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「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき
事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を
図るために必要な指針(案)」意見を提出しました

 2006年に公益通報者保護法が施行され、2020年6月の通常国会にて初めての改正が行われ、公布から2年以内に施行されることとなっています。本改正では事業者(従業員数が300人以下の中小事業者では努力義務)に対し、内部通報の受付業務や通報対象事実の調査業務及び是正に必要な措置をとる業務に従事する者(公益通報対応業務従事者)を定める義務、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等の義務が課されました。

 これらの規定に基づき、事業者がとるべき措置に関しては、「指針」を定めることとし、消費者庁では、2020年10月より「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会」を開催し、2021年4月に報告書が公表されました。

 この報告書を踏まえ、「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(案)」を策定するとともに、「指針の解説」(事業者が指針に沿った対応をとるに当たり参考となる考え方、想定される具体的取組事項等を示す解説。民間事業者向けガイドラインに記載の事項も原則として記載)を作成する予定としています。

 現在、本指針案に関する意見募集が行われています(締め切り5月31日まで)。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235030040&Mode=0

 全国消団連では、以下の意見を5月17日に提出いたしました。

2021年5月17日

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき
事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を
図るために必要な指針(案)」等に関する意見

1.(意見の対象)

「指針の解説」全般について

(意見の内容)
今回の内部公益通報対応体制の整備に関する指針と共に、「指針の解説」として、これまで事業者が活用していた「民間事業者向けガイドライン」の事項も記載をしてまとめられるとのことですが、通報者の保護を主体に考えた具体的でわかりやすい内容にしてください。

(意見の理由)
公益通報者保護法は、事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、通報者が安心して通報を行いやすく、通報者がより保護されやすくする視点で2020年に改正されました。「民間事業者向けガイドライン」も10年以上に渡り、事業者が自主的に取り組むことができるよう、具体化・明確化してきた内容ですので、通報者保護の水準を後退することなく、通報者の保護を主体に考え具体的な事例なども示しながら、わかりやすい内容で記載してください。

2.(意見の対象)

p2 第4 1.(1) 内部公益通報受付窓口の設置等

(意見の内容)
内部公益通報受付窓口を「人事部門に設置することが妨げられるものではないが〜留意する必要がある」と報告書(p7)にありますが、そもそも人事権限を有する人事部門に内部公益通報受付窓口を置くことは、独立性の観点からも避けるべきであると「指針の解説」に記載すべきです。

(意見の理由)
人事部門に内部公益通報をすることを躊躇する者が存在し、通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることにも留意する必要があると報告書にもあります。また、人事権限の有する人事部門は不利益取り扱いの実施主体になりうる可能性もあります。内部公益通報窓口の独立性の観点からも、人事権限を有する人事部門と通報窓口は切り離すべきです。

3.(意見の対象)

p2 第4 1.(4) 公益通報対応業務における利益相反の排除に関する措置

(意見の内容)
顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とすることで通報を躊躇する者が存在し、留意する必要があるとしながら、顧問弁護士を内部通報受付窓口にする場合の望ましいあり方の記載が報告書(p11)にありますが、顧問弁護士の内部公益通報受付窓口は適さないと「指針の解説」に記載するべきです。

(意見の理由)
会社の顧問弁護士は経営陣との関係が強いのが通例であり、社員にも同じように認識されています。「(2) 組織の長その他幹部からの独立性の確保に関する措置」としても、安心して通報できるためには、窓口に対する信頼が重要になります。仮に明示され、通報先を選択に資する情報提供がなされたとしても、通報者が躊躇するような通報受付窓口の設置は避けるべきです。顧問弁護士の内部通報受付窓口は適切ではありません。

4.(意見の対象)

p3 第4 2.(1) 不利益な取扱いの防止に関する措置

(意見の内容)
イ 事業者の労働者及び役員等が不利益な取扱いを行うことを防ぐための措置をとるとともに〜の「不利益な取り扱い」の前に、「通報者に対し」と加筆するべきです。

(意見の理由)
労働者・役員等が通報者として不利益取り扱いを受けることもあるため、主体と客体の関係をより明確に表記することで文章の意味を正確に伝えることができるので修正をしてください。

5.(意見の対象)

p3 第4 2.(1) 不利益な取扱いの防止に関する措置

(意見の内容)
不利益な取り扱いを受けていないかを把握する措置として、公益通報者に対し通報後一定期間経過後に、内部通報受付窓口側から能動的に不利益取り扱いの有無を確認するべきであると「指針の解説」に記載するべきです。

(意見の理由)
報告書(p11)では、能動的な確認と事前の教示が同時に示されていますが、仮に事前に何かあったら連絡するように言っていたとしても、通報者が不利益取り扱いを受けた時点で、通報者において窓口からの情報漏洩等が一因ではないかと考え、窓口に連絡しない可能性があります。このように、不利益取り扱いを受けた通報者は、窓口への信頼を喪失している可能性があるため、一定期間後には窓口側から能動的に確認し、仮に信頼を失っているのであれば窓口からの漏洩でないこと等を説明、信頼回復のための措置等を取ったうえで不利益取り扱いの情報収集を行うべきです。したがって能動的な確認については強く推奨する記載にするべきです。

6.(意見の対象)

p3 第4 2.(1) 不利益な取扱いの防止に関する措置

(意見の内容)
指針の内容についての説明が不足しています。 不利益な取り扱いを行った労働者及び役員等に対する懲戒処分は、懲戒権限を行使する者が通報者に対して懲戒処分等の不利益な取り扱いを行った者と同一となる可能性があるので、その場合は、別途に適正な懲戒処分が行われているのか、客観的に審査等が行う機関を設置すべきであることを「指針の解説」に追加するべきです。

(意見の理由)
指針の、「ロ 不利益な取扱いが行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる」の解説がありません。通報者に対しての懲戒処分等の不利益取り扱いを行った労働者ないし役員等が、自分に対して懲戒処分することは困難です。従って、このような場合に備えて、別途に適正な懲戒処分が行われているのか、客観的に審査等を行う機関を設置しておくべきであり、そのことを、全労働者及び役員等に周知しておくことで、通報者の信頼を確保するべきであると考えます。

7.(意見の対象)

p3 第4 3.(1) 労働者及び役員並びに退職者に対する教育・周知に関する措置

(意見の内容)
公益通報者保護法及び内部公益通報対応体制の従業員の周知・教育は重要です。公益通報者保護法の意義や役割、そのための事業者として身に着けるべき内容について、座学による教育だけではなく、実践形式での訓練を行うなど、対応力の向上に資する取り組みをすべきであることを「指針の解説」に記載するべきです。

(意見の理由)
企業には内部通報により事業者の不祥事を自らが是正することが求められています。従業員への実践形式での訓練を含めた教育・訓練による対応力の向上と共に、取締役等の経営陣の意識改革も重要になります。公益通報者保護法の理解促進のために、従業員の周知や対応力の向上に資する教育の在り方など、をより詳細に示してください。

以上