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消費者基本計画の見直しに対する意見を提出しました

 消費者庁は消費者基本計画をより実効性のあるものにするために、毎年、検証・評価を行い必要となる計画を策定しています。今年度も策定に当たり見直しに対する意見募集が行われましたので、全国消団連として、意見を提出しました。


「消費者基本計画」の見直しに対する意見

2014年5月26日
一般社団法人 全国消費者団体連絡会

施策番号 意見
 「第2 消費者政策の基本的方向」の中に、「消費者庁が創設5年目目を迎えたことを踏まえ、創設時の理念に立ち返り、(中略)消費者行政のレビューを実施します」とされました。消費者基本計画の本格改定に向けた検討が行われる年であり、レビューを行政内部に止めるのではなく、広く一般の消費者も議論に参加できるような工夫が求められます。消費者基本計画の改定議論のプロセス設計自体を、現行消費者基本計画の最終年度における重点施策として位置付けることも検討すべきです。
 1985年採択された「国連消費者保護ガイドライン」は世界中の消費者の権利の保護を拡充する上で重要な役割を果たしてきました。現在、国連貿易開発会議でこのガイドラインの見直しが進められており、その議論は日本の消費者基本計画の改定にも多くの示唆を与えてくれるものと思います。
 ところが、その状況が日本国内では全く伝わってきません。消費者庁は「国連消費者保護ガイドライン」の検討状況について国内向けに積極的に情報提供を行ってください。また、その論点を消費者基本計画の見直しにも生かしていくべきです。
 昨年の見直しで重点施策として「@消費者の自助・自立の促進を図る「消費者力向上の総合的支援」」が加えられました。本文内では「個々の消費者が、自らの力のみで(中略)消費者の利益の擁護及び増進を図ることには限界があります」と記述されているものの、従来の「自立支援」から「自助・自立」の表現に変わったことで自己責任が強調されたようにも受け取れます。消費者基本計画に使用する言葉として「自助」は違和感があり、従来通りの「自立支援」とすべきと考えます。

(No.22)
有害化学物質の一つであるアクリルアミドについての知見を「食品中のアクリルアミドを低減するための指針」として整理し、公表することで、食品関連事業者の自主的な低減の取り組みが進むことを期待します。海外では消費者に「GOLD NOT BROWN」などとわかりやすい言葉で注意喚起が行われており、日本でも消費者に向けた情報提供・低減対策を一層進めていってください。
野生動物資源を活用したジビエ等による地域活性化の動きが出てきています。地域の貴重なタンパク源や地産地消の取り組みを促進すべきではありますが、一方で放射性物質や食品安全に関する基準が満たされているのか不安に思う消費者も多いことから積極的に情報提供を行ってください。

(No.23)
食品安全委員会の実施した「食品を科学する リスクアナリシス講座」は、食品安全を体系的かつ適切に理解できるように工夫されており、リスクコミュニケーションの新たな取り組みとして評価できます。
「ヒ素」や「カビ毒」さらに昨年起こった事件の「マラチオン」のリスク評価に関しても様々な媒体を使って情報提供を行ってください。

(No.26)
食品の安全と消費者の信頼の確保を図るため、生産から消費に至るフードチェーン全体において安全管理の取り組み強化が求められており、事故を未然に防止するためにもHACCPの普及・導入を一層促進する必要があります。その際、消費者のHACCP理解が深まるよう、工場見学や意見交換会を充実させてください。

(No.70、75)
「加工食品の原料・原産地表示」「中食・外食へのアレルギー表示」「食品添加物表示」「遺伝子組換え食品表示」等の個別課題についての表示基準の見直しについては、今後検討すべき課題として、実態調査を含め、準備が整ったものから検討を開始するとされています。「消費者にとっての表示はどうあるべきなのか」といった視点を大切に議論を進めてください。

(No.88、94、144等)
 消費者教育に関する情報を含め、多くの施策でホームページを通した情報提供がすすむ中、ホームページ上では情報がテーマごとにバラバラに掲載されており、また一定期間が経過するとトップページから情報を探し当てることが困難となっています。たとえば省庁単位で消費者教育や啓発に関する情報が一覧できるページを設けるなど、情報を容易に探すことができるよう対策を進めてください。
重1
リコール情報の周知強化等
 リコール情報をよりわかりやすく消費者に伝える取り組みとして、サイト上にリコール対象製品の写真の掲載、掲載情報を拡大したこと等は、リコール情報に関心を持つ消費者には有効なサイトになっています。しかし、インターネットを利用できない消費者、リコール情報サイトの存在を知らない消費者を対象とした取り組みを関係機関と連携し継続するべきです。リコール情報は対象者の目にふれるように、少しでも多くの機会をつくることが重要です。リコール情報や注意喚起等の消費者への周知において次の方策を進めてください。
行政、製造事業者、流通・販売事業者のそれぞれ担うべき責任と役割を明確にしたガイドラインの速やかな策定・実施。
消費者の安全な暮らしを確保するための情報提供を地方公共団体の消費者行政の責務と位置づけ、執行促進。
消費者がリコール情報や製品等による事故リスクに関心を持ち、自らの体験情報を関係機関に提供したり、情報収集の価値を理解できるよう世代別の消費者教育の充実・推進。
重2
食品と放射能に関するリスクコミュニケーション等
 食品に関するリスクコミュニケーション「食品中の放射性物質に関する現状と今後の取り組み〜正確な理解のために〜」は、消費者庁、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省の連携の下に継続されており、企画内容の一層の充実を期待します。
 基準値を下回る安全な食品が流通しているにも関わらずまだまだ不安を拭いきれない消費者もいます。少人数参加型の意見交換会のような方法で一般の消費者の不安に応えるリスクコミュニケーションをすすめてください。さらに原木しいたけや果物など特定の食品に対する不安もまだ根強くあります。風評被害の実態に合わせて丁寧に情報提供してください。
重3
消費者契約法
 消費者契約法が施行されて以降、高度で複雑な情報化社会、高齢化、インターネットの普及による国際化等、社会の変化は著しいものがあります。消費者契約法は消費者と事業者の情報力・交渉力の格差を前提とし、消費者の利益擁護をはかることを目的とするものですが、運用状況を踏まえ「適合性原則」を規定に位置付けるなど、在り方の検討を継続していくべきです。また、検討のスケジュールを公表するべきです。
重4
公共料金等
 消費者の生活に大きな影響を与える公共料金のあり方は、消費者の立場に立ち慎重に検討すべきです。またその検討においては、消費者参画が形だけのものにならないよう配慮するべきです。
 情報公開と消費者参加の観点からは、電気料金の審査についてはこの数年間で前進が認められますが、ガス料金や水道料金等では、未着手です。電気・都市ガスの料金制度については制度改革も進められており、十分な議論が尽くせるよう、検討時間の確保と情報公開に努めながら進めてください。
 また、自由価格とされているLPガス、灯油、ガソリンについても、生活必需品であることから、行政による価格動向の監視や料金体系の公開の義務づけなどの具体的施策を検討し、実施するよう、関係省庁へ働きかけてください。
重5
食品表示法
 「食品表示法に基づく、新たな食品表示基準策定にあたっては、消費者委員会食品表示部会及びその下に設置された三つの調査会において審議が行われています。
 食品表示の義務化にあたっては次の点を大切に策定してください。
消費者の安全確保のために必要かつ十分な内容とすること。
食品の内容を正確かつ分かりやすいものとすること。
食品表示法の理念である「食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な選択の機会を確保」するために必要かつ十分な内容とすること。
消費者の健康増進目的を達成するために必要かつ十分な内容とすること。
消費者の選択を誤らせるなどの紛らわしい表示や不正な表示を防止すること。
重6
いわゆる健康食品の表示等
 食品の新たな機能性表示に関する検討会が始まっています。「消費者の誤認を招かず、自主的かつ合理的な商品選択に資する表示制度」を作ることを目標に、「消費者の安全確保」と「機能性表示を行うにあたって必要な科学的根拠の設定」については妥協することなく制度設計していかなければなりません。「平成25年度に検討を開始し、平成26年度に実施します」とされていますが、期限優先で進めるべきではありません。
 現状、消費者の健康食品に対する理解は極めて不十分です。そのため、必要な医療機会を失わせたり、薬との併用による健康被害の発生といった安全に関する問題や、送り付け商法に利用されたりするなどの取引被害の問題も生じています。消費者に対する適切な情報提供とともに、景品表示法の優良誤認・有利誤認表示に該当する表示広告についても措置命令を含む厳正な取り締まりを行ってください。
 健康食品による被害相談はなかなか集まりにくい状況にあります。現在「国民生活センターが運用するPIO-NET情報」「保健所からの情報提供」「医療機関から寄せられた情報」などがあります。一方、企業には有害事象を保健所に報告する義務はありますが消費者庁には報告義務はありません。疑いのあるものでも情報が集まることが大切です。消費者からの問い合わせ対応のワンストップ体制を作ってください。
 なお、健康的な生活を送るには、バランスの取れた食事と十分な休養、運動が大切であることを第一に考えた上で、健康食品をうまく利用するための情報提供を行ってください。
重7
消費者教育
消費者教育推進会議に置かれた3つの小委員会で検討された消費者教育推進のための指標等、検討結果を2014年度は関係省庁・地方公共団体・消費者団体等に周知し活用すべきです。
全国各地で消費者教育を推進していくには、地方公共団体が消費者教育推進地域協議会を設置し、推進のための計画を策定することが急がれます。未設置の都道府県への働きかけの継続と、設置が難しい事情の把握、時間的な目途の設定と適切な支援を検討すべきです。設置済みの協議会については、他の協議会やネットワークとの効果的な連携により、消費者教育推進計画の策定・変更時だけでなく日常的な情報交換・調整の場として機能することを期待します。
2013年度の消費者教育フェスタでは、消費者教育の指定校となった小・中・高校での消費者教育の実践発表がありました。教育現場で消費者教育を推進していく方策として指定校を広めていくことも有効と考えます。文部科学省と連携して検討してください。
消費者教育ポータルサイトの使いやすさの検証が必要です。また事業者が作成している教材の活用が進まない、という声があることから、すべての教材をカテゴリー、対象年齢、作成者で検索できるように検討してください。
重8
消費者被害救済制度
消費者裁判特例法の施行に向け準備が始まっていますが、並行して消費者、事業者へ制度の周知のための広報が必要です。なお、これまでにない新しい制度であることから、救済される被害の事例、手続きの流れ等をマスコミへも協力を呼びかけ周知をはかるべきです。
消費者被害の未然防止、拡大防止のため適格消費者団体が担う差止請求が効果的に行えるように適格消費者団体へのPIO-NET端末設置を急ぐべきです。
消費者被害の救済のために必要な行政手法( 「財産の隠匿・散逸防止策」及び「行政による経済的不利益賦課制度」) の検討については、今回、基本計画から削除されましたが、消費者被害救済の次のステップとして検討を進めてください。
重9
食品ロス削減その他の消費者自身の意識改革による社会問題への対応
 食品ロス削減にフードチェーン全体で取組んでいくため、官民が連携して食品ロス削減に向けた国民運動を展開していますが、現状では国民運動と言える程広がっていません。地方公共団体、消費者団体、事業者等の取組みをホームページに掲載するだけでなく、先進的な取組みを表彰するなど、全国に周知する方策を検討してください。また、愛称「ろすのん」のロゴマークを活用し、食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSSプロジェクト)を発展的に継続してください。
重10
地方消費者行政
消費者安全法改正で検討された地域の見守りネットワークの構築のための地方公共団体による「消費者安全確保地域協議会」は既存の協議会と兼ねることができることから、消費者教育推進協議会の設置と合わせ消費者庁内での連携を強化して進めるべきです。
どこに住んでいても質の高い相談が受けられる体制を確保するための消費生活センターの設置、特に広域連携で設置する場合の支援については、財政的、人的負担等、地域の実情を十分にくみ取りながら進めることを期待します。また、中心市集約方式を採用する広域連携においては、消費者行政に対する温度差を関係市町村間でなるべく生じなくする工夫も必要です。
景表法等改正等法案の成立後、円滑な施行の準備として、都道府県、地方公共団体の消費者行政担当職員へ法の周知及び研修をスケジュール化してください。
重11
消費生活相談業務の一層の質の向上と体制の整備
消費者安全法の改正によって、消費生活相談員資格が法的に位置付けられることになりますが、そのことに対して現場の相談員の理解が得られるよう説明は丁寧に進めてください。
消費生活相談業務の質の向上のため、いわゆる「雇止め」から長期雇用に切り替えることを含め、処遇改善を総務省および地方公共団体に強力に要請してください。
重12
PIO-NETの刷新
 PIO-NETの刷新に当たっては、年間100万件近い情報が寄せられている現状を踏まえ、相談員の負担軽減とともに分析の効率化も念頭に入れ、相談業務の充実を図るようにしてください。
重13
消費者安全行政
事故を取り巻く環境や人々の生活や行動のあり方にまで踏み込みながら、責任追及ではなく未然防止のために調査を行い、行政機関等に意見具申するといった消費者安全調査委員会の特色・存在意義を明確にし、周知を図るべきです。その上で、消費者安全調査委員会の活動が消費者に見えるように工夫するべきです。Web上に「消費者安全調査委員会の動き」が発行されていますが、消費者啓発のために認知度を上げ、広く活用するべきです。
委員会の体制を人員、予算両面から格段に強化し、委員の一部は常勤とすべきです。
捜査機関や司法機関が収集した情報の中に事故原因を究明するのに役立つ情報が多数含まれるにも関わらず、エレベーター事故やエスカレーター事故のようにすでに発生してから時間が経過し、訴訟中となっている案件の捜査記録や裁判記録を消費者安全調査委員会が利用できる仕組みになっていません。この点のルールを早急に定めるべきです。
重15
特定商取引法
 いわゆる「5年後見直し」に向け、消費者被害の実態を把握し改善する課題を整理し、必要な見直しを検討していくことを明記するべきです。

(No.47)
 「商品先物取引法の迅速かつ適正な執行を行う」という計画は平成26年度も継続となっています。脚注に「勧誘を要請しない一般顧客への訪問・電話による勧誘(不招請勧誘)の原則禁止等についての規定を導入し」とありますが、現在、この規定を緩和する方向で商品先物取引法施行規則および商品先物取引業者等の監督の基本的な指針が改正されようとしています。PIO-NETに登録された国内商品先物取引に関する消費生活相談件数は減少しているとはいえ、この改正案は消費者保護の観点から見て非常に危険をはらむものです。また、今後、電力システム改革による電力先物市場が創設されるのに伴い新たな消費者被害の発生も懸念されます。
 消費者庁は、不招請勧誘の規制緩和の再考を経済産業省と農林水産省に求め、消費者取引の安全を確保し、消費者被害の未然防止・拡大防止を図って下さい。
重16
詐欺的投資勧誘等
 高齢者をねらった詐欺的投資勧誘の消費者トラブルが後を絶ちません。計画されている関係省庁による金融商品取引法、刑法、特定商取引法、消費者安全法の詐欺的投資勧誘に対する厳正な執行は継続して取り組み、さらに次の事項への取組強化を検討・実施してください。
振り込め詐欺防止の対策として、金融機関の協力でATMや窓口での阻止率が上がっていることから、水際対策が有効であることは明らかです。増加傾向にあるゆうパックや宅急便を使っての送金指示に関する対策として、郵便局や宅急便取扱い窓口(コンビニなど)の担当者にも中身の確認等の声掛けを要請してください。
地方消費者行政による見守りネットワークの構築を促進してください。
適格機関投資家等特例業務に一般消費者が巻き込まれないように、監視・監督強化を行ってください。
関係団体と連携し、高齢者に対する消費者被害防止の呼びかけを推進してください。、その際には、マスメディアも活用してください。
重17
有料老人ホーム
 有料老人ホーム等に係る入居一時金の実態把握等、必要な対応は計画通りに進めながら、近年増加しているサービス付高齢者住宅も対象として明記し、実態調査や必要な方策を検討してください。
重点18
電気通信事業における販売勧誘方法の改善
 電気通信分野における消費者相談は、PIO-NET情報の分析をみても、年々増加傾向にあります。全国消団連から総務省宛に提出した意見書(2014.5.)で述べたように次の点を反映させた「電気通信事業法」の改正を検討してください。
電気通信事業法に特定商取引法と同等レベルの消費者保護規定を導入すること。・店舗販売においても、電気通信サービスの特性(サービス内容が複雑、個々の条件によってサービスが受けられない場合もある等)及び他製品にセットして通信サービスが不意打的に勧誘されている現実を踏まえて、クーリング・オフ規定を導入すること。
複雑な代理店構造や行き過ぎたインセンティブの発生を見直し、料金水準の低廉化をはかること。
電気通信サービスを横断した紛争解決機関を設置すること。
重点19
追加部分
 不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律案が成立した後、施行に向け準備を行うとありますが、次の点を重点的に取り組んでください。
事業者が表示の重要性の意識を持つことやコンプライアンス順守等、事業者自身における表示に関する管理体制の強化を指導する。
表示に関するガイドラインの見直しを消費者の誤認を招かないことと、事業者にわかりやすいことの両面から検討する。
関係省庁、都道府県、事業者等へ改正点について周知徹底する。
課徴金制度の導入についての準備を進める。