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「第4期消費者基本計画(案)」に関する意見を提出しました

 2020年度から5年間の消費者政策の重点をまとめた「第4期消費者基本計画(案)」について、消費者庁が意見募集を行っています(締切:1月23日)。

 全国消団連ではこれまで第4期消費者基本計画について、2019年1月に検討会報告書が公表された、消費者庁「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」に委員参加したほか、2019年9月2日「第4期消費者基本計画の構成(案)」に関する意見を提出、2019年12月17日「目指す社会をみんなで描こう〜第4期消費者基本計画意見交換会〜」を消費者庁・内藤消費者政策課長を講師に開催いたしました。

 それらの意見を基に、全国消団連では、2020年1月16日に以下の意見を提出いたしました。

 全国消団連の会員団体でも以下の通り意見書を提出いたしました。

東京消費者団体連絡センター

神奈川県消費者団体連絡会

全大阪消費者団体連絡会

全国消費生活相談員協会

日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会

主婦連合会

日本生協連

日本司法書士会連合会

2020年1月16日

「第4期消費者基本計画(案)」に関する意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

 「第4期消費者基本計画(案)」について以下の通り意見を申し述べます。

1.消費者基本計画は消費者の安全・安心のために必要な施策がカバーされるべきものであり、消費者行政や消費者庁の現状の体制・力量に制約されないものとすべきです。(全般)

 消費者基本計画は、消費者政策推進の基盤となる大変重要な計画ですが、今回の「第4期消費者基本計画(案)」では、以下記述するように、「着実な法整備」「すき間事案への対応」「地方消費者行政や適格消費者団体への財政支援」などについて、きわめて不十分な記述となっています。しかしこれらの課題への対応こそ、「消費者行政の司令塔」として消費者庁に期待されるものです。

 消費者庁の「司令塔としての役割」は消費者政策推進の根幹であり、「司令塔」には消費者課題を全方位的に見渡しつつ、個別事案にも柔軟かつ速やかに対処できる機能・能力が必要だと考えます。この両面が重要であり、計画策定にあたっては、重点を絞るという考え方もありますが、「消費者基本計画は政府全体の消費者政策に関する計画であり、その推進において、消費者庁所管案件はもちろん、他省庁所管案件にも消費者視点で刺さりこんでいくのが消費者行政の司令塔として消費者庁に期待される役割である」という視点は欠けてはならないものだと考えます。

 計画全般を通じて、消費者庁の現状の体制・力量を前提とするのではなく、消費生活の安全・安心のために必要な施策がカバーされた内容としてください。

2.「これまでの取組における教訓と、消費者基本計画を遂行する上での課題の整理」の記述を加えてください。(第1章または第2章)

 第2章で「課題分析」として、今後の消費者政策の主要な課題について触れられていますが、その前に、まずはこれまでの消費者基本計画の策定や検証・評価・監視(PDCA)において、消費者庁が「消費者行政の司令塔」として他省庁等に対しできたこと、できなかったことの総括を加える必要があります。「これまでの取組における教訓と、消費者基本計画を遂行する上での課題の整理」を第1章または第2章の中で記述してください。

 消費者庁は設立以来、事務局の大半を他省庁や民間からの出向者に依拠する組織体制となっており、プロパー職員が占める比率は定員の2割弱です。職員の入れ替わりが多い現状を踏まえると、「引継書」的な意味からもこのことは重要であると考えます。

3.消費者行政のあり方を変えた歴史的出来事をこれまでの経緯に加筆してください。(第1章)

 第1章では消費者政策・消費者行政の歴史を振り返っていますが、食品安全委員会の設置(2003年)、消費者契約法改正による消費者団体訴訟制度の創設(2006年)、消費者安全調査委員会の設置(2012年)は、消費者行政のあり方を変えた歴史的出来事であり、加筆してください。

4.消費者委員会に関する記述を加筆してください。(第1章)

 第1章では消費者政策・消費者行政の歴史を振り返っていますが、「2.消費者庁・消費者委員会設置とその後10年間の消費者政策の展開」の本文は、実質的にほぼ消費者庁のことしか書かれておらず、消費者委員会の記述が不十分ですので、消費者委員会の意見・建議などの実績を加筆してください。

5.消費者被害の防止に関して、「厳格な法執行」に加え、「着実な法整備」の記述を加筆してください。(第3章2(1)①)

 昨年8月に意見募集が行われた「第4期消費者基本計画の構成(案)」には、「政策推進の基本的な方向」の中に「着実な法整備と執行力の強化」が位置づけられていましたが、今回の案では「着実な法整備」の記述が落ちています。消費者契約法や消費者裁判手続特例法など、法律の見直し期限が到来している課題があります。また、この間の預託商法被害の続発をふまえて預託法改正が検討されるべきです。特定商取引法についても、通信販売の定期購入をめぐる被害の多発に対応した法改正(民亊効の付与)や、被害実態をふまえた適用除外分野の見直しなども必要と考えます。このように法整備に係る課題は多く、「着実な法整備」の記述を加筆してください。

 あわせて、今回の案の第3章や第5章では、「消費者被害の防止」の記述はありますが、「救済」の観点が不足しており、追記を検討してください。

6.地方消費者行政の財政問題について、「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」「地方消費者行政強化作戦2020策定に関する懇談会」報告書を踏まえた記述を加筆してください。(第4章(3)および第5章5(3))

 消費者庁「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」報告書では、「地方の消費者行政の推進に必要な財源をどのように確保・充実していくのか、第4期消費者基本計画において検討する」とされ、「地方公共団体が一定期限までに安定的な地方の一般財源に裏付けられた消費者行政基盤を確立するための方策を講ずる」「専ら消費者行政関係施策に充てられる財源確保に向けて検討」が挙げられていました。

 また、消費者庁「地方消費者行政強化作戦2020策定に関する懇談会」報告書では、「国・地方公共団体共に必要な財源が確保されるよう取り組む必要がある」として、「消費者庁は、平成 30 年の消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議等も踏まえ、財政支援策の検討を進める」との記述も盛り込まれていました。

 消費者庁の役割として、自治体の自主財源確保を支援するだけでなく、上記の報告書を踏まえた記述を加筆してください。

7.いわゆる「すき間事案」に消費者庁が積極的に対応する旨の記述を加筆してください。(第4章(4))

 消費者庁「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」報告書では、「取引の多様化・複雑化等への迅速・的確な対応」の項で、「どの省庁等の所掌にも属さない事業・サービスに対しての積極的対応」が挙げられていました。

 これに対し、今回の案ではすき間事案への対応について、「事業者・事業者団体の自主規制に消費者行政の視点を反映する取組を進める」という記述にとどまっていますが、消費者庁が「消費者行政の司令塔」として、消費者安全法を活用して積極的に対応する旨も加筆してください。

8.「行政による経済的不利益賦課制度及び財産の隠匿・散逸防止策の具体化」を加筆してください。(第5章1(2)①)

 継続して事業を営む意思なく消費者と契約し金銭を詐取する類の被害は引き続き多発しています。このような事案の多くは、相手方の資産が押さえられないため民事的手続きでの被害回復が困難です。実効的な被害回復を図るには、行政による事業者の財産保全制度が重要です。消費者庁では「消費者の財産被害に係る行政手法研究会」(平成23年10月〜平成25年6月)で、行政による経済的不利益賦課制度及び財産の隠匿・散逸防止策についての検討も行われており、この具体化が必要です。このことも加筆してください。

9.「販売預託商法に対する規制強化のための法改正」を課題として明示してください。(第5章1(2)①)

 安愚楽牧場事件、ジャパンライフ事件、WILL事件と、悪質な「販売預託商法」による被害が続いています。現行法による規制及び事後的民事的方法では、被害の拡大防止や回復が著しく困難です。「いわゆる『販売預託商法』に関する消費者問題についての消費者委員会意見」(令和元年8月30日消費者委員会)でも提起されている通り、禁止行為の法定と民事効の付与、元本保証の禁止及び犯罪収益の没収、並びに参入規制導入の検討など、課題として法整備について明示することを強く求めます。

10.「適格消費者団体への財政支援」を加筆してください。(第5章1(4))

 今回の案では適格消費者団体への財政支援に関する記述としては、「団体を支援する民間基金の周知・広報」のみですが、適格消費者団体の公益的活動に対する国の財政支援の必要性については、消費者庁及び消費者委員会設置法の附則・附帯決議や、改正消費者契約法等の附帯決議にも位置付けられており、この具体化が必要です。また、地方公共団体による支援についても重要です。活動すればするほど財政が逼迫していく適格消費者団体の財政問題はきわめて深刻であり、これらの点を加筆してください。

11.「消費者団体の活性化・機能強化」について、より具体的に加筆してください。(第5章5(1))

 「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」報告書では、「消費者団体の活性化・機能強化」として、「今後は消費者団体の活性化と機能強化の両方を実現するために関係者が連携して対策を講ずる必要がある」「時代の状況に対応した消費者団体の活性化については、消費者団体と行政、事業者が連携して政策的に検討する場が必要である」と記述されており、この具体化に期待します。このことも今回の案に加筆してください。

以上