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独禁法審査手続きに関する指針(案)への意見を提出しました

独占禁止法審査手続に関する指針」(案)に関する意見(7/25提出)

○市場における公正で自由な競争を促進し、消費者の利益の確保と経済の健全な発展を図ることが独占禁止法の目的であり、違反行為によって生じる価格の引上げ、サービスの低下等によって被害を受けるのは消費者・国民です。公正取引委員会が独占禁止法を執行する際に公正性・透明性が確保されるよう、本指針において、手続を明確化することは望ましいことと考えますが、現行の独占禁止法の実態解明機能を損なわない内容とすべきと考えます。

○本指針(案)は、内閣府「独占禁止法審査手続についての懇談会」報告書において「指針等に明記して公表し、広く情報が共有されるようにする」こととされた事項を網羅しており、手続の適正性を確保するものと評価することができます。加えて、上記の報告書において「適切な場面において、書面による方法も活用しつつ、事業者に伝えることが適当である」とされたことについても、本指針の内容を踏まえて事業者等向けに資料を作成し、それをウェブに掲載し、立入検査や供述聴取の際に手交などすることとされており、更に手続の透明性を高め、調査を受ける側の従業員の不安感も軽減していこうとする姿勢も見ることができます。上記の懇談会においては、立入検査や供述聴取のルールについて広く口頭での告知を求める意見がありましたが、開始前の口頭での告知事項をむやみに増やしますと、開始するまでに必要以上に時間がかかり、例えば、立入検査では証拠隠滅のおそれが生じるなど、円滑な審査に支障が生じるおそれがあると考えられます。本指針(案)においては、立入検査や供述聴取の根拠や法的性格については、事業者等向け資料の手交等に加えて、必ず説明することとされており、それ以外の手順やルールについても、本指針(案)に分かりやすく記載されており、それと同内容の事業者等向け資料を手交等することとされていることから、それで十分と考えます。

○供述聴取において休憩時間を適時適切に確保すること、聴取時間として1日つき8時間(休憩時間を除く。)までを原則とすることを明記したことは、一般的な企業での勤務時間が1日8時間程度であることを考えれば妥当と考えます。上記の懇談会において、1時間半や2時間を目途に休憩時間を確保することをルール化してほしいといった意見もみられましたが、聴取時間・回数に数値的な制約を設けることとした場合、現状より長時間又は頻繁な休憩を認めることとなり、公正取引委員会の調査を不必要に制約し、実態解明機能を損なうおそれがあるため、上記の懇談会の整理としてはそのような制約まで設けるべきだという結論にはなっていません。本指針(案)のとおり、1日つき8時間(休憩時間を除く。)までを原則とすることで十分と考えます。

○本指針(案)において、供述聴取時の弁護士を含む第三者の立会い、供述聴取過程の録音・録画、調書作成時における聴取対象者への調書の写しの交付及び供述聴取時における聴取対象者によるメモの録取については、これらを認めないこととされていますが、上記の懇談会における議論に沿った取扱いであり適切なことと考えます。これらは、懇談会において、経済界等からは認めるべきとの主張があった論点ですが、それらを認める必要性には疑問がある一方で、供述人が萎縮して会社に不利な事実を供述しにくくなり、あるいは、口裏合わせが容易になり、実態解明機能への影響が懸念されることから、現状の仕組みの下でこれらを認めるべきとの結論には至らなかったものです。また、当局の裁量で問題を生じない場面に限定して運用で認めてもよいではないかとの意見も見られましたが、問題が生じないケースというのは想定できませんし、実態解明機能が損なわれる懸念を払拭できないことなどから、そのような運用をすべきとの結論にもなっていません。適正な手続の確保が求められることは当然のことですが、求められる手続保障の水準は調査権限の強さとのバランスの中で決まるものであり、現在でも、調査権限に見合った手続の適正性は確保されているものと考えられ、さらに、本指針の策定によって、手続の適正性はより一層確保されるものと考えられます。したがって、上記のように実態解明機能への影響が懸念される防御権を認めるような内容を記載することは適切ではありません。

〇今回の指針案とは直接関係するものではありませんが、事業者の間で独占禁止法のルールそのものへの理解が十分に普及していないことが、違反行為がなくならない理由の一つではないかと考えられます。知らなかったでは済まされないため、事業者自らが競争ルールを勉強し、未然防止を図ることが先ずは重要と考えます。また、事業者は、中長期的な視点で、市場における公正で自由な競争を回復させる立場から、必要な社内調査を進め、仮に社内調査で独占禁止法違反の事実を把握した場合には速やかに当局に減免申請を行い、また,減免申請の枠が空いていなくても、コンプライアンスの観点からは当局に報告するなど、競争の回復にリーダーシップを発揮していくべきです。さらに、供述人が独占禁止法違反に係る事実を公正取引委員会に話した場合でも、社内で不利益処分が行われないような取り組みを進めるべきです。

○上記の懇談会における昨年7月の「独占禁止法審査手続に関する論点整理」に係る意見・情報の募集に対し寄せられた意見等をみますと、公正取引委員会の調査対象となるような事業者やその代理人からの意見が多数であったところ、本指針(案)に対する意見募集についても、同様の結果になることが想定されます。独占禁止法の執行によってその利益が守られているのは消費者・国民ですが、その恩恵は幅広い層が享受するものですので、常日頃から各人がそれを意識することは少ないかもしれません。また、調査対象となるような事業者と直接関係のない消費者・国民は公正取引委員会が行う調査になじみがなく、声が出しにくいことも考えられます。独占禁止法の審査手続は、このように声が聞こえづらい一般消費者の利益を確保するための手続という観点で考える必要があり、企業の自己防衛手段の拡充ではなく、あくまでも、実態解明機能の確保を前提として適切に検討されるべきものと考えます。