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「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための
民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」の
成立にあたっての声明を提出いたしました

 5月25日「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」が成立いたしました。

 全国消団連では、成立にあたって以下の声明を提出いたしました。

(宛先)衆議院・参議院 消費者問題に関する特別委員会委員、消費者担当大臣、消費者庁長官、
消費者委員会委員長、国民生活センター理事長

2022年5月25日

「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」の成立にあたっての声明

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

 2022年5月25日、参議院本会議にて「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」が全会一致で可決成立いたしました。法律の成立にあたり、衆議院・参議院 消費者問題に関する特別委員会の皆様、消費者庁など関係各位のご尽力に深く感謝いたします。

 消費者契約法の改正においては、消費者庁にて平成30年改正時の附帯決議を踏まえ、「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」にて7カ月、その後「消費者契約に関する検討会」にて1年9カ月と長期にわたり検討され、報告書にまとめられました。今回、取消権をはじめ、報告書の内容に基づいた十分な法改正が出来なかったことは大変残念です。今後の法改正においては、その基となる検討会報告書を尊重した内容とすることを強く要望します。ただ、今国会での衆議院、参議院の附帯決議においては、今後に向けて明確に課題を示していただきました。消費者庁はこの附帯決議を真摯に受け止め、内容に沿って対応することを求めます。

 全国消団連では、特に以下の点について、要望します。

 消費者契約法については、附帯決議に示されたとおり、既存の枠組みに捉われない抜本的かつ網羅的なルール設定の在り方についての検討を、直ちに開始することを求めます。これまでの改正においては、特定の場面を限定した取消権の追加が措置されてきましたが、要件が狭く、すき間をすり抜ける悪質な事案が起き続けています。また、社会のデジタル化や超高齢社会の進展、成年年齢引き下げなど、消費者をとりまく情勢は大きく変化しています。これらを踏まえ、消費者と事業者間のあらゆる契約を対象とした包括的な民事ルールを規定するものであることに立ち返り、契約締結時以外への適用場面の拡大や、損害賠償請求権の導入、平均的損害額の立証責任の転換など、あらゆる角度から検討を進めることが必要です。

 また、今回改正には至りませんでしたが、判断力の低下した消費者に対して現在や将来の生活に著しい支障が出るような契約を故意に締結させる事案は、大変悪質な行為です。この事案については、国民生活センターからも注意喚起がされるなど、現に被害が起きており、今後も同様の被害が起こることを危惧しています。検討会報告書ではある程度要件は明確に示されるなど、論議の到達点は他と異なっており、抜本的な見直しとは別に、喫緊の課題として契約の取消などの早急な救済措置を要望します。

 消費者裁判手続特例法については、消費者被害回復のために消費者団体訴訟制度をより使いやすくする観点から、検討会報告書に沿った法改正となり、前進したことを評価します。今後は法改正に沿った実効性のある制度の整備を急ぐとともに、検討会報告書で将来的な課題となった点や衆議院、参議院の附帯決議の内容について、引き続き検討していくことを要望します。さらに、消費者団体訴訟制度をはじめとした民事訴訟手続では、被害回復に限界があり、悪質な事業者による多数消費者被害を回復するには、早期かつ広範に被害情報を探知できる行政的手法についての検討を進めることを要望します。

 消費者契約法も消費者裁判手続特例法も、消費者と事業者との契約の規範を示し、消費者被害の防止や救済をするうえで、大変重要な法律です。全国消団連は、高齢者や成年年齢引き下げによる若者をはじめ、脆弱な消費者の権利を守り、利益を確保するために、全国の消費者団体や各関係者と協力しながら制度整備の取り組みを進め、安心して安全に生活できる社会を目指していきます。

以上