[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


機能性表示食品に関する意見書を提出しました

2015年11月30日

※消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長、国民生活センター理事長に提出

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
代表理事 (共同代表) 岩岡  宏保
代表理事 (共同代表) 河野  康子
代表理事 (共同代表) 松岡萬里野

機能性表示食品に関する意見

 4月から施行された機能性表示食品制度について、全国消団連は商品発売前の5月26日に意見書を提出し、制度に係るいくつかの問題点を指摘しました。残念ながら、その後も状況の改善が図られることなく進行し続けています。この制度による消費者被害や不利益の発生を防ぐため、同様の趣旨で改めて意見を提出いたします。

(1)機能性表示食品制度の施行状況を検証し、必要な措置を検討する場を設けて下さい。

<理由>

 制度創設時の消費者庁「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」報告書(2014年7月)では、「企業等の責任において科学的根拠を基に機能性を表示するという、これまでの機能性表示制度とは全く異なる考え方の下に設計される制度であることから、施行後2年を目途に新制度の施行状況を検討し、その検討結果に基づいて必要な措置が講ぜられることを期待する。」とされていました。しかし、2015年度から5年間を期間とする消費者基本計画では残念ながら課題化されていません。

 消費者に理解可能な情報が提供され、消費者が正しく読み解き、選択し、自らの健康的な食生活のために適切に役立てていく状態が望まれますが、これまでに届出が受理された製品には、機能性の根拠が非常に弱いと考えられるものや、安全性に疑問があるものがあり、消費者としては機能性表示食品全体に不信感を抱かざるを得ません。届出が受理された後、制度の目的に沿って販売され、購入され、利用されているかどうか、検証が不可欠な状況です。

 さらに、「健康によいと消費者に認識されている食品」の中には、法的に表示を許された保健機能食品と、許されていないにも関わらず広告・宣伝等で健康効果をにおわす「いわゆる健康食品」が混在し、消費者にとって分かり難い状況となっています。消費者の主体的な選択と健康的な食生活の観点から、こうした状況を是正していくことは重要な課題です。既に食品安全委員会では健康食品全般の安全性についてワーキンググループでの検討を行っており、また、消費者委員会においても特定保健用食品(トクホ)の在り方について専門調査会で議論を進めています。消費者庁としてもそうした検討の場を早急に設けて下さい。そのことは河野大臣が10月の会見でご指摘されている通りと考えています。

(2)少なくとも国内外の公的機関による評価に関しては消費者に情報提供すべきです。また、これらの公的機関が安全性について疑義を示した製品・機能性関与成分については、届け出を受理するべきではありません。

<理由>

 エノキタケ抽出物に含まれる物質を機能性関与成分とする機能性表示食品の事例に見られるように、特定保健用食品(トクホ)の審査で安全性が確認されなかった食品が、機能性表示食品として届け出され受理されるという分かり難い状況となっています。安全という観点から『トクホがだめなら、機能性もだめ』というルールがあってしかるべきではないでしょうか。

 国内外の公的機関が安全性や機能性に関して評価を行ったことがあったり、あるいは評価中である製品・機能性関与成分については、その内容を届け出情報に盛り込み、消費者に情報提供すべきです。また、これらの公的機関が安全性について疑義を示した製品・機能性関与成分については、届け出を受理するべきではありません。

 日本の食品安全委員会、米国の食品医薬品局FDA、欧州食品安全機関EFSA、豪州ニュージーランド食品基準機関FSANZ等、各国の公的機関は、食品の安全性や機能性等の科学的根拠を専門家が精査して、報告書等にまとめており、消費者にとっては信頼できるものです。特に安全性については、公的機関のリスク評価の結果が尊重されるべきと考えます。

(3)サプリメント形状の加工食品の販売実績を食経験として認めるのであれば、その判断基準を明確にすべきです。

<理由>

 錠剤、カプセル、粉末、ソフトジェル、液体等のサプリメント形状の加工食品は、原料や製法、機能性関与成分の含有量等により、安全性や機能性が大きく異なります。企業は「○年の販売実績がある」と主張しますが、その間に原料や製法を変更したことがないのかなど、情報が明らかにされていません。企業によっては「○年△袋の販売実績」などと記述していますが、その袋にどれだけの量が含まれており、何人の何日分の量に相当するのかなどの説明がなされていません。

 また、その間の消費者からの苦情には企業自身が対応しており、企業判断で「健康影響はない」などと記述しています。その判断が適切であるのかどうか、消費者にはわかりません。こうしたことから、サプリメントの販売実績を食経験とする場合には明確な判断基準が必要です。ガイドラインやQ&A等で明確に示してください。

(4)新制度の周知が不足しているばかりか、誤認を招きかねない広告・宣伝も見られます。このままでは、消費者が自主的・合理的に選択することは不可能です。

<理由>

 消費者庁のホームページで公開されている情報の中には、専門用語をそのまま記述したものなども目立ち、消費者が機能性や安全性等について理解するのは容易ではありません。また、公開情報がどの程度消費者に周知され、利用されているかの検証も必要です。情報の所在すら十分に周知されず、情報に辿り着いたとしても理解するのが困難なようでは、消費者の自主的・合理的な選択は不可能です。

 さらに、広告・宣伝に用いられる様々な手法や表現によって、食品表示法に基づき記載される容器包装の表示内容との関係で乖離・齟齬も散見されます。消費者が混乱・誤認しかねない状況です。

 それにも関わらず、事業者に対しては何度も説明会が開催されましたが、消費者向けにはリーフレットが発行されたものの、未だに説明会や学習会が開かれていません。消費者が誤認することなく、自主的・合理的に選択することができるようにするため、一刻も早く消費者に新制度を説明する機会を作るとともに、広告・宣伝のルールを整備し、事業者を指導する必要があります。

(5)バランスのとれた食生活の推進を周知・推進して下さい。

<理由>

 生鮮食品から、三ヶ日みかんと大豆イソフラボン大豆もやしが機能性表示食品として受理されました。みかんは一日あたりの摂取目安量は3個とあります。特定の食品を積極的に摂るということが他の食品からの栄養成分摂取を阻害することにつながらないか、また、「骨の健康に役立つ」という情報だけが独り歩きすることはないか懸念されます。バランスのとれた食生活の推進を併せて周知・推進していくことが重要です。

 また、国立健康・栄養研究所等と連携して、「健康食品」の利用上の注意や望ましい食生活等について、さらなる啓発を行ってください。

 「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」の報告書では、消費者教育の重要性が強調されています。米国は、国立衛生研究所内にOffice of Dietary Supplements(ODS)を設置し、ダイエタリーサプリメントの問題点も含め、情報提供しています。日本でも、充実した情報提供が重要です。

(6)消費者が苦情を申し立てたり、相談したりできる「窓口」を明確にして下さい。また、消費者から寄せられた情報を関係省庁や国民生活センター、各地の消費生活センターや保健所等で共有し、危害発生や表示違反をすばやく見出し対応できるようにするための制度整備も必要です。

<理由>

 公開された情報をもとに消費者が安全性や機能性を確認していくことが期待される制度の筈ですが、商品に対して疑義が生じたとき、消費者が申し出る窓口やフォーマットが全く示されていません。

 消費者が、届出書類をチェックし、疑義をすぐに消費者庁に提起できるように、窓口や届出フォーマットを至急整備する必要があります。また、消費者から寄せられた情報を関係省庁や国民生活センター、各地の消費生活センターや保健所等の間で共有する仕組みや、危害発生、表示違反等をすばやく見つけ消費者に警告を発し、速やかなリコール等につなげられるような制度整備も必要です。

以上