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消費者契約法改正に向けた
専門技術的側面の研究会報告書に関する意見提出

 消費者契約法は2018年の通常国会で第2次改正が行われ、「消費者の不安をあおる商法」等、消費者トラブルが増加している勧誘行為についての取消権が新設されるなどしましたが、一方で「つけ込み型勧誘に対する取消権」や「平均的損害額の推定規定」などの論点については、次回改正への積み残しとなりました。

 消費者庁では、平成31年2月から「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」を開催し、令和元年9月に報告書が取りまとめられました。現在、パブリックコメントが募集されています。(締め切り:10月9日)
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235030036&Mode=0

 全国消団連では、10月2日に以下の内容で提出をしました。

2019年10月2日

消費者契約法改正に向けた
専門技術的側面の研究会報告書に関する意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

【対象】

 1 いわゆる「つけ込み型」勧誘について
 (1)【考え方Ⅰ】消費者の判断力に着目した規定

【意見内容】

 消費者の判断力に着目した規定を設けることに賛成ですが、「親族等の適当な第三者が、契約の締結に同席するなどの一定の関与をした場合には、これを考慮して取消しの可否が決まるような規律を設ける」という構成には反対します。また、「消費者の生計に著しい支障」という要件を置くことで、このことが過剰に問われることになると問題です。なお、規定を設ける優先度としては、不当な勧誘行為全般に対する包括規定の方が高いと考えます。

【理由】

 現況でも、認知症高齢者などの消費者トラブルは深刻な状況となっています。高齢者単独世帯や認知症高齢者の増加が予測されている中、判断力低下につけ込んだ契約を取消できるようにすることは焦眉の課題です。しかし、「親族等の適当な第三者が、契約の締結に同席するなどの一定の関与をした場合には、これを考慮して取消しの可否が決まるような規律を設ける」ことによって、事業者に悪用されることがあってはなりません。第三者としてどのような人物を想定しているのか不明であり、当事者とその第三者との関係性もあり、単に同席だけで取消し可否とするような法律の組み立てには反対です。また、「消費者の生計に著しい支障」が要件となることについては、消費者契約において「消費者の生計に『著しい』支障」まで生じることはまれであり、そもそも判断力低下につけ込まれたことと当該契約が生計に支障をきたすことは本来無関係です。このことが過剰に問われ、救済範囲が狭まるようなことになれば問題です。

【対象】

 (2)【考え方Ⅱ】「浅慮」、「幻惑」という心理状態に着目した規定

【意見内容】

 「浅慮」、「幻惑」という心理状態に着目した規定を設けることに賛成です。ただし、規定を設ける優先度としては、不当な勧誘行為全般に対する包括規定の方が高いと考えます。

【理由】

 「浅慮」、「幻惑」という心理状態に着目した規定を設けることにより、消費者の救済範囲が現行法より拡大すると考えられるため、賛成です。ただし、「浅慮」については「検討時間」が考慮要素とされていますが、検討時間が一定あったとしても事業者の情報提供のしかた等によって消費者が本来不要な契約をしてしまうことはありうるわけで、この規定だけでなく、本来は不当な勧誘行為に対する包括規定を置く必要があります。

【対象】

 (3)【考え方Ⅲ】困惑類型の包括的規定

【意見内容】

 困惑類型の包括的規定を設けることに賛成です。ただし、困惑類型のみならず、誤認類型や判断能力低下ケースなども含む、不当な勧誘行為全般に対する包括規定を設けることを求めます。

【理由】

 消費者契約法はそもそも消費者契約の幅広いトラブルの解決に資する包括的民事ルールであり、あるべき消費者契約の姿(規範)を示す役割を負っているものです。これまでの法改正で、被害が増えている案件に対応した個別類型の規定を置き、それぞれに対処をしてきましたが、被害の後追いで措置されるということでは、本来求められる役割を十分果たしていないと考えます。消費者契約法は、不当な契約条項についての包括規定を第10条で規定しています。不当な勧誘行為についても、消費者の被害救済のために、困惑類型をはじめ、誤認類型や判断能力低下ケースなども含む包括規定を設けるべきです。

【対象】

 2 平均的な損害の額の立証負担の軽減について

【意見内容】

 平均的な損害の額の立証負担の軽減について、示されている考え方(推定規定の創設、積極否認の特則、文書提出命令の特則、適格消費者団体による実体法上の資料提出請求権、事業者の自主的な取組を促すこと)にいずれも賛成です。ただし、これらの実効性確保には課題があると考えられ、加えて「平均的な損害の額」の立証責任の事業者への転換を求めます。

【理由】

 消費者契約において消費者と事業者のもつ情報量には格段の差があり、消費者が事業者の「平均的な損害の額」を立証することはそもそも困難です。しかし、現状では消費者が立証責任を負うこととされており、現行法9条1号は十分に機能していません。平均的な損害の額の立証負担の軽減について、示されている考え方には賛成ですが、例えば推定規定の創設については「同種の事業」を行っているかどうかの判断が難しく、2018年改正時にはこれらのことが要因となって立法化ができませんでした。これらの実効性確保には課題があると考えられ、むしろ「平均的な損害の額」の立証責任の事業者への転換が必要と考えます。そもそも、事業者が損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項を定める際には、合理的な根拠をもって「平均的な損害の額」を算定しておくことが当然期待されており、トラブルが起きた場合も算定根拠を示した説明が容易なはずです。

【対象】

 3 契約条項の事前開示及び消費者に対する情報提供について
 (1)契約条項の事前開示について

【意見内容】

 契約条項の事前開示についての規定を設けることに賛成です。

【理由】

 改正民法で定型約款が定義され、相手方の請求があった場合には条項準備者は定型約款の内容を示さなければならない規定が設けられました。これにより、事業者には「請求されなければ事前に開示する必要がない」という誤解を生ずる恐れがあります。また、この開示請求権を消費者が行使することは現実的には期待しがたいものです。こうした状況に対応するためには、消費者契約法において、一般的な情報提供の努力義務だけでなく、約款の事前開示に関する努力義務規定を置くべきです。そもそも消費者契約法では事業者の努力義務として、事業者が消費者契約の内容について必要な情報を消費者に提供する旨を定めており、「契約締結の前に、消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置く」ことを求めているにすぎず、事業者に過重な実務負担を求めるものではありません。

【対象】

 (2)消費者に対する情報提供について
 ア【考え方】年齢、財産の状況及び生活の状況と提供すべき情報の内容の関係性

【意見内容】

 年齢、財産の状況及び生活の状況と提供すべき情報の内容の関係性について、まずは取消権の創設に関する検討を行うことに賛成です。

【理由】

 消費者被害救済の実効性を確保する観点から、取消権の創設に関する検討を行うことに賛成です。

【対象】

 イ【考え方】解約料等に関する事項の情報提供の努力義務

【意見内容】

 情報提供の努力義務に関する規定を設けることに賛成です。

【理由】

 解約料等をめぐる消費者トラブルが増えていることに対し、事業者の対応を促す観点から、解約料等に関する事項の情報提供の努力義務に関する規定を設けることに賛成です。

以上