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「(株)かんぽ生命保険の不適正な保険契約に関する意見」
を提出いたしました

 (株)かんぽ生命の保険商品の不適正な保険募集について、金融庁は(株)かんぽ生命、日本郵便(株)、日本郵政(株)に対して、総務省は日本郵便(株)、日本郵政(株)に対して各々行政処分を行いました(2019年12月27日)。

 「保険の乗り換えで不利益を被った」「半年以上にわたり保険料を二重払いしていた」などの消費者被害が、郵便局、郵貯という、特にお年寄りにとっては安心できる機関という信頼感を逆手にとって引き起こされたことは大きな問題です。

 全国消団連では、1月20日に以下の意見書を『(株)かんぽ生命、日本郵政(株)、日本郵便(株)、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長』に提出いたしました。

2020年1月20日

(株)かんぽ生命保険の不適正な保険契約に関する意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

 (株)かんぽ生命の保険商品の不適正な保険募集について、金融庁は(株)かんぽ生命、日本郵便(株)、日本郵政(株)に対して、総務省は日本郵便(株)、日本郵政(株)に対して各々行政処分を行いました(2019年12月27日)。

 (株)かんぽ生命の契約数は2000万件に近く、社内調査によれば、顧客に不利益な疑いがある保険契約は5年間(2014年〜2018年)で、18万3000件にのぼります。また、新聞報道では、契約者の意向と合っていないと回答された契約は25万件あるとされています。

 「保険の乗り換えで不利益を被った」「半年以上にわたり保険料を二重払いしていた」などの消費者被害が、郵便局、郵貯という、特にお年寄りにとっては安心できる機関という信頼感を逆手にとって引き起こされたことは大きな問題です。問題の早期解決、そしてこのような不祥事を二度と起こさないために、下記の申し入れを行うものです。

 今回の事態を踏まえ、日本郵政グループ3社に対し、以下の対応を求めます。

〇(株)かんぽ生命、日本郵政(株)、日本郵便(株)に、内部管理態勢(ガバナンス)機能の強化とコンプライアンスの徹底を求めます。また、今回の保険契約の復元などにおいては、顧客の負担にならない対応を求めます。

 不適正な募集行為の拡大という事態を招いた要因として、過剰なノルマが営業職員や窓口に課せられていたことなどが挙げられています。金融庁では態勢上の問題として、「過度な営業推進態勢」「コンプライアンス・顧客保護の意識を欠いた組織風土」「脆弱な募集管理態勢」「ガバナンスの機能不全」を指摘しています。

 2014年の保険業法改正では、保険会社に加え、保険募集人の「体制整備義務」が導入されていました。しかし、今回の不祥事を見るかぎり、まったく機能していなかったと言わざるを得ません。むしろ、郵便局、郵貯という、特にお年寄りにとっては安心できる機関という信頼感を逆手にとってこのような事態を引き起こしたことは悪質です。

 (株)かんぽ生命、日本郵便(株)、日本郵政(株)に対し、消費者(顧客)の声を反映させ、ガバナンスの強化やコンプライアンスの徹底など改善に向けた検討を尽くすこと、健全な体制の構築を図ることを求めます。

 なお、今回の顧客対応に関して、顧客にとって不利な保険契約への乗り換え、保険料の二重払い、顧客のニーズに即していない保険契約などについては、以前の契約へ復元することが考えられます。しかし実際には、解約返戻金や未払い保険料の扱いなど複雑であり、復元が容易ではない場合もあります。そうした場合には顧客のニーズに即した保険契約になるよう、新しい保険に契約し直すなど、顧客にとって負担の少ないより簡易な方法を検討することを求めます。

 また、今回の事態は、消費者庁の所管する法律改正の必要性を示していると考えられることから、消費者庁に対し以下の対応を求めます。

〇消費者庁に、「つけ込み型勧誘」への取消権の導入を含む、消費者契約法の早期改正を求めます。

 2014年の保険業法改正により、「適合性の原則」が導入され、事業者には「意向把握義務」が課されました。「顧客ニーズの把握及び当該ニーズに即した商品の提案の義務づけ」がなされましたが、今回の件は、この遵守が図られていないことに加え、被害救済のための民事ルールが不足していることを示しています。

 今回の事案を見ると、高齢者等の知識や判断力不足に乗じた勧誘・契約が行われており、典型的な「つけこみ型勧誘」と言えます。今後このような事案が生じたときに速やかな対応が図られるよう、今回の被害事例・類型の把握を行うとともに、「つけ込み型勧誘」への取消権を消費者契約法に取り込むべきです。

 消費者庁では2019年に「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」を開催し、同研究会報告書ではつけ込み型不当勧誘について「消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して勧誘する行為」と整理しています。現在、消費者契約法の次回改正に向けて「消費者契約に関する検討会」が始まっていますが、検討を急ぎ、「つけ込み型勧誘」への取消権の導入を含む消費者契約法改正が早期に実現することを求めます。

〇消費者庁に、公益通報者保護法の今通常国会での改正と、事業者の内部通報体制整備の実効性確保策の検討を求めます。

 公益通報者保護法は、内部告発(公益通報)をした労働者を保護することにより、公益を図るための内部告発を確保し、企業不祥事による国民の被害拡大を防ぐことを目的としています。しかし、平成18年4月に施行されて以降、法施行後5年をめどに見直しを行う旨が附則に記載されていたにも関わらず、これまで抜本的な法改正は行われていません。

 2019年12月に公表された「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会」調査報告書によると、今回、日本郵政グループにおいて内部通報制度があったにも関わらず、かんぽ生命保険商品の募集に係る内部通報はほとんどなされていなかったことが明らかになっています。ついては、公益通報者保護法をより利用者に使いやすいもの、通報が機能し業務改善に結びつくものとすることが必要と考えます。今通常国会にて、内閣府消費者委員会 公益通報者保護専門調査会報告書で合意された内容に沿った形で法改正が行われることを求めます。

 なお、現在の公益通報者保護法においては、通報者はまず事業者内部に通報することが保護要件とされ、消費者委員会専門調査会でも事業者に内部通報体制整備義務を課すことが検討されていますが、今回の事案は、通報内容がトップに適時に報告され改善対応がされる等の実質が伴っていなければ、実効性がないことを示しています。消費者庁に対して、法改正とともに、事業者の内部通報体制整備が機能しているかを第三者にチェックさせる仕組みを導入するなど、実効性確保策をセットで検討することを求めます。

以上