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「消費者契約法の一部を改正する法律案」
に対する意見を提出しました

 昨今、加齢や認知症等の影響により判断力が低下した高齢者を狙った悪質な訪問販売や電話勧誘販売によって、高齢者が不本意な契約を締結してしまうトラブルが増加しています。また、マルチ商法など若年成人の契約トラブルも引き続き深刻な状況です。

 こうした状況に対し、平成28年通常国会において消費者契約法の一部改正が行われましたが、いくつかの論点が法改正に至らず積み残しとなりました。また、現在成年年齢の引き下げを盛り込んだ民法改正が検討されており、実現した場合に18・19歳の未成年者取消権が喪失されることから、若年成人の消費者被害のさらなる増大が懸念されます。高齢化や高度情報化が進展する中、高齢者や若年成人等の消費者被害を防止・救済する上では、合理的判断が働かない状態で締結された契約の取消権を拡大する等の実効的な法制度の整備が必要です。

 全国消団連では、今般閣議決定された「消費者契約法の一部を改正する法律案」に対する意見を提出いたしました。

衆議院・参議院消費者問題特別委員会委員長、各党消費者問題特別委員会委員
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官、消費者委員会委員長、に提出

2018年3月20日

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
代表理事 (共同代表) 岩岡 宏保
代表理事 (共同代表) 長田 三紀
代表理事 (共同代表) 浦郷 由季

「消費者契約法の一部を改正する法律案」に対する意見

 昨今、加齢や認知症等の影響により判断力が低下した高齢者を狙った悪質な訪問販売や電話勧誘販売によって、高齢者が不本意な契約を締結してしまうトラブルが増加しています。また、マルチ商法など若年成人の契約トラブルも引き続き深刻な状況です。

 こうした状況に対し、平成28年通常国会において消費者契約法の一部改正が行われましたが、いくつかの論点が法改正に至らず積み残しとなりました。また、現在成年年齢の引き下げを盛り込んだ民法改正が検討されており、実現した場合に18・19歳の未成年者取消権が喪失されることから、若年成人の消費者被害のさらなる増大が懸念されます。高齢化や高度情報化が進展する中、高齢者や若年成人等の消費者被害を防止・救済する上では、合理的判断が働かない状態で締結された契約の取消権を拡大する等の実効的な法制度の整備が必要です。

 今般閣議決定された「消費者契約法の一部を改正する法律案」について、以下意見を申し述べます。

1.本法律案の今通常国会での成立を求めます

 今回閣議決定された「消費者契約法の一部を改正する法律案」は、消費者被害の防止・救済の道を広げる内容であり、今通常国会での成立を強く求めます。

2.「つけ込み型勧誘への取消権付与」の論点に関して、法律案第4条3項三号・四号の「社会生活上の経験が乏しいことから、」という文言の削除を求めます

 今回の法改正で大変重要な論点である「つけ込み型勧誘への取消権付与」について、今回の法律案では「不安をあおる告知」「恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用」に対して措置がされています。

 これは、より一般的なつけ込み型勧誘への取消権規定を置くことにつながる一歩と考えられますが、条文案に「当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、」との文言が追加されています(第4条3項三号および四号)。これですと若年者層向けの規定に読まれ、消費生活センター等のあっせんの場などにおいて、高齢者層などの救済に制約的に働くことが懸念されます。

 この文言がなくても条文の趣旨が損なわれることはないと考えられることから、「社会生活上の経験が乏しいことから、」という文言の削除を求めます。

3.今後の課題として以下の対応を求めます

(1)「平均的損害額の立証に関する推定規定」の措置

 内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会報告書(平成29年度8月)で「措置すべき」とされた論点のうち、平均的損害額の立証に関する推定規定(*)が今回の法案に盛り込まれていません。消費者の立証負担を軽減する重要な規定であり、措置を求めます。

*「平均的な損害の額」に関し、消費者が「事業の内容が類似する同種の事業者に生ずべき平均的な損害の額」を立証した場合には、「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」と推定される旨の規定を設ける

(2)幅広い受け皿となる取消権として、より一般的な「つけ込み型勧誘への取消権」の措置

 消費者契約法はそもそも消費者契約の幅広いトラブルの解決に資する「包括的民事ルール」であり、あるべき消費者契約の姿(規範)を示す役割を負っているものです。前回(平成28年)改正や今回の改正案では、被害が増えている一部の案件を対象として要件を具体的に規定する改正となっていますが、包括的民事ルールという法律の性格からしても、幅広い消費者トラブル救済に資する規定が望まれます。

 たとえば認知症高齢者が認知症であることに事業者がつけ込んでトラブルとなったような事案の救済に資するためには、平成29年8月の消費者委員会答申書の付言に示されたように、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる「つけ込み型勧誘」の類型について、特に高齢者・若年成人・障害者等の知識・経験・判断力の不足を不当に利用し、過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合において消費者に取消権を付与することが必要です。こうした課題について速やかに検討を進め、法改正を実現されることを求めます。

4.今後の課題については附則・附帯決議に明示し、時限を区切って次の改正につなげていただくことを求めます

 成年年齢の引き下げを定める民法改正案が今通常国会に提出されていますが、2022年4月施行と言われています。今回の法案で手当てされる「不安をあおる告知」「恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用」は、数多ある消費者被害のうちの一部であり、若年成人等の消費者被害を防止・救済する上では、より一般的な「つけ込み型勧誘への取消権」の措置等の実効的な法制度の整備が必要です。

 18・19歳の未成年者取消権が喪失されると見込まれる中、少なくとも成年年齢引き下げの経過措置期間内に次回改正ができるよう、今後の課題については附則・附帯決議に明示し、時限を区切って次の改正につなげていただくことを求めます。

以上