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「家庭向けLPガス販売における価格・取引の透明化を求める要請書」
を提出しました

 2016年4月の電気小売事業の全面自由化につづき、2017年4月より都市ガスも全面自由化されます。現在、自由化にむけての具体的な制度設計が進められています。

 一方、すでに自由化されていた家庭用LPガスについては、従来より自由市場として事業が行われ、国の関与もありませんでしたが、その販売においては「契約条件や料金が不透明」「解約時に撤去料などの費用を請求された」等、消費者から少なからず問題が指摘されてきました。

 そこで、全国消費者団体連絡会では、家庭用のエネルギー問題に関する取り組みの一環として、LPガス販売を行っている大手事業者と各都道府県のLPガス協会に向けて、LPガス販売における情報開示に関するアンケート調査を実施しました(結果はこちらに掲載)。その結果を踏まえ、以下の要請書を提出いたしました。

提出先 : 経済産業大臣、電力・ガス取引監視等委員会委員長、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官、消費者委員会委員長、国民生活センター理事長

2016年10月25日

家庭向けLPガス販売における価格・取引の透明化を求める要請書

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
代表理事 (共同代表) 岩岡  宏保
代表理事 (共同代表) 松岡萬里野
代表理事 (共同代表) 河野  康子

 2017年4月の都市ガス小売自由化により、家庭用エネルギー(都市ガス、LPガス、電気等)について、消費者が自由に選択できるようになります。

 電気と都市ガスは今般の自由化にあたり、国が関与する形で小売営業に関する指針がまとめられることになりました。他方、LPガスは従来より自由市場として事業が行われ、国の関与もありませんでしたが、その販売においては「契約条件や料金が不透明」「解約時に撤去料などの費用を請求された」等、消費者から少なからず問題が指摘されてきました。

 こうしたことから、今回全国消団連では、本年8月1日現在のLPガス販売時における情報開示の状況などについて、事業者および都道府県LPガス協会を対象にアンケート調査を行いました。その結果、価格や取引に関して消費者から多数の苦情が寄せられていること、事業者の情報開示が十分とはいえないことが分かりました。また、事業者を対象に実施したアンケートは、大手100社を対象にしたにもかかわらず回答率が59%にとどまり、「企業の消費者志向経営」が重視される中で、残念な結果となりました。

 2017年4月の都市ガス自由化を成功させるうえでも、その競争相手と想定されているLPガス業界が、情報開示をはじめとする取引の透明化を図り、消費者が選択できる環境を整備していくことが大変重要と考えます。つきましては、以下の点について要請いたします。

1.事業者による標準的な料金メニュー(料金表)の設定・開示について、事業者に徹底させるべきです。

 大手100社を対象に実施した全国消団連の調査結果では、家庭向けLPガスの標準的な料金メニュー(料金表)をすでに設定しているのは38事業者(家庭向けLPガス事業を行っている事業者の73%)、うち標準的な料金メニューをすでに公開しているのは25事業者(すでに設定している事業者の66%)と、設定・開示ともに十分ではない実態が分かりました。

 今回の調査の回答率が59%にとどまり未回答事業者の実情が不明であること、LPガス事業者は全国で約2万社存在することを勘案すると、業界全体での設定・開示状況はさらに不十分と考えられます。国として、今回の調査対象事業者のうち未だ標準的な料金メニューの公表を行っていない事業者をはじめ、標準的な料金メニューの設定・開示が進むよう事業者に徹底させてください。

2.料金明細(基本料金・従量料金の別など)について、請求書等への記載を事業者に徹底させるべきです。

 全国消団連の調査結果では、検針票などに記載している項目のうち、合計金額の内訳にあたる基本料金(家庭向けLPガス事業を行っている事業者の40%)、従量料金(同38%)等の項目を記載している事業者はまだ多くないことが分かりました。また、都道府県LPガス協会に対して「LPガス料金が不透明」「毎月の料金明細書に基本料金や単価が記載されていない」等の苦情が寄せられていることも分かりました。料金明細(基本料金・従量料金の別など)について、請求書等への記載を事業者に徹底させてください。

3.契約内容に関する苦情も多いことから、契約時の書面交付の指導を徹底するとともに、対面での説明を事業者に徹底させるべきです。

 都道府県LPガス協会に対して「業者の切り替えについて一切お金がかからないと言っていたのに清算金が必要だった」「撤去量を請求された」等、契約に関する苦情が消費者から寄せられていることも分かりました。契約時の書面交付とともに、対面での説明を事業者に徹底させてください。なお、消費者からすると、引っ越しの慌ただしい際に書面交付や説明がなされても落ち着いて対応することが難しいことから、消費者に理解してもらえるような形での書面交付・説明の徹底を求めます。

4.都道府県LPガス協会の役割は重要であり、ここを通じた価格・取引透明化の取り組みが促進されるよう、国として指導してください。

 全国LPガス協会が業界自主ルールとして平成12年に策定した「LPガス販売指針」の事業者への周知について、都道府県協会の周知の実施状況(事業者への指針の配布、講習会等)にはばらつきがあること、事業者の指針の遵守状況は都道府県協会としてはほとんど把握していないことが分かりました。また、複数の都道府県協会より「指針の遵守状況を事業者団体として確認することは強制と受け止められ、独占禁止法に抵触するとの見方があるためしていない」との回答がありましたが、そもそも指針は事業者に遵守いただくために策定しているものと捉えるべきです。LPガス事業者数が全国で約2万社あることを踏まえると、都道府県LPガス協会の役割は重要であり、都道府県協会を通じた価格・取引透明化の取り組みが促進されるよう、国として指導してください。

5.国による「LPガス事業における取引指針」を早期に策定し、上記の事項を盛り込んでください。

 本年5月にとりまとめられた液化石油ガス流通ワーキンググループ報告書では、「今後、国においてはガイドラインの作成等具体的な手段が講じられ、また、LPガス販売事業者はこれにしっかりと応えていくことが必要である」と言及されています。上記で述べた事項の実効化を図るために、電力や都市ガスと同様に、「LPガス事業における取引指針」を国が早期に策定し、業界の価格・取引透明化を促進することを求めます。

 LPガス事業においては「集合住宅での過大投資とLPガス料金への転嫁の慣習化」などの指摘もされており、こうした事案への対応も取れるようにしてください。

6.LPガスは自由料金市場であること、悪質事業者によるトラブルも存在することなどについて、消費者に一層の周知を図ってください。

 そもそもLPガスは自由料金市場であり、消費者が事業者を自ら選択できること、悪質事業者によるトラブルも存在すること(例えば公的機関や消費者団体と誤認するような名称でインターネット等で勧誘をしている業者がいることなど)が消費者に十分知られていません。国はこうしたことについて、消費者に一層の周知を図ってください。

以上

LPガス販売における情報開示に関するアンケート調査結果報告はこちら