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2020年度冬期の電力需給ひっ迫・市場価格高騰に係る
検証中間取りまとめ(案)及び一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則
の一部を改正する省令案等の概要に対する意見を提出しました

 2021年1月、日本卸電力取引所(略称:JEPX)の電力取引価格が一時的に高騰したことにより、電力自由化を受け新規参入した新電力と呼ばれる小売事業者の一部が導入している市場連動型料金プランによる電気料金高騰が問題になっています。中間とりまとめ(案)にもあるように、この原因にはいくつかの要因が重なったことがあります。そして高騰した電気料金を負担した事業者から、一部の送配電事業者に多くの利益が還元され、その利益を電気料金の一部(託送料金)と相殺する省令案が検討されています。

 電力市場が未成熟であったために価格が高騰し、健全な市場であることを前提に選択をした一部の消費者に過大な負担がかかる可能性のあること、一部の送配電事業者が得た多大な利益が公平な形で還元されない提案がされていること、また、今後の電力自由化および再生可能エネルギー普及が阻害されかねない内容も一部盛り込まれていることから、全国消団連として意見書を提出しました。

2021年5月28日

提出先 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部
電力産業・市場室/電力基盤整備課

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

2020 年度冬期の電力需給ひっ迫・市場価格高騰に係る
検証中間取りまとめ(案)及び一般送配電事業託送供給等約款料金算定
規則の一部を改正する省令案等の概要に対する意見

・該当箇所1
U.政府、電力広域機関及び事業者の対応
(2)市場価格高騰を踏まえた対応
③新電力への資金繰り支援等(P48)

・意見内容1
 今回の市場高騰に伴い影響のあった小売電気事業者や市場連動型の電気料金メニューを選択する事業者等に対して、インバランス料金の延納、貸付によらない資金支援策も実施してください。

・理由1
 今回の市場高騰は市場の未整備等によるところが大きく、中小の新電力事業者や市場連動型の電気料金メニューを選択する事業者等には経営的に非常に大きな影響を与え、その影響は電気料金となって一般消費者にも及んでいます。インバランス料金の延納や貸付は、一時的な対処療法に過ぎず、消費者が負担する電気料金支払いが繰り延べされるだけです。
 現在、中間とりまとめでは市場高騰後に送配電事業者が得た大量の余剰利益を、過去の送配電の赤字の解消にあて、残りを託送料金に合わせて配分するという論議がされていますが、託送料金はそもそも送配電のネットワークに要する費用として限定すべきであり、発電・買取(需給調整)のためのインバランス料金とは異なるものです。この返金配分は、高額なインバランス料金を支払った事業者に配分し、高額な電気料金を支払った(または支払う)消費者に還元すべきと考えます。

・該当箇所2
V.今般の事象の評価と電力システム上の課題
(2)市場価格の高騰に係る評価及び電力システム上の課題
②市場価格の高騰に係る評価を踏まえた電力システム上の課題について(P56)

・意見内容2
 発電原価から大きく乖離した市場価格の高騰を止める仕組みづくりを求めます。

・理由2
 消費者は健全な市場の下で電力自由化が進んでいることを前提として選択をしています。しかし、今回の市場高騰により、電力市場における入札価格決定システムに欠陥があることが判明しました。そもそも電力価格は発電原価から大きくかけ離れた金額になるべきではないと考えます。そうでなければ、最終的に料金を支払う消費者が実質的な電力価格より高い負担を強いられることになります。電気料金は公共性の高い料金であることから、一部の事業者に多くの余剰利益を還元する電力システムの仕組みは、制度改革の主旨を大きく逸脱するものです。

・該当箇所3
W.今後の対策
(3)構造的課題への対策
④信頼される市場環境の整備(P87)

・意見内容3
 信頼性の高い電力システムの市場を構築するため、旧一電の独占状態を解消し、公平公正、透明性の高い卸売・小売取引ができるよう市場整備を進めてください。

・理由3
 今回の市場高騰によって、最終的に利益を得た事業者は旧一電送配電事業者だと思料します。市場高騰の発生リスクが大きいままでは、新電力事業者の経営を危うくするとともに、再生可能エネルギー利用(または選択)による普及への大きな阻害要因となります。信頼性が高く効率的な電力システムを実現していく上で、発電と送配電を併せ持ち電力売買に特権をもつ旧一電事業者の利益還元構造を解消し、公正な競争環境が確保できる自由で透明性のある市場メカニズムを整備、構築する必要があります。