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「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を提出しました

 全国消団連「地方消費者行政プロジェクト」では、昨年に引き続き47都道府県に向けて消費者行政調査を行い、その調査結果と分析のまとめ速報を報告するシンポジウムを11月5日に開催いたしました。

 あわせて、以下の「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を提出いたしました。

<宛先>内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、財務大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長

2019年11月5日

地方消費者行政の充実・強化のための意見

(一社)全国消費者団体連絡会
地方消費者行政プロジェクト

 地方自治体の消費者行政は、地方消費者行政交付金によって消費生活相談体制の整備に進展がみられるものの、消費者教育、法執行、見守りネットワーク、消費者団体支援など、重要な課題が未だ対応不十分です。

 消費者のくらしの安全・安心を確保するために、消費者にとって最も身近な地方消費者行政の充実と強化は必須ですが、国の地方自治体支援策は後退の傾向が伺えます。

 全国消費者団体連絡会「地方消費者行政プロジェクト」では、地方消費者行政の取り組みの現状を把握するために、2019年度も47都道府県を対象に消費者行政調査を行いました。

 今回の調査により、昨年度と同様に地方消費者行政強化交付金の活用上の課題、地方自治体の消費者行政部門の自主財源確保の難しさなどの課題が継続して確認できました。また、消費者行政と福祉部門・教育部門との連携した取り組みをすすめるための課題や、法執行を強化するために必要な課題が浮かび上がりました。

 私たちは、全国の消費者・消費者団体と連携して地方消費者行政のさらなる拡充を求め、国及び地方自治体に対し、地方消費者行政の充実・強化の働きかけを強めます。

 以下は、今回の調査を踏まえた、当プロジェクトの提言です。

1.地方消費者行政強化交付金について、十分な予算確保をするとともに、事業メニューは自治体のニーズを把握し、活用しやすいものにしてください

 事業2年目となった2019年度消費者行政強化交付金の事業メニューのうち、今年度新しく加えられた「ギャンブル等依存症対策に係る取組」「高度情報化社会における消費生活相談対応の実施」事業は活用が少なく、1年目の活用で低調だった「原料原産地表示制度の普及・啓発」「公益通報者保護制度の推進」などの事業メニューでも状況は変わっていません。これは、自治体ニーズとのミスマッチや、事業を行うための自治体のマンパワーの不足等が推察されます。活用されていないメニューの実態把握を行い、次年度事業メニューを改善することを求めます。

 都道府県調査結果によれば、国に対する要望として、これまで整備してきた相談体制維持やさらなる地方消費者行政の充実・強化のため、交付金の総額確保を求める声や、交付率(補助率)の引上げ及び対象事業の拡大を望む声が多く出されています。消費者行政強化交付金に比べ、消費者行政推進交付金の方が利用度が圧倒的に高い状況は前年度同様変わっていません。自治体にとって活用しやすい交付金制度設計、予算確保をしてください。

2.消費生活相談員の質の高い相談体制のために、市町村支援、あっせんの促進、研修の充実のための施策と財政支援を求めます

 消費者相談の内容が多様化・高度化している中で、様々な相談への対応が求められる消費生活相談員にとっては、経験の積み重ねと共に専門知識が重要です。2019年4月より消費者安全法に基づく指定消費生活相談員制度の導入が開始されましたが、調査結果によれば、「指定消費生活相談員」という形での導入はしていないものの、別の仕組みで市町村支援を行っているところもありました。制度そのものにこだわることなく、経験豊富な相談員が実質的に市町村を支援する体制を作ることが重要であると考えます。

 また、相談員が消費者と事業者との間に立ち行うあっせんについては、相談員の知見や経験、対応能力の向上などが求められます。今回の調査結果では県ごとのあっせん率にかなりの開きがありました。あっせんの捉え方が統一されていないことも、あっせん率のバラつきや減少に影響を与えている可能性があります。あっせんの定義の明確化と標準的な苦情処理の在り方を示すことが消費者相談施策を発展させ、消費者にとっては公正な解決となることに繋がると考えます。

 国民生活センター企画の消費生活相談員の研修については、ニーズの高い研修は定員に達してしまい参加が困難、会場が遠方で参加しにくいという声もあります。地方の研修機会の提供や実施回数等の工夫、オンデマンドによる遠隔研修などの体制整備も必要です。また都道府県においては、相談員研修企画数やその充実などが求められ、そのための予算措置が必要です。

 以上のような点について、都道府県での取り組みを進めるとともに、国としても支援のための施策と交付金などを通じた財政支援を講じることが必要です。

3.消費者安全確保地域協議会や消費者教育の推進のための支援を求めます

 都道府県の消費者行政部門と福祉部門との連携した取り組みについて調査を行いましたが、情報提供としてのチラシ配付やメーリングリストでの情報提供、啓発講座の講師派遣など、高齢者・障がい者・児童福祉部門や社会福祉協議会などとの一定の情報交換を行っていることが把握できました。しかし、これらの福祉部門も多忙のため、職員不足や時間確保が難しく連携できない、働きかけを行うも福祉部門の理解が得られない、担当部局が細分化されているために調整が困難であるなどの課題も見られました。

 消費者行政部門と教育部門との連携した取り組みでも、教育委員会や小中学校、高校、大学などに様々な情報発信は行っていますが、教育部門も多忙であることや学校プログラムに消費者教育を含めることの難しさ、教育委員会との連携などの課題が見られます。

 自治体がこうした現状を打開できるよう、様々な消費者被害を防止し、高齢者や障がい者を地域の中で見守る消費者安全確保地域協議会を設置するための支援を国に要望します。また、成年年齢引き下げに対応して、消費者教育推進のためのコーディネーターを設置することが重要ですが、都道府県からは、厳しい県財政の中で予算確保が困難であり、10割の交付金を望む声も寄せられています。若年層を対象にした消費者教育の促進のため、そのノウハウの提供と財政支援を行ってください。

4.消費者行政職員の研修を充実させ、地方消費者行政の法執行の体制強化等のための支援を求めます

 消費者行政に携わる職員研修も強化する必要があります。消費者相談の受付を起点に、被害防止や消費者啓発・教育、事業者指導・法執行につなげていくためには、消費者行政特有の感性に優れた職員の存在は不可欠です。

 消費者行政・消費者問題等の専門的な知識を身につけるためには、消費者行政の職員の研修参加が不可欠と考えますが、今回の調査では職員の研修参加は十分でないことがわかりました。国による研修機会の充実、研修参加の促進と、多忙を極める消費者行政職員が研修に参加しやすくなるための環境整備、交付金などによる財政支援が必要です。

 法執行業務は、刑事捜査にも似た証拠収集作業と事実認定に基づく判断を行う業務で、通常の行政事務とは大きく異なる、高度で特殊な専門性が必要です。悪質業者を対象とすることが多い特定商取引法の執行では、警察関係者を加えた複数の職員がチームを組んで取り組むことが望ましいと考えます。法執行の特殊性を踏まえた一層きめ細かな専門性向上策が課題で、消費者庁での法執行研修や情報共有の強化が必要です。

5.消費者庁は地方消費者行政の充実強化のために、働きかけを強化してください

 消費者庁では、昨年度より「キャラバン隊」を組織して各自治体の首長に対して消費者行政の強化を促していますが、地方消費者行政強化作戦で目標としている項目において、なお未達成項目を残しています。強化作戦の達成を目指して、消費者庁は地方自治体への働きかけを強化してください。

 また、「キャラバン隊」の取り組みによって、自治体の自主財源確保が進んだのか、検証を行ってください。

 なお、消費者庁は2019年5月より「地方消費者行政強化作戦2020策定に関する懇談会」を設け、9月に報告書を公表しました。2020年度からの新・強化作戦の政策目標については、消費者庁原案に書かれた目標に加え、「⑤特定適格消費者団体、適格消費者団体、消費者団体の活動の充実」「⑥法執行体制の充実」が追記されました。また、「強化作戦の推進方策」の項において、「消費者庁は、平成30年の消費者契約法の一部を改正する法律案に対する附帯決議等も踏まえ、財政支援策の検討を進める」旨が明記されました。新・強化作戦の政策目標が達成されるよう、これらの施策の実現もあわせて求めます。

以上