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2015.2.19 消費者基本計画(素案)への意見書を提出しました


消費者基本計画(素案)への意見

2015年2月19日
(一社)全国消費者団体連絡会

全体として    12/26付の弊会意見書の冒頭でも述べた通り、消費者政策は私たちの消費生活に密接に係わるものであり、その推進計画を改定するにあたっては、特に消費者の意見を幅広く収集し、反映させていくプロセスに意を尽くさなければなりません。ところが、今回の改定プロセスにおいては、国民や消費者団体からの意見聴取の機会がほぼパブコメの3週間に限られました。「行政の在り方を国民一人ひとりの立場にたったものに転換していく」観点から大変残念に思っています。そのことがこの5年でどの程度進んだのか、あらためてふりかえり、評価を書き込むべきです。
全体として    12/26付の弊会意見書の冒頭でも述べた通り、消費者政策を効果的に推進するためには、関係省庁で統一的な計画を立て、具体的な目標と施策、実施期間などを共有して取り組む必要があります。消費者を取り巻く環境変化として第2章で「高齢化」「情報化」「グローバル化」などが指摘されていますが、それら変化が暮らしに及ぼす影響に対して、政府全体としてどのように対策を打っていくのか見え難い構成になっています。この3点は重点的に取り組むテーマとして政府全体として対応方針を記述することが必要です。重点が分かるよう、柱建ての工夫が必要です。
全体として
(工程表)
   各施策毎のKPIが設定されていますが、進捗と効果が計れるよう到達目標の設定が必要です。
第1章1 4段落目 はじめに  「消費者行政を推進する基本的な枠組みができつつあるものの・・・(略)・・・いまだ課題が多く残されている」とされています。課題の中に行政機関の執行力を高める必要があることも書き込む必要があります。
第1章1 6段落目 はじめに  「最近では、SNS・・・発信する消費者も現れてきている一方で、」は不要ではないでしょうか。その後に記述されている消費者・事業者間の構造格差とはレベルの違う内容と思われ、並列すべき話ではありません。
第2章1  環境変化
(経済)
 貧困と格差拡大の問題を情勢認識として記述すべきです。また社会的な弱者が消費者被害に遭い、一層格差を拡大させていく側面があることも指摘すべきです。
第2章5 環境変化
(国際化)
 グローバル企業に対して国内法規制が十分機能しなくなっている現状も指摘するべきです。
第2章6 1段落 環境変化
(意識)
 社会・意識の変化の背景として、東日本大震災とともに福島第一原発事故も入れるべきです。
第2章7 4段落 環境変化
(意識)
 個人情報及びプライバシーへの「消費者の意識が高まっている」ことが記述されていますが、それ以前に個人情報へのリスクが高まっていることを書くべきです。
第3章1 2段落 基本方針
(姿)
 「勧誘を受けるかどうか」を選択できることは重要です。目指すべき姿に書き込まれると共に、各施策分野で不招請勧誘の禁止を検討項目として入れてください。
第3章1 5段落8行目 基本方針
(姿)
 「信頼を獲得することなくしては、事業活動は継続できないと考えられる」とありますが、そうでもない現状もあり「継続できないような経済社会を作り出していくべきである」と目指すべき目標的に書いた方が良いと考えます。
第3章2(1)4段落 基本方針
(視点)
 消費者行政の総合調整事務については、今通常国会提出予定の法案において、内閣府から消費者庁に移管されることになります。「なお、・・・」として事実のみ簡単に触れられていますが、そのことの持つ意味を書き込むべきです。第5章「効果的な実施」にも、消費者庁が消費者行政の司令塔役・エンジン役となって本計画の検証、評価、見直しを進めていくことを書くべきです。
第3章2(2)5段落 基本方針
(視点)
 「消費者行政部局だけで取り組むのではなく、・・・幅広い関係者と連携」については、具体的な施策を工程表に書き込むべきです。
第3章2(2) 基本方針
(視点)
 地方自治体間の格差が大きくなっています。「いつでも、どこに住んでいても・・・」を実現していくために、自治体間格差を埋める計画を準備すべきです。「地方の自主的な取組への支援」に止まらず、積極的な手立てを第4章6(2)にも書き込むべきです。
第3章2(3) 基本方針
(視点)
 成長戦略として行われる規制緩和(投資型クラウドファンディングや商品先物取引の販売規制の緩和等)が一般消費者に及ぼす影響を想定し、予想される消費者被害を防止するための策を、監督を所管する官庁と連携し、消費者庁においても消費者への事前対策的な注意喚起等を積極的に講じる。ということを書き込むべきです。
第4章1(1)2段落
及び工程表
施策
(安全)
 家庭用品の事故を防ぐため、「安全確保マニュアル作成の手引き」の作成が計画されていますが、そもそも情報提供の方法として「警告表示」をきちんと位置付けて下さい。また、消費者教育としても取り上げるべきです。
第4章1(2)3段落
及び工程表
施策
(安全)
 リコール情報の周知強化が書き込まれていますが、具体的な施策を工程表に書き込むべきです。リコールに係わる各主体の役割を定めたり、回収率の公表などを制度化すべきです。また「見守りネットワーク」の活用も検討すべきです。
第4章1(2)4段落
及び工程表
施策
(安全)
 現状の自動車リコール制度は「保安基準への不適合」「改善措置の実施」が前提となるため時間がかかる問題があります。安全側の視点に立ち、原因や改善措置とは切り離して速やかにリコールの届出を行うよう制度改善を計画すべきです。
第4章1(2)5段落
及び工程表
施策
(安全)
 製造物責任法に関する裁判例等の情報収集、公表にとどまらず、同法改正について検討すべきです。欠陥や因果関係に関する推定規定を新設したり、責任期間を民法不法行為責任と同じレベルに延長することなどを具体的に検討し、同法の実効性を強化すべきです。
第4章1(3)1段落
及び工程表
施策
(安全)
 消費者安全調査委員会が効果的に役割を果たせるように、過去の事件の捜査記録や裁判記録にアクセスできるようルールの改善を計画すべきです。
第4章1(4)
及び工程表C
施策
(安全)
 輸出国対策・輸入国対策が行われたとしても違反食品が国内に流通する可能性は完全には排除できません。国内流通時対策として「国内流通品の収去検査など監視体制の強化」も加えてください。また、健康被害が生じる場合などの消費者への情報発信やホットラインの創設など被害防止策も書き込んでください。
第4章1(4)
及び工程表E
施策
(安全)
 これまで行われてきた「風評被害に関する消費者意識の実態調査」の検証に基づいて、消費者のニーズに合わせた効果的なコミュニケーションの実施が行われるべきです。
第4章1(4)
及び工程表IK
施策
(安全)
 食品テロなのか、個人の犯罪なのか、製造過程における異物混入なのかといった事態の程度に合わせた対応が必要になります。事業者の製造工程、流通工程で脆弱性を検証して適切な対策を講じるなどフードディフェンスを整えていくと共に、食品業界のコンプライアンスの徹底を行ってください。
第4章1(4)
及び工程表K
施策
(安全)
 流通食品への毒物混入の疑いがある事案を認知した際には、消費者の健康被害を最小限に抑えるために消費者に適切な情報提供がされているかについての監視指導を行ってください。また、政府がホットラインを開設し被害情報の収集に努めてください。
第4章2(1)
及び工程表
施策
(表示)
 改正景品表示法が実効性を持ち得ているかどうかについて一定期間後に評価を行う必要があります。そのことについて計画に盛り込んでください。 
第4章2(2)
及び工程表
施策
(表示)
 第3章基本的視点に言うような「消費者市民」を増やしていくために、選択の基盤となる表示が必要になります。電力自由化が予定されていることから、再生可能エネルギーの選択が可能となるよう制度整備を計画化すべきです。
第4章2(2)
及び工程表
施策
(表示)
 美容医療等の「自由診療」の広告等については、医療広告ガイドライン等の継続的な周知はもちろん、都道府県による違反事例の是正など適切な執行を行うことが必要です。
第4章2(3) 施策
(表示)
 「インターネット販売等における食品表示のあり方などの個別問題(P)」とありますが、個別の今後の検討課題としては「加工食品の原料原産地の取扱い、遺伝子組換え表示、添加物表示の取扱い」があり、インターネット販売等に加えてこれらの検討課題についても書き込むべきです。 
第4章2(3) 施策
(表示)
 特別用途食品(病者用食品、えん下困難者用食品)の見直しや介護食品の創設など、高齢化に対応した表示の再検討も課題です。また、厚生労働省でスタートする「健康な食事」マークと栄養表示の連動など、食育も含めて統合させて、健康な食生活と食品表示について消費者教育の強化を進めてください。
第4章2(3)
及び工程表@
施策
(表示)
 新たな食品表示制度は施行3年後に、機能性表示制度は施行2年を目途に施行状況を検討し、必要な見直しを行うとありますが、健康被害や表示の不具合が見られた場合は、それを待たずに速やかに見直しを行ってください。 
第4章2(3)
及び工程表A
施策
(表示)
 食品の機能性を表示する制度に関し、いわゆる健康食品も含めて、相談体制の強化を進めてください。消費者からの情報が一元的に収集され、改善に生かされる体制・ホットラインの開設が必要です。
第4章2(3)
及び工程表A
及び工程表
施策
(表示)
 食品の機能性を表示する制度に関し、いわゆる健康食品も含めて、監視の強化策や留意事項の周知徹底策について具体化してください。
第4章2(3)
及び工程表B
施策
(表示)
 関係機関の連携による食品表示の監視・取締りは強めていくべきですが、消費者からの情報が一元的に集約され、対策に活かされる体制の構築が必要です。ワンストップ体制は食品表示法公布の際の附帯決議にも盛り込まれており、地方自治体等の関係機関における食品表示相談窓口の体制が拡充されるよう情報共有を進めてください。
第4章2(3) 施策
(表示)
 食品表示法に規定された適格消費者団体による差止請求権が行使できるよう支援策を具体化する必要があります。
第4章3(2)
及び工程表@
施策
(取引)
 電気通信サービスについては、電気通信事業法の改正と所要の制度整備について触れられていますが、「ICTサービス安心・安全研究会報告書」に盛られた課題(取消しルールの導入やSIMロック解除の推進など)について、計画に盛り込んでください。
第4章3(2)
及び工程表F
施策
(取引)
 エステ・美容医療サービスの消費者被害が深刻な状況です。5年間かけてアンケート調査を行うのではなく、自由診療への実効的な法規制を検討すべきです。
第4章3(2)
及び工程表J
施策
(取引)
 投資型クラウドファンディングについては、金融庁において必要な監督上の対応を取ることはもちろんですが、消費者庁においても、消費者に対してこの種の投資のリスク(投資資金の回収の困難さ等)を積極的に注意喚起すべきです。
第4章3(2)
及び工程表K
施策
(取引)
 金融審議会「投資運用等に関するワーキング・グループ」で検討するとされていますが、既に報告書が1月28日に公表されています。その内容を踏まえた記述に変更する必要があります。報告書では販売対象者が限定されました。被害が多発したことに鑑み、金融庁任せにするのではなく、消費者庁も積極的に国民に周知するべきです。
第4章4(1)
及び工程表
施策
(教育等)
 特に高齢者に対して、健康食品や表示の情報が行き届いていない状況があります。消費者教育の課題として位置付けてください。
第4章4(1)
及び工程表
施策
(教育等)
 成人教育(社会教育、生涯教育)の充実を検討してください。学生の時の教育では、実際に本人が契約をすることがないため、実感を伴いません。企業に教育を促す施策や、社会人向けの学習機会を増やす方法(事業者への支援など)などが必要です。
 現在の基本計画では社会教育主事への消費者教育の実施等の記載がありました。生涯学習センターや公民館等の社会教育施設で広く消費者教育が実施されるためには、例えば、消費者教育を社会教育主事資格の必須科目にするという具体的な取組が必要と考えます。
第4章4(1)
及び工程表L
施策
(教育等)
 日本型食生活の推進は大切ですが、一方で日本人の塩分摂取量は目標量を大きく上回っています。生活習慣病対策として、食品業者への低減策を促すと共に国策として減塩の取り組みを進めてください。
第4章4(2)
及び工程表
施策
(教育等)
 消費者団体・事業者団体・NPOの情報・意見交換の支援促進を具体的な施策として工程表に記載してください。
第4章4(2)
及び工程表
施策
(教育等)
 消費者庁等設置法附則第5項の適格消費者団体への支援策が何ら具体化されていません。基盤確立に向けた具体策を盛り込んでください。
第4章4(3)
及び工程表
施策
(教育等)
 電気料金、都市ガス料金の自由化が進み2020年頃には家庭用エネルギーの全てが自由料金になる見通しです。生活に不可欠な必需品であり、自由市場を前提としつつも一定の行政関与が検討されるべきではないでしょうか。
 「電気料金・都市ガス料金の自由化動向も踏まえ、『公共料金の定義の見直し』を含めた、生活に不可欠なサービス・商品料金のあり方への行政の関与について政策・制度の検討を行う」ことを計画に入れ込んでください。
第4章4(4)
及び工程表
施策
(教育等)
 消費者の意見反映に向けて意識調査を実施することとしていますが、生活実態をふまえて政策推進していくため、合わせて国民生活に関する主要な経済指標をとりまとめて公表してはどうでしょうか。例えば@所得(一人当たり賃金伸び率)、A雇用(失業率、正規雇用比率)、B物価(消費者物価指数)、C労働時間、D所得格差、E環境指標・・・など。
第4章5
及び工程表
施策
(保護等)
 人口減少・高齢化、過疎化、情報化などの変化の中で、通信、郵政など生活を支える基盤についてユニバーサルサービスのあり方が問われています。問題意識として加えるべきです。
第4章5(1)
及び工程表
施策
(保護等)
 「相談や紛争処理を行っている組織・団体の活用促進も重要」との記述がありますが、消費者団体が行っている事業については、会費・寄附金から持ち出す費用構造になっているのが実態です。この活動の公益性をふまえ、財政面での支援についても検討することが必要です。
第4章5(1)
及び工程表
施策
(保護等)
 消費者裁判特定法の施行に向けて、消費者団体訴訟制度の周知・広報を進めるとありますが、消費者教育としても取り組む必要があります。
第4章5(1)
及び工程表
施策
(保護等)
 2013年の消費者庁「消費者の財産被害に係る行政手法研究会」報告書では、「行政が直接消費者の被害救済を図るための手法・制度」「(行政が)事業者の財産保全するための方法」等について制度概要を提示し、検討課題を整理しています。景品表示法の課徴金制度については2014年の法改正で導入されることになりましたが、多岐にわたる消費者被害の救済を進めるためには、さらに行政手法の検討が必要です。同報告書をベースに制度の在り方について検討をすすめていく旨を記述してください。
第4章5(1)
及び工程表
施策
(保護等)
 消費者団体が行っているADRも公益的役割を果たしており、公的支援を検討すべきです。また、PLセンターに関して記載してください。
第4章5(1)
及び工程表
施策
(保護等)
 多重債務問題の解決に向けた取組を行っている民間団体もあります。関係省庁だけでなく、連携して進めることが必要です。
第4章5(1)(3)
及び工程表
施策
(保護等)
 越境消費者トラブルを解決する取組として、相談できる相手国の拡大を図るべきです。KPIとして目標国数を設定すべきです。
第4章5(3)
及び工程表
施策
(保護等)
 国連貿易開発会議(UNCTAD)では、現在、国連消費者保護ガイドラインの改定作業を進めています。国連消費者保護ガイドラインの日本国内での周知と施策への反映を、計画と工程表に追記してください。
第4章6(1)
及び工程表
施策
(体制)
 消費者行政の充実を図るうえで、消費者団体・事業者との意見交換は必須です。中央だけでなく、地方での開催もKPIに設定して、政策の見直しに活かしてください。
第4章6(2)
及び工程表
施策
(体制)
 改正消費者安全法を活用した「見守りネットワーク」づくり具体化に向けて「関係機関への周知」だけでは動かないと考えます。具体的に動きを作るためにモデル事業などを積極的に計画化すべきです。
第4章6(2)
及び工程表
施策
(体制)
 消費者教育推進法や消費者安全法の改正等、地域での課題解決に使うことのできる制度枠組みが整備されてきており、他省庁の施策も含めて地方自治体や地域の団体が連携してそれらを使っていくことが重要になっています。それらを上手に組み合わせて課題解決に使うことができる「コンシェルジュ」の育成を進めていくことが必要です。
第4章6(2)
及び工程表F
施策
(体制)
 地域の見守りネットワークの構築に関するKPIが協議会の設置状況となっていますが、構成している消費生活協力団体、協力員の状況も設定すべきです。合わせて、協力員の養成手段を国の責任として地方公共団体に提供して下さい。
第5章2 実施  毎年度の検証・評価、見直しが継続されますが、形だけのものとせず、国民参加と機動性を充実させる方向でそのプロセスについて書き込むべきです。「施策の実施状況の検証・評価を行うに際しては、消費者団体、事業者団体、地方公共団体等へのアンケートやヒアリング、意見交換等により意見を聴取する」とありますが、消費者基本計画そのものに対する認識や理解度は地域により格差があります。国民参加の機会がパブコメ3週間に限られた今回の改定プロセスの反省に立って、検証・評価・見直しにあたっては、地方数か所での意見交換会を実施するなど、広く国民が参加できるよう充実させる方向で設計すべきです。