのような取り組みに協力できるかを選択・実施することができれば、単に我慢するよりも取り組みの効果を上げることができると期待します。また、これらを通じてカーボンニュートラルへの貢献にも繋げることができます。

[意見4]

・該当箇所

 Ⅲ(3)①需給ひっ迫に関する情報発信時期の方法の見直し(P48,49)

・意見内容

 情報発信時期の見直しや、段階的な情報発信への見直しについては評価します。見直しの詳細について、早期に、需要家へのわかりやすい周知を求めます。

・理由

 準備情報、注意報など余裕を持った情報提供は、国民が対処する時間や、DRに取り組むための準備、事前に蓄電によるピークシフトなど、需要家の積極的な取り組みにつながり、大変重要です。ただ、それぞれの情報の意味や緊急度、どのように取り組みに協力したらより効果的か、などが正しく具体的に周知されなければ、行動にはつながりません。また情報の一部のみが伝えられ、いたずらに不安をあおることになってはなりません。51ページに提案されている「でんき予報の表示の見直し」とともに、情報の意味や活用など正確な情報提供を早期に行う必要があります。広く的確に情報が行き渡るように、省庁間や自治体と連携し、メディアやSNSも積極的に活用して、より迅速に周知を進めることが必要です。

[意見5]

・該当箇所

 Ⅲ(3)③でんき予報の表示の見直し(P51,52)

・意見内容

 わかりやすい表示への見直しについては評価します。見直しの詳細について、早期の周知を求めます。

・理由

 産業、オフィス、家庭にとっての大きな関心事である、電力使用率の表示が最大で100%になったこと、また100%の場合には、加えて停電の可能性の表記がなされることは重要です。このような重要な情報の意味とその入手方法については、48ページに提案されている「需給ひっ迫に関する情報の発信時期」と合わせて、正確な情報提供を早期に行う必要があります。広く情報が行き渡るように、省庁間や自治体が連携し、メディアやSNSも活用して、周知を加速させていく必要があります。

[意見6]

・該当箇所

 Ⅲ(4)②投資環境の整備 a)脱炭素オークションにおける新設火力の対象化の検討(P57)

・意見内容

 2050年まで稼働が見込まれる新設火力発電所の脱炭素化は絶対条件であり、2050年までの脱炭素化が確実に達成出来る見込みがない限り対象化とするべきではありません。

・理由

 火力発電所の新設は化石燃料の利用継続につながり、エネルギー安全保障やカーボンニュートラルの達成の観点などから得策ではないと考えます。2050年まで稼働の継続が見込まれる新設の火力発電所については、安定供給の面からやむを得ない場合であってもカーボンニュートラル達成のためには2050年までの脱炭素化は絶対条件でなくてはならず、その達成が確実に見込まれない限り認めるべきではありません。