[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


「契約書面等の電子化に関する政省令策定についての意見」を提出しました

 昨年の通常国会にて、特定商取引法と預託法を改正する法案「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」が可決・成立しました。契約書面等の電子化については、附帯決議の内容に沿い、消費者庁の「特定商取引法等の書面の電子化に関する検討会(以下、検討会)」の下、ワーキングチーム会合で、電磁的方法による提供が可能な場合の、「消費者からの承諾の取り方」「電磁的方法による提供の在り方」などについて、さまざまな団体のヒアリングが行われました。

 今後、検討会にてヒアリングがとりまとめられ、政省令策定に向けた検討が行われる予定です。

 政省令の検討にあたり、全国消団連では、4月14日に以下の意見を「消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、独立行政法人国民生活センター理事長、特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会委員」に提出いたしました。

2022年4月14日

契約書面等の電子化に関する政省令策定についての意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

 昨年の通常国会にて、特定商取引法と預託法を改正する法案「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」が可決・成立しました。契約書面等の電子化については、附帯決議の内容に沿い、消費者庁の「特定商取引法等の書面の電子化に関する検討会」の下、ワーキングチーム会合でさまざまな団体のヒアリングが行われ、全国消団連も対応しました。今後、検討会にてヒアリングがとりまとめられ、政省令策定に向けた検討が行われていく予定です。

 政省令策定の検討にあたり、以下の通り意見を申し述べます。

①真意に基づく「承諾」を確保する方法

 「承諾」が真意に基づくものであることを確保するため、以下の事項を政省令に定めることを求めます。

1.事業者は、契約書等の交付について、紙が原則であることを遵守するとともに、その旨の説明義務を課すことを求めます。また、契約書面等の電磁的方法による交付は、消費者から請求された場合に限ることとしてください

理由)契約書面等の交付は、紙で行うことが原則となっています。この原則を事業者はしっかりと認識し、遵守することが必要です。あわせて、消費者においてもこの原則についてしっかりと認識をする必要があるため、事業者にその旨を説明する義務を課す必要があります。 この原則に基づくと、事業者から電磁的方法で契約書面等を交付できることを、積極的に勧めてはならないことも示す必要があり、消費者から契約書面等を電磁的方法で交付してほしいと請求された場合に限り、消費者の適応性を確認した上で電磁的交付を可能とする必要があります。

2.事業者は、消費者に契約書面等の重要性や契約期間中の保管、クーリング・オフの起算日、クーリング・オフの手続きの方法等の重要事項の説明を義務付けることを求めます

理由)事業者は契約における重要事項については、契約締結前に消費者に説明をする必要があります。特にクーリング・オフについては、契約後に考える時間として設けられている消費者の権利であり、起算日や手続き方法などを丁寧に説明する必要があります。附帯決議の中でも、「電磁的方法で提供されるものが契約内容を記した重要なものであることや契約書面等を受け取った時点がクーリング・オフの起算点となることを書面等により明示的に示す」とされていますので、重要事項の説明を義務付ける必要があります。

3.真意に基づく承諾を確認する「電子交付の承諾の控え」の紙(複写)を消費者へ手渡し、または郵送することを求めます

理由)電磁的方法での交付を、消費者の真意に基づく承諾として確保するためには、その旨を確認する「電子交付の承諾の控え」のを紙で取り交わし、双方(複写含む)がその記録を所持しておく必要があります。

4.契約書等を受け取る消費者において、電磁的方法による交付が可能な機器やインターネット回線などの環境が整備されており、かつ送受信・保存等の電磁的交付の適応性があるかを事前に確認することを求めます

理由)消費者がパソコン機器を所持・使用し、なおかつインターネットやメールツールが使える状態にあることが前提として必要です。契約書面全体を見るためには、画面の小さなスマートフォンやタブレットは適しません。更にパソコン機器を持っていてもOSやブラウザ、メールツール等のソフトウェアなどがアップデートされていない場合は環境整備が整っているとは言えず、電磁的交付に適さないと考えます。 これらの条件が整ったうえで、メール送受信や保存等、本人のパソコンスキルについての適応性の確認が必要です。具体的には、事前にテストメールを送り、メールの受信が行われたか、添付したPDFファイルの資料を閲覧し保存ができたか、などの確認を行い、これらの操作が行えた旨を消費者から返信することで、適応性の確認をする必要があります。

②電子データの提供方法について

 契約書面等を電磁的交付により提供する具体的な方法について、以下の事項を政省令に定めることを求めます。

1.適応性の確認(テストメール)時に利用したメールアドレスを使うことを求めます

理由)事前に適応性を確認したメールアドレスとは別のメールアドレスを使用すると、受け取れない不具合や、メールの見落としなどが生じる可能性が高まりますので、適応性を確認したメールアドレス以外では送受信をしないようにする必要があります。

2.件名を明確に伝え、送付メールに契約書等をPDFファイルで添付し、メール本文に契約した商品や、内容、代金、クーリング・オフの起算日など、契約書等の概要を記載することを求めます

理由)フィッシング詐欺などの詐欺メールが横行している中において、まずは送られたメールが何に関してのものかを把握できるよう、メールの件名を明確にするとともに、契約書等の概要が本文で分かるように記載することが必要です。 また、適応性の確認を行ったとおりに契約書面等をPDFファイルで添付することに限定し、リンクするURLからダウンロードする方法などその他の方法で行うことは認めないようにする必要があります。

3.電磁的交付による契約書等のPDF ファイルを閲覧し保存できた旨について、消費者からの返信によって確認し、この確認を持ってクーリング・オフの起算点とすることを求めます

理由)適応性の確認を行ったメールでは届いた場合でも、契約書面等を添付したメール自体が届かない場合や、添付されたPDFファイルの契約書等が閲覧できない場合も考えられます。そのため、事業者は、消費者が契約書を閲覧し保存できたことを確認することが必要です。クーリング・オフの起算点は、契約書面を受け取った時点ですので、消費者がメールを受信し、添付された契約書の閲覧や保存をした旨の確認を行った時点としてください。消費者から閲覧・保存した旨の返信がない場合には、到達したとみなさず、紙の交付に変更する必要があります。

③取引類型の例外対応について

1.【特定継続的役務提供】において、そのサービスがオンライン完結で行われる場合において、消費者から契約書面等の交付を請求された場合に限り、オンライン上での手続きを進めることを認めます

理由)オンライン完結型の特定継続的役務提供においては、消費者の利便性にも配慮し、契約書面等の電磁的方法による交付について、@〜Aの諸手続きをオンラインで行うことを認めますが、その場合においても、消費者から請求された場合に限るとする基本的な考え方を基に進める必要があります。また、オンライン上においても、適応性の確認や、真意に基づく「承諾」、契約書面等の重要事項の説明、クーリング・オフの起算日の説明などについては、実施する必要があります。

以上