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「電力自由化3ヶ月にあたっての意見」
を提出しました

 2016年4月に電力小売全面自由化がスタートし、6月末で3ヶ月が経過しました。

 電力広域的運営推進機関によると、消費者の契約先の切り替え(スイッチング)動向は、6月30日時点での申込件数が約126.4万件、全国で2%という状況です。電力自由化の成否は、消費者が柔軟に考え選択できる環境整備にかかっています。

 2016年5月、全国消団連では家庭向けの電力小売事業者249社に対してアンケート調査を行い、その結果をまとめました。この調査結果などを基に、電力自由化3ヶ月を振り返り、今後事業者・行政・消費者に求められる課題について意見をまとめ、7月20日関係各所に提出しました。

提出先
資源エネルギー庁、電力・ガス取引監視等委員会、環境省、消費者庁、消費者委員会、電気事業連合会、全国消団連「電源構成等の情報開示に関するアンケート」回答事業者

2016年7月20日

電力自由化3ヶ月にあたっての意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
代表理事 (共同代表) 岩岡  宏保
代表理事 (共同代表) 松岡萬里野
代表理事 (共同代表) 河野  康子

 2016年4月に電力小売全面自由化がスタートし、6月末で3ヶ月が経過しました。

 全国消団連ではこの間、電力小売全面自由化について消費者として適切に理解し行動するために、学習会や意見交換会を行ってきました。そして、消費者が電力会社を自由に選ぶ際の合理的な判断には、「電源構成等の情報開示」が不可欠であるとして、電源構成等の開示義務化を求めてきましたが、現在は努力義務にとどまっています。

 電力広域的運営推進機関によると、消費者の契約先の切り替え(スイッチング)動向は、6月30日時点での申込件数が約126.4万件、全国で2%という状況です。このまま切り替え(スイッチング)が低調に推移すると、電力自由化で目指した市場における競争が十分起こらず、規制なき独占という望まない方向に進んでしまうかもしれません。電力自由化の成否は、消費者が柔軟に考え選択できる環境整備にかかっています。

 この度、全国消団連では、家庭向けの電力小売事業者249社に対してアンケート調査を行い、その結果をまとめました。この調査結果などを基に、電力自由化3ヶ月を振り返り、今後事業者・行政・消費者に求められる課題について意見を申し述べます。

<事業者に対する要望>

○全国消団連アンケート結果では、4月25日時点で電源構成等を開示している事業者は、家庭向け電気小売事業を行っている(行う予定の)事業者の23%という結果でした。開示を検討中という段階の事業者も多く、消費者が切り替えの検討を十分にできる状況にはまだありません。消費者の選択に資するよう、早々の情報開示を求めます。

○すでに電源構成等の情報を開示している事業者の公表方法は主にホームページですが、「IR情報」コーナー等探しづらい場所に示されている例も見受けられます。請求書に掲載する、ホームページのわかりやすいコーナーに掲載する、などして一般の消費者が容易に情報を見られるような対応を求めます。

○消費者委員会公共料金等専門調査会の「電力小売自由化について注視すべき論点」でも整理されているように、消費者の様々なライフスタイルに応じて選択できる多様な料金プラン(電気をあまり使用しない利用者にとっても切り替えメリットがあるメニューや、消費者の節電意識を向上させるようなメニュー等)の提供や、ガス・通信等とのセット販売の場合の契約条件(違約金等)などをわかりやすく示すことを求めます。

<行政に対する要望>

○電源構成開示について、今般「電力の小売営業に関する指針」が改定され、新規参入の電気小売事業者の場合には、供給開始後数か月単位での実績の開示が可能になるなどの対応が取られますが、これにより需要家への情報提供がより進むものと期待できます。引き続き事業者の開示状況をふまえつつ、電源構成等の開示義務化の検討を求めます。

○発電の環境影響で特に問題となるのは、CO2及び放射性廃棄物の量です。原子力発電において、環境負荷の大きい放射性廃棄物についての表示がないまま、OC2排出係数の低い表示だけがなされていると、環境負荷の低い電源を選択したい消費者にとっては合理的選択が阻害されていることになります。したがって、「電力1kwhあたりの放射性廃棄物の発生量」の表示義務化と、ガイドラインを策定するなどの形で放射性廃棄物の算出方法を定めることを求めます。

○託送料金は、電気料金の3分の1と大きな割合を占めており、新規参入がしづらい要因のひとつと言われています。消費者委員会に「託送料金に関する調査会」が設置されていますが、託送料金の適正性について引き続き検討を求めます。

○供給エリアの地域間格差が大きく、スイッチング件数も地域によって大きな差があるのが現状です。全国消団連アンケート結果では、4月25日時点での電気小売事業の供給エリアは、東京電力エリアが77事業者と最多であったのに対し、沖縄電力エリアは1事業者となっており事実上選択肢がないことが判明しました。今後、託送料金を見直すことなどにより、省電力型エネルギーや地産地消型エネルギーが普及し、消費者にとって選択肢が多数ある環境が生まれることや、ゼロエネルギー住宅など地域における新事業の創出につながることが望まれます。

<消費者・消費者団体の役割>

○電力自由化により、消費者が初めて電力事業者を選択できるようになりました。再生可能エネルギー比率の高い事業者への支持が広がれば、社会全体の再生可能エネルギー導入促進が進むことになります。消費者が消費者の権利を行使し、主体的な選択を行っていくことが消費者市民社会の実現にもつながっていきます。電力・エネルギーのしくみや課題についての学習を進める、「電力比較サイト」などで自ら情報を得て適切な選択を行う、などの形で消費者の役割を発揮していくことが重要です。

○全国消団連のアンケート実施後、「電源構成開示を新たに開始した」「情報をホームページのわかりやすいところに移動した」などの連絡を寄せていただいた事業者もありました。このような事業者の消費者志向経営を促進していくことが消費者団体の役割として重要であり、全国消団連としても事業者や行政に対しての意見発信を継続していきます。また、引き続き事業者の動向を注視し、消費者の選択に資するような事業者情報の提供を進めます。

以上

*全国消団連が実施した「電源構成等の情報開示に関するアンケート」調査結果はこちら