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TPP交渉への参加にあたって、丁寧な国民的論議を求めます

 日本政府はTPP交渉への参加を表明しました。今後、米国議会の承認手続き等を経て、7月頃に正式に交渉に参加すると言われています。これまでは非参加国の情報収集努力の範囲でしか交渉内容を知ることができませんでしたが、7月以降は正式な交渉参加国として日本政府の立場は大きく変わります。
 TPP交渉への参加に際して、全国消団連は丁寧な国民的論議を求めます。

○消費者のくらしに直結する分野の規制・制度が後退することの無いように求めます。

 TPP交渉はカバーする範囲も広く、くらしに大きな影響を及ぼすものがあります。特に、国内での農業生産の維持や食料自給率の向上、食品・製品の安全基準や環境基準、公的医療保険をはじめとした社会諸制度など、生活に密接にかかわる分野にどのような影響が及ぶのか、その内容がいまだ不透明であるため、消費者は大変不安に感じています。TPP交渉参加にあたっての日米合意では、「非関税措置」のあり方について、多国間交渉と並行して日米2国間での協議を進めることが盛り込まれましたが、このことにも私たちは懸念をもっています。
 消費者は安全性、品質の向上、納得できる価格、選択性の保証、安定供給、環境保全などに高い関心を持っています。こういった分野で、今まで整備されてきた内容が後退することがないよう求めます。

○情報開示と発信の強化を求めます。

 消費者が不安を感じているいくつかの点については、過去に政府から説明が行われてきました(資料1)。仮にこれまでの説明と異なる状況となった場合や新たなルール作りが求められる場合には、速やかに情報が開示される必要があります。「外交上の秘密」や「国会批准手続きが残されていること」等を理由に国民に秘密裏に交渉を進めていくようなことがあってはなりません。交渉の節目毎に国民に状況を分かり易く伝えていくことを求めます。

○食料自給率の向上と国内農業の再生に向けた政策の具体化を早急に進めてください。

 国際的に食料価格が高止まりし、将来的な食糧不足まで懸念される中で、何よりも食料自給率の向上と国内の農業生産力の強化が必要です。農業従事者の高齢化、後継者不足、耕作放棄地の増大など、国内農業の危機的な状況の中で、十分な対策が取られなければ、自律的な食料調達に大きな打撃となることが懸念されます。食料自給率向上と国内農業再生に向けた思い切った財政措置と、それが真に国内農業の強化に生きるようにしてください。

(資料1)

  これまでの政府説明(2012年1月内閣官房説明資料より)
食品安全
  • 食品の輸入について、食品安全に関する措置を実施する権利は、WTOの「衛生植物検疫措置に関する協定」(SPS協定)で我が国を含む各国に認められており、我が国の措置を適切に実施することにより、輸入食品を的確に監視してまいります。
  • TPP協定交渉では、主な議論の内容は、検疫措置を実施する際の手続きの迅速化や透明性の向上等である模様で、現在のところ、牛肉の輸入規制、食品添加物、残留農薬基準や遺伝子組み換え食品の表示ルール等、個別の食品安全基準の緩和は議論されていませんが、今後、提起される可能性も排除されません。
  • しかしながら、仮に交渉に参加する場合であっても、TPP協定のような複数国間の交渉では、ある国の食品安全に関する措置の変更が他国から一方的に求められることは想定しがたく、いずれにせよSPS協定で認められた食品安全に関する措置を実施する権利の行使を妨げる提案を受け入れることはありません。
医療・保険
  • 混合診療の解禁や、営利企業の医療参入については、TPP協定交渉において、議論の対象となっていません。
  • また、TPP協定交渉参加国間のFTAでは、金融サービス分野において公的医療保険制度は適用除外されており、TPP協定交渉においても、公的医療保険制度は議論の対象となっていません。
  • なお、仮に交渉に参加する場合には、政府としては、安心・安全な医療が損なわれないよう対応します。

(資料2)

自由民主党の公約に記された6項目関連(自民党「TPP 交渉参加に関する決議」より)

1農林水産品における関税

米、麦、牛肉、乳製品、砂糖等の農林水産物の重要品目が、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象となること。

2自動車等の安全基準、環境基準、数値目標等

自動車における排ガス規制、安全基準認証、税制、軽自動車優遇等の我が国固有の安全基準、環境基準等を損なわないこと及び自由貿易の理念に反する工業製品の数値目標は受け入れないこと。

3国民皆保険、公的薬価制度

公的な医療給付範囲を維持すること。医療機関経営への営利企業参入、混合診療の全面解禁を許さないこと。公的薬価算定の仕組みを改悪しないこと。

4食の安全安心の基準

残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、輸入原材料の原産地表示、BSE基準等において、食の安全安心が損なわれないこと。

5ISD条項

国の主権を損なうようなISD条項は合意しないこと。

6政府調達・金融サービス業

政府調達及び、かんぽ、郵貯、共済等の金融サービス等のあり方については我が国の特性を踏まえること。