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消費者庁の「適格消費者団体及び特定適格消費者団体の
適正な業務運営を確保するための内閣府令(案)
及びガイドライン(案)」改訂に対し、声明を提出しました

 消費者庁は標記の意見募集を昨年8月16日より約1か月実施しました。改訂案として示された内容は、いずれも団体監督を厳格化する内容です。

 全国消団連では改訂に反対するパブリックコメントを提出するとともに、同内容のものを意見書として消費者担当大臣・消費者委員会委員長・国民生活センター理事長に送付しました。

 本改訂案は消費者団体訴訟制度の根幹に関わる(適格消費者団体に対して過剰な負荷を及ぼす)きわめて重要な内容であったことで、多数の消費者団体・適格消費者団体・専門家有志などから反対のパブリックコメントが出されたこともあり、当初の施行期日は10月15日とされていたものの、取り扱いは棚上げとなっていました。

 しかし、本年2月1日に消費者庁から最終的な改訂内容が示され、内閣府令改訂案は撤回されましたが、ガイドライン改訂案は一部撤回されたものの一部改訂内容は維持されました。

 本件について、これまで意見を提出してきた経緯から声明を提出することとし、2月22日に執行いたしました。

<宛先>内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長

2019年2月22日

消費者庁「適格消費者団体及び特定適格消費者団体の
適正な業務運営を確保するための内閣府令(案)
及びガイドライン(案)」改訂に対する声明

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
代表理事 (共同代表) 岩岡 宏保
代表理事 (共同代表) 長田 三紀
代表理事 (共同代表) 浦郷 由季

 消費者庁は、「適格消費者団体及び特定適格消費者団体の適正な業務運営を確保するための内閣府令(案)及びガイドライン(案)」改訂案に対する意見募集を2018年8月16日より約1か月実施しました。改訂案として示された内容は、いずれも団体監督を厳格化する内容です。

 本改訂案は消費者団体訴訟制度の根幹に関わる(適格消費者団体に対して過剰な負荷を及ぼす)きわめて重要な内容であったことで、多数の消費者団体・適格消費者団体・専門家有志などから反対のパブリックコメントが出されたこともあり、当初の施行期日は10月15日とされていたものの、取り扱いは棚上げとなっていました。しかし、本年2月1日に消費者庁から最終的な改訂内容が示され、内閣府令改訂案は撤回されましたが、ガイドライン改訂案は一部撤回されたものの一部改訂内容は維持されました。

 全国消団連では本件に関して、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長に2018年8月27日付で意見書を提出していましたが、あらためて、この改訂に対する意見を述べます。

1.今回消費者庁が改訂を提案したことに対し、以下の理由から遺憾の意を表します。

(1)総論として、今なぜこの改訂を行うのか、理由がありません。

 消費者団体訴訟制度の信頼性を確保することは重要ですが、すでに消費者契約法第13条第5 項にて適格認定を受けられない事由が定められており、従来の法規制のもとで適格消費者団体による不適切な権限行使などの問題は生じていません。今回の改訂案の内容についてはこれまで審議会等で議論になったこともなく、内閣府消費者委員会も意見を聴かれていない内容です。今回の改訂を行う必要はありません。

(2)団体役員に関する規定の新設について、現行消費者契約法で位置付けられている役員欠格事由が実質的に拡張されていることは問題であり、反対です。

 適格消費者団体に関しては、現行の消費者契約法第13条第5項にて適格認定を受けられない事由が定められており、役員欠格事由として六号イにて「禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律、消費者裁判手続特例法その他消費者の利益の擁護に関する法律で政令で定めるもの若しくはこれらの法律に基づく命令の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から三年を経過しない者」と規定されています。このように、消費者契約法における役員欠格事由はかなり悪質性の高いものに限定されています。

 一方、今回のガイドライン改訂における改訂原案では、特定商取引法にもとづく指示・業務停止命令、景品表示法に基づく措置命令及び食品表示法に基づく指示といった、刑事罰にまで至っていない行為(無過失の場合も含む)について行政処分を受けた事業者の役職員に関して行政命令の対象とする規定を新設し、内閣総理大臣(消費者庁)の適合命令により当該役員の解任を命ずることができる規定としていました。これに対して各団体からは、「本改正は団体の理事としての欠格事由を定めるに等しいものであり、法改正でなくガイドライン改訂で現行の法規定を過重することは問題」とする反対意見が多数出されました。最終的な改訂内容では、適合命令の対象ではなく改善命令の対象とし、内閣総理大臣(消費者庁)が改善命令において当該適格消費者団体に対し人的体制の改善を命ずることもできる形に修正されました。

 これは、役員の欠格事由を直接規定するものでないとはいえ、現行の役員欠格事由を実質的に拡張し、行政が人的体制の改善を命ずることもできるとする点では問題は変わっていません。

(3)事務所に関する規定の厳格化により、適格消費者団体が追加的な業務や財政負担を負わされることは問題であり、反対です。

 今回のガイドライン改訂により、適格消費者団体の事務所に関する規定が厳格化されました。

 適格消費者団体の事務所が事業者と混同されるものであってはならないとする趣旨には理解ができますが、このような規定が設けられたことで、適格消費者団体や適格消費者団体を目指している団体が事務所移転を強要されるなどして、既存の事務所改修や新規の事務所探しなどの追加的な業務を担わされたり財政負担が発生するようになることは問題です。

 このような対応を求めるのであれば、国は当該団体に対して、事務所改修費の手当てや消費生活センター等の公共施設の一角を事務所として提供するようにあっせんするなどの対応をセットで行うべきです。

2.あらためて全国の適格消費者団体に対する国の財政支援を求めます。

 前述の改訂が行われたことに加え、今回最終的には撤回されたものの、「2.適格消費者団体の認定」の「(3)体制及び業務規程」に、「適格消費者団体は過度に特定の事業者に依存することがないよう留意することが望ましい」という柱書の追加が提案されていました。

 しかし、そもそも消費者団体訴訟制度は国による財政支援も手当てされておらず、2018年度消費者庁により措置された「消費者トラブルの実態調査に関する適格消費者団体への委託事業」は、適格消費者団体への公益的活動に対する財政支援の第一歩ではありますが、適格消費者団体全体に届く措置ではありません。また、事業を受託している団体にとっても、団体財政を支えるほどの大きな規模ではありません。適格消費者団体が専門家等のボランタリズムに依拠した活動を余儀なくされている中、本来的には公益的活動に対する国の財政支援が行われるべきであり、このことは消費者庁及び消費者委員会設置法の附則・附帯決議や、改正消費者契約法等の附帯決議にも位置付けられているところであるものの、一向に実現していません。公的財政支援を拡充する中で特定事業者からの支援割合を低減させていくことが、求められる姿です。

 公的財政支援が実現せず、適格消費者団体を財政支援してくれるスポンサーなども現状ない中で、財政問題をはじめ適格消費者団体の組織運営の大変さを熟知しているはずの消費者庁が、代案もなくこのような形で団体監督を厳格化しようとしたことは遺憾です。

 改めて、消費者庁をはじめ国に対して、全国の適格消費者団体に対する財政支援を含め、公正な市場の実現に向けて公益的役割を担う適格消費者団体を育成・支援していく観点での施策を求めます。

以上