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「新たな遺伝子組換え表示制度に係る
食品表示基準一部改正(案)について」意見を提出しました

 2017年4月から消費者庁で「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が開催され、2018年3月に報告書が取りまとめられました。その内容を踏まえ、10月10日に「新たな遺伝子組換え表示制度に係る食品表示基準の一部改正(案)」が示され、意見募集が行われています。

 全国消団連では10月19日に意見を提出しました。

消費者庁食品表示企画課 意見募集担当者御中

「新たな遺伝子組換え表示制度に係る食品表示基準一部改正(案)について」

【氏  名】[一般社団法人 全国消費者団体連絡会]
【住  所】[〒102-0085 東京都千代田区六番町15プラザエフ6F]
【電話番号】[03-5216-6024]
【メールアドレス】[webmaster@shodanren.gr.jp]

【意見及びその理由】

 遺伝子組換え表示制度は、2001年4月から始まり、17年以上が経過しています。この間、遺伝子組換え食品のDNA等に関する分析技術の向上や、遺伝子組換え農産物の作付面積の増加による流通実態の変化など、様々な変化も起こってきました。遺伝子組換え表示制度は消費者の自主的かつ合理的な食品選択に資する制度であるという趣旨を踏まえ、2017年度に「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」にて、こうした状況を踏まえた検討が行われたことは意義のあることです。遺伝子組換え表示制度が消費者にとってより良いものとなるよう、以下の意見を申し述べます。

1.食品表示全体の優先順位を考え、見やすさ等考慮したバランスの取れた表示制度として下さい。

 この間、食品表示法改正やその後の制度改正で義務表示対象が増えていますが、「一括表示の中で安全性に係る表示が見にくくなるのではないか」という懸念の声があります。他方、食料自給率の低い日本では、遺伝子組換え作物を大量に輸入していますが、安全性評価および環境影響の評価を行い、認可された作物のみが流通しています。遺伝子組換え表示制度ができた当時と違い、その後食品安全基本法の制定や食品安全委員会の設置が行われるなど「食品の安全を確保する社会的なしくみ」が前進した点が大きな社会環境の変化として挙げられます。

 遺伝子組換え表示制度は消費者の自主的かつ合理的な食品選択に資する制度であるという趣旨を踏まえ、食品表示全体の中での優先順位を考え、見やすさ等考慮したバランスの取れた表示制度として下さい。

2.表示義務対象品目は、表示の正確性が担保できる検査手法が確立されれば品目ごとに義務表示を拡大して下さい。

 現在、表示義務対象品目については、表示の信頼性及び実行可能性の確保の観点から、加工後も組換えられたDNA又はこれによって生じたたんぱく質が検出可能なものに限定しており、現在の行政における監視指導は「社会的検証」と「科学的検証」を相互に組み合わせて実施されています。

 コーンフレーク・しょうゆ・油など、「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」で検討俎上にあがった品目群については今後も検査手法確立に向けた努力を重ね、新たに検査手法が確立されれば品目ごとに義務表示を拡大することを求めます。

3.「遺伝子組換えでない」という任意表示をするための要件について、厳格化することに賛成します。なお、改正案第三条2項に「遺伝子組換えの混入がないと認められる対象農産物を原材料とする場合に限り」、第十八条「遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる対象農産物である場合に限り」とありますが、どのような場合を「混入がないと認められる」とするのかを明確にすべきです。

 消費者の多くは、「遺伝子組換えでない」と書かれた商品には「遺伝子組換え原料」が含まれているとは思っておらず、実質誤認が生じています。したがって、「遺伝子組換えでない」表示をするための要件を厳格化することが重要です。

 そのうえで、「不検出」をどのような公定検査法に基づき判定するのかが今回の改正案の根幹となるべきです。公定検査法は現在検討されている途中とのことですが、誰が対応しても同様の結果が出るのか、サンプルのばらつきにより結果差が出るのではないか、原材料にさかのぼって検査するのか、等の論点があります。まずこの方法を明確にすることが、消費者の誤認を防ぎ、表示の正確性を担保する上で不可欠であり、意見募集を行う前提になるべきと考えます。

 また、「不検出」と「意図せざる混入率5%」との間の範囲の表示方法については、消費者が理解しやすいものにしてください。

4.食品表示についてのリテラシーを高める取り組みに加え、食品安全に関するリスクコミニケーションをさらに推進してください。

 消費者庁の「平成29年度食品表示に関する消費者意向調査」によれば、

  • 食品表示法が施行されたことを認知している人は全体で16.9%(食品表示についての理解があり、かつ新しい制度となったことを知っている人は24.7%)
  • 「分別生産流通管理が行われた非遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品については、遺伝子組換えに関する表示義務はない」と「遺伝子組換え不分別」とは遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物を分別せず流通管理していることをいう」の正答率はそれぞれ9.8%と11.2%にとどまっている。

という結果が示されており、消費者の食品表示法への理解は十分でないことがわかります。加えて、食品衛生法など、食品の安全を確保する社会的なしくみについても十分な理解がなく、漠然とした不安を抱いていることが考えられます。

 このような状況を踏まえ、国は食品表示と食品安全に関するリスクコミニケーションをさらに推進すべきです。食品表示については、遺伝子組換え表示制度に限らず、食品表示制度全般の普及啓発活動を積極的に行ってください。

以上