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消費者基本計画の改定に関して要望書を提出しました。

※内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛に、12月26日に提出。

「消費者基本計画」の改定に関する総論的要望

 平成22年度からの5ヵ年計画として現行の「消費者基本計画」が策定され、本年度はその最終年度にあたります。

 言うまでもなく消費者政策は私たちの消費生活に密接に係わるものであり、その推進計画を改定するにあたっては、特に消費者の意見を幅広く収集し、反映させていくプロセスに意を尽くさなければなりません。新たな基本計画が、消費者の多くの意見や期待が盛り込まれたものになるよう要望し、下記の意見を述べます。

1.改定の基本的な視点

(1)消費者市民社会に向けた幅広い領域設定

 消費者と事業者との情報の質及び量並びに交渉力等の格差によって生じる不利益を防止し、救済することが第一義的な消費者行政の役割ですが、それに止まらず、消費者が権利の主体となって生活できるような市民社会を構築していくことも消費者行政の役割です。

 消費者教育の分野では「消費者市民社会の形成」が基本理念として既に位置づけられています。消費者基本計画においても「消費者市民社会の形成」に視野を拡大して課題設定を行うべきです。

 地域で活動する消費者団体は、凡そ暮らしに係わる様々なテーマを課題とし、意見の分かれるテーマについても学び合い・話し合いの場を設けるなどして取り組んでいます。経済政策やエネルギー・環境政策、食料・農業・農村政策、社会保障政策などの中で特に消費者の暮らしに係わりの深い分野について、消費者の選択を促すような施策を盛り込んだり、政策の方向性が固まっていないテーマについては「国民的議論の喚起」といった目標を設定していくことも検討すべきです。

(2)経済政策への消費者視点からの関与

 近年、日本経済の先行きに関する人々の不安・不満・不信が高まる中で、規制改革による成長戦略が推進されています。その中には暮らしの安全・安心にかかわるような内容も少なくありません。消費者の視点から、これら一つ一つの「改革」が生活にもたらす意味を多角的に読み解き、慎重に検討していくことが必要です。

 生活必需品である電力、灯油、ガソリン、ガスに係る料金は、公共料金としての性格を持っており、家庭用の電気料金については、これまで消費者庁が物価問題として関与してきました。電力、ガスの自由化が進められていく中でも、移行期間における経過措置や消費者が選択するための表示制度などの検討も必要です。くらしに大きな影響を及ぼすエネルギーの料金のあり方について、その料金の妥当性、透明性などを検討できる体制が必要です。

 消費市場の安心・安全を高め、GDPの6割を占める家計消費を拡大させることが、今後の日本経済にとっても重要であることが明らかになってきています。政府の経済政策に消費者政策の観点から関与を強めることが必要です。

(3)「自立の支援」理念の再確認

 消費者基本法は「消費者の権利の尊重」と「消費者の自立の支援」を基本理念としています。2年前の見直しから「自助」という言葉が現基本計画の中に書き込まれましたが、消費者と事業者との構造的格差によって生じる問題に対応することが消費者行政の第一義的な役割であるならば、「自助」という言葉は消費者政策の方向性を表現する言葉として適切ではありません。

 消費が一層複雑化し、企業の自由な経済活動が最優先される現状の中で、消費者教育の推進と合わせて、改めて消費者保護の視点を位置づけることが必要です。特に配慮を要する消費者や子どもの消費者問題に対応できる基本計画にする必要があります。

(4)消費者の権利行使の基盤整備

 消費者が商品・サービスを選択したり、また、主権者として生活のあり方を判断・選択していくためには、必要な正しい情報を入手できることが大前提となります。「知らされる権利」は消費者・主権者にとって揺らぐことがあってはならない最も重要な権利の一つであり、公正な市場や民主主義の根幹と言えるものです。

 消費形態の多様化、複雑化、グローバル化がすすむ中で、消費者と事業者間の構造格差は益々拡大していきます。そうした時代に市場メカニズムを公正に機能させるためには、消費者の権利を行使できる基盤整備が重要です。特に「知らされる権利」を確保していくために、事業者情報の公開制度、行政情報の公開制度、公益通報者の保護など基盤整備を計画化すべきです。

(5)市場の機能を損なう事業者等への監視と罰則等の強化

 戦後日本の経済発展の中で、政府の経済政策も、行政の規制と誘導による産業育成から規制緩和と市場メカニズムの活用へと変化してきました。そうした流れの中で、この間の消費者政策についても、自由で公正な取引を行うための市場ルールの整備と、監視や被害救済など事後チェック機能の拡充、その中で適切に行動できる消費者と事業者の育成を基調に進められてきました。

 違法・不当行為を抑止・排除していくために、監視・取締りを行うとともに、市場の機能をゆがめる悪質な事業者に対しては罰則の強化を行うべきです。

(6)実効性の観点からの点検と改善策の準備

 これまでに実現させた消費者のための法制度について、実効性の観点から点検する必要があります。法律に掲げられた基本理念が実現できているかどうか、消費者の権利擁護の視点から評価指標を設定し、必要な制度改正を計画化すべきです。

 また、「安全な商品・サービス」「公正な市場経済」は諸外国から日本への評価につながる大切な価値であり、それを担保する国際指標からの点検も必要です。国連消費者保護ガイドライン、ISO26000等の国際指標からの検証も行うべきです。

(7)公正で的確な消費者政策に必要な機能の整備

 国民生活や消費市場の状況を把握し、消費者の多様な意見を集め、消費者の視点から政策化し執行していける体制をつくるべきです。行政改革の視点ではなく、公正で的確な消費者政策のために必要な諸機関の機能を発揮させる視点(消費者政策の審議、執行、審査、第三者性を備えた監視、幅広い国民参加など)から各々の行政組織の在り方を総括する時期にあります。

(8)消費者団体への支援

 消費者庁設置法の附帯決議において、消費者団体に対する情報提供や活動のための施設や資金の確保等の支援について検討し、必要な措置を講ずることとされていました。改めて消費者基本計画に位置付け、具体化を進めるべきです。

(9)各地域での課題解決への支援

 高齢者等の消費者被害をはじめ、暮らしに係わる様々なテーマについて地域における対応が求められています。各省庁が各課題に対応する地域ネットワークづくりに取り組んでいるところですが、地域の側での受け皿(担い手)は重なり合っているのが現状です。

 縦割り行政の弊害を克服し、地域生活における諸問題を総合的・抜本的に解決していくことが求められています。消費者庁と関係省庁、また地方自治体がしっかり連携できる仕組みづくりが求められるとともに、中央政府においては消費者庁が、地方自治体においては消費者センターが、他省庁・他部局との間に横串を刺す役割を果たしていくことも必要です。

(10)5年後の到達目標の設定

 中期計画として5年後の到達目標を可能な限り明確に設定すべきです。「継続的に実施します」とする施策と、管理目標を明確にして取り組む施策を分けて記述することも検討すべきです。

2.新たな計画の策定にあたって検討されるべき施策の例

 上記のような視点から、例えば以下のような施策が検討されるべきと考えます。

(1)消費者市民社会に向けた幅広い領域設定

○自然エネルギーの拡大普及策の消費者視点からの展開

(2)経済政策への消費者視点からの関与

○消費者向けの商品・サービスで競争政策が機能しているかどうかの点検

○規制改革会議等への消費者庁の関与

○公共料金の透明性を高める措置、電力・ガスシステムの自由化に伴う経過措置の監視

(3)「自立の支援」理念の再確認

○不招請勧誘禁止の対象拡大

○リコール体制の抜本強化

○特に配慮を要する消費者や子どもへの対策

○行政による消費者被害回復制度の検討

○消費者団体の行う消費者被害防止・救済の取り組みへの支援

(4)消費者の権利行使の基盤整備

○情報公開の促進策

○公益通報者保護の強化

○消費者契約法の実体法部分の改正

○クロスボーダー取引に適用可能なADRや、国内法適用など

(5)市場の機能を損なう事業者等への監視と罰則等の強化

○課徴金制度の無い分野への新たな導入

○事業者の「自主的取り組み」の監視体制

(6)実効性の観点からの点検と改善策の準備

○PL法の見直し

○消費者団体訴訟制度の見直し

○ISO/JIS等の規格の位置づけと活用

(7)公正で的確な消費者政策に必要な機能の整備

○消費者事故調の体制抜本強化

○消費者団体と連携する組織の消費者庁内への設置

(8)消費者団体への支援

○リーダーの養成、活動場所や活動物資の提供などの支援の具体化

(9)各地域での課題解決への支援

○見守りネットワークの総合化

○各地域での多様なセクターによる連携・協働の推進

(10)5年後の到達目標の設定

以上