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「エネルギー基本計画の策定に向けた意見」を提出しました

 エネルギー基本計画は、中長期的なエネルギー政策の基本的な方向性を示すためにエネルギー政策基本法に基づき政府が策定するもので、おおむね3年ごとに改定されています。

 次期(第6次)計画策定の検討が、昨年より経済産業省 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で始まっています。これに合わせ全国消団連では、エネルギー政策についての知識を深め、エネルギー基本計画見直しにむけて、意見提出・要請活動を強く推し進めるため、2月9日には学習会を開催しました。

 このたび、エネルギー基本計画の策定に向けて全国消団連としての意見をまとめ、2月22日に提出しました。

2021年2月22日

提出先:経済産業大臣、資源エネルギー庁長官、
総合資源エネルギー調査会基本政策分科会長、環境大臣

エネルギー基本計画の策定に向けた意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

 気候変動はすでに生態系、人々の生計に影響を及ぼしています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年度にまとめた「1.5℃特別報告書」では、パリ協定で目標を超えて追求された、地球温暖化を1.5℃に抑制することは不可能ではないと提起しています。

 日本では2020年12月に菅首相の「2050年カーボンニュートラル*1」宣言を受け、エネルギー基本計画の策定は重要課題になると考えます。事業者と消費者がともに目標に向けた歩みを進めることが必要です。

 第6次エネルギー基本計画の策定にあたり、消費者団体として以下の意見を申し述べます。

1.省エネルギー推進のための施策を強化し、エネルギー使用量の大幅削減をめざす計画を求めます。

 近年の日本国内のエネルギー消費は人口減もあって低減してきています。また、コロナ禍により人や物の移動が抑制された経験を踏まえれば、将来的にもコロナ以前のような規模で人・物流の移動は行われなくなると想定されます。エネルギー計画の策定にあたっては、大幅な使用量の削減を念頭にした施策を盛り込むことを求めます。産業界へは一層の省エネルギー化を促進する施策の追加、消費者へは電力・エネルギーに関する情報提供を行い、省エネルギーの取組みについての理解と消費行動変化を促してください。消費者が参加できるデマンドレスポンス*2などの仕組み導入も検討すべきです。

2.再生可能エネルギーの導入を最大限活用するための施策を実施し、2030年までに電力の50%以上の導入をめざし主力電源化を求めます。

 太陽光発電の活用を進めるために発電設備や配送電設備の拡充など事業者への支援を進めるとともに、風力・水力・地熱・バイオマスなどの多様な再生可能エネルギーを大量導入できるようにする施策が必要です。再生可能エネルギーの普及・拡大は、エネルギー自給率向上や将来的な発電コストの低減、化石燃料輸送費用の削減などコスト面でのメリットも追求できます。また、地域分散型のエネルギー開発も進めてください。

 IPCC「1.5℃特別報告書」では、地球温暖化1.5℃抑制をするシナリオとして、2030年の時点で世界の電力の48%から60%を再生可能エネルギーで供給することを想定しています。これに対し、政府が昨年12月25日に公表した「グリーン成長戦略」での2050年における電源構成比率案(参考値)は、「自然エネルギー5〜6割、原子力と火力で3〜4割、水素とアンモニアで1割」となっており、国際的にみれば再生可能エネルギーの占める割合は20年遅い目標であると考えます。

3.脱炭素化の取組みを強化する経済的な施策および電源開発を求めます。

 脱炭素化を促進するために、カーボンプライシング*3などの経済的手法を積極的に採用すべきです。環境に関わる税制の見直し、温室効果ガスを排出しない商品やサービスの開発・普及を促進し、消費者が利用しやすい環境整備を求めます。なお、制度設計にあたっては透明性を確保することが必要です。

 また、石炭火力発電は大量の窒素酸化物(NOx)と二酸化炭素(CO2)を排出します。「グリーン成長戦略」では、石炭火力発電にアンモニア混焼普及などの取組みを示唆していますが、脱炭素化を加速するには障害となることが予想されます。世界的には石炭火力発電等への投資撤退が進んでいることから石炭火力発電所の新設を停止し、フェーズアウトする計画を立てるべきです。また、海外への技術支援に基づく石炭火力発電所の建設もやめるべきです。石炭火力発電の代替電源として、天然ガス、グリーン水素(脱CO2)、アンモニア(専焼)の利活用に向け、これらの技術開発を促進させていくべきです。

4.原子力発電の目標を見直し、「2030年代の原発稼働ゼロ」に向けた工程計画を求めます。

 「グリーン成長戦略」では、原子力発電の小型炉(SMR)、高温ガス炉とも2030年から2050年にかけて販路拡大を続ける内容となっています。国内では福島原発の廃炉作業が計画通り進んでおらず、廃炉費用の電気料金加算(託送料金)も行われており、コスト的にも国民負担が増加しています。また2030年から2050年の間に稼働年数40年を迎える既存原発が多くあり、原発の再稼働にも国民の理解が得られているとは言えない現状があります。今後は原発の新設計画を取りやめ、フェーズアウトする計画を立てるべきです。

5.消費者の選択によって脱炭素、再生可能エネルギー導入を推進する仕組みの強化を求めます。

 小売電気事業者ごとの電源構成開示の義務化やカーボンプライシングなどの施策によって、消費者が温室効果ガス排出ゼロ、再生可能エネルギー利用促進に向けた脱炭素型の商品・サービスを選択できるようにすることが必要です。特に電力においては、再生可能エネルギーの発電、取引を行う新電力事業者への支援を進め、電力の自由化推進と消費者の選択肢を増やすことを求めます。

6.次世代消費者のエネルギー基本計画への論議や実行参画を求めます。

 第5次エネルギー基本計画には国のみがエネルギー基本計画の責任を負うべきではなく、さまざまな主体がエネルギー政策に関与することが明記されています。第6次エネルギー基本計画の策定にあたり、消費者が策定論議に参加、提言できるよう、論議予定や経過を明らかにするとともに、意見交換会などの場を設けることを求めます。特に、2050年代を担う若い世代の論議への参画を保証すべきです。

以上

用語解説

*1 カーボンニュートラル
ライフサイクルの中で、二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロのことを言う。例えば、植物の成長過程における光合成による二酸化炭素の吸収量と、植物の焼却による二酸化炭素の排出量が相殺され、実際に大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えないようにすること。

*2 デマンドレスポンス
時間帯別に電気料金設定を行う、ピーク時に使用を控えた消費者に対し対価を支払うなどの方法で、電力の使用抑制を促し、ピーク時の電力消費を抑え、電力の安定供給を図る仕組みのこと。これにより需要者側が電力システムに参画できる。

*3 カーボンプライシング
二酸化炭素など地球温暖化につながる温暖化ガスの排出量に価格を付ける仕組みをさす。燃料ごとのCO2排出量は使用量やそれによる発熱量などを掛け合わせる各国共通の計算式で算出する。排出量が多いほど支払う対価も高くなり、排出抑制の動機づけとなる。企業は対策を講じて排出量を減らすか、排出の対価を支払うかを選ぶことになる。