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「ビジネスと人権」に関する行動計画の原案
に対する意見を提出しました

 2011年に国連人権理事会で「国連ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されました。その後、国連ビジネスと人権に関する作業部会の勧告を受け、2013年以降、20ヶ国以上がビジネスと人権のための国別行動計画 (National Action Plan:NAP) を起草し、採択しています。

 日本は、G7のなかで国別行動計画を策定していない少数の国のひとつでしたが、「ビジネスと人権に関する行動計画に係る諮問委員会」が外務省に設けられ、2020年1月に「『ビジネスと人権』に関する行動計画」(原案)が示されました。2020年半ばまでに最終決定及び採択の予定とされ、2月17日よりパブコメ募集が開始されています。

 全国消団連は、3月16日以下の項目について、意見を提出いたしました。

提出先:外務省総合外交政策局人権人道課パブリックコメント担当

「ビジネスと人権」に関する行動計画の原案に対する意見

[意見1](該当箇所:全体)

・意見内容
 「ビジネスと人権」に関する行動計画に関わる企業の取り組みについて、企業からの積極的な情報発信を求めます。

・理由
 消費者が人権に配慮した適切な消費行動を行うためには、判断の拠り所となる根拠ある情報の開示が重要です。その一歩として、企業自らが人権方針や実施計画、人権デュー・ディリジェンス等、「ビジネスと人権」に関する行動計画に関わる取り組みを、統合報告書やサスティナビリティレポート、ホームページ等で発信および報告することを求めます。

[意見2](該当箇所:第1章,第2章,第4章)
 P4.第1章.3.(2)、P6.第2章、p20.第4章.1

・意見内容
 行動計画の確実な実施のために、関係省庁間の連携だけでなく、各施策の担当省庁を明確化してください。

・理由
 NAP(国別行動計画)の実効性を確保するために、政府として責任を持って関係省庁・地方公共団体を含めた「政策の一貫性」を確保するとともに、各施策に対して、誰が責任を持って担当・遂行するのかを明確にしてください。

[意見3](該当箇所:第2章)
 P8.第2章.2.イ

・意見内容
 分野別行動計画の「子どもの権利の保護・促進」について、「子どもの権利とビジネス原則」の10原則を網羅する形で具体的措置を明記してください。

・理由
 分野別行動計画の「子どもの権利の保護・促進」には、ユニセフ・国連グローバルコンパクト・セーブザチルドレンが策定した「子どもの権利とビジネス原則(10原則)」のうち「原則2:児童労働」の点のみ記載されています。子どもが企業活動によって受ける負の影響を捉え、10原則を網羅する形で具体的措置を明記してください。

[意見4](該当箇所:第2章)
 P10.第2章.2.エ

・意見内容
 分野別行動計画の「消費者の権利・役割」に、消費者の権利を担保する観点から「消費者関連法の整備」を加筆してください。

・理由
 消費者分野の取り組みとして、原案では具体的な措置として、「エシカル消費の普及・啓発」「消費者志向経営の促進」「消費者教育の推進」が掲げられていますが、これだけにとどまらず、消費者の権利を担保する観点から「消費者関連法の整備」を加筆してください。
 なお、製品・食品の安全、契約・取引に関する問題だけでなく、プライバシー侵害、ジェンダー差別、ネット上の人権侵害、フェイクニュース、若年層の性的搾取なども市民・消費者の権利に関わる課題と捉えるべきであり、これらに対しても政府は積極的に法整備を行うことを求めます。

[意見5](該当箇所:全体)
 P20.第3章.2

・意見内容
 政府から企業に対する期待として、「人権を担保するための法整備への協力」を加筆してください。

・理由
 今日の企業活動は、労働、消費など市民の生活のあらゆる面に深く関係しており、企業活動の影響も、国内と国外を問わず極めて広範囲に及んでいます。人権侵害を受ける当事者は一人ひとりの市民や消費者であり、あらゆる人々がビジネスによる人権侵害から保護されなければなりません。企業や下請事業者、サプライヤー等の事業活動において人権が尊重され得るかどうかの鍵を握っているのは、資金を融通する投資家と、商品やサービスを購入する私たち消費者に他なりません。しかし、現状消費者政策は十分機能しているとは言い難く、消費者被害や消費者への不利益は依然として多く発生しています。
 また、近年のデジタライゼーションにおいて個人データの活用が促進され、消費者個人は、利益を享受すると同時に負の影響としてプライバシー侵害の問題にさらされています。
 こうした状況の改善が急務ですが、消費者契約法や公益通報者保護法など、消費者の権利を担保する重要な法改正・法整備は遅れている状況です。その一因は、個別の消費者関連法の法整備に対して、事業者団体が反対している点にあると考えます。
 ついては政府から企業に対する期待として、原案に「また、日本企業が効果的な苦情処理の仕組みを通じて、問題解決を期待する」という一文がありますが、「効果的な苦情処理の仕組み」に加えて、「人権を担保するための法整備への協力」を加筆してください。

[意見6](該当箇所:第4章,その他)
 P20.第4章

・意見内容
 外務省ホームページなどに、消費者・事業者・行政でグッドプラクティスを共有できるような仕組みを設けることを求めます。

・理由
 行動計画への理解を深め、実践につなげていくには見える化が必要です。旗振り役である外務省のホームページ等にグッドプラクティスを共有できるような仕組みを設けることを求めます。

[意見7](該当箇所:第4章)
 P20.第4章.3

・意見内容
 行動計画の検証・評価のため、各施策についての客観的な評価指標と具体的なKPIを設定してください。

・理由
フォローアップ策として、毎年度進捗を確認し、また5年後の改正の予定が明記されていますが、計画のブラッシュアップのためには、検証・評価を適切に行うための客観的な評価指標と具体的なKPIの設定が必要です。